軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪の幹部の正しい仕草

まず言い訳をしておこう。

露出魔案件を俺が好んで選ぶ理由はない。

まかり間違ってシャルの目に露出魔の汚物が映っては一大事だからだ。

ただね、見つけちゃったのよ。シャルちゃん自身が。

シャル側に伝えた(一緒に取り決めた?)設定では、不可思議な事件が起こるとき、それは魔神の力を封じたカードが原因である、としている。

そういった事件がないか調査しているうち、この半月ほどの間に二日に一回ペースの高頻度で露出魔が現れているというじゃないですか。

不自然に霧が立ち込め、老若男女問わず襲いかかっているのだとか。

ただわりと慌てん坊さんのようで、まごついているうちに襲われた人はみな逃げ出したので実質的な被害はない。

だからといって見逃していいはずはなく、

「何をどう露出するのかは知りませんけど、王都の皆さんの不安は早急に払拭しなくてはなりません!」

シャルちゃんは『露出魔』が何かよくわからないまま義憤に燃えていた。

「そして不可解であるがゆえに、『ルシフェル・カード』が関与している可能性は大いにあります。いえきっとそうに違いありません!」

断言されては『然り』と決めて動かねばならぬのだ。

俺的には不安もあるが、シャルにグロシーンを見せないようこれまで何度も謎の光を駆使してきた実績がある。

だからきっとなんとかなる!

むろん保険も用意している。

と、いうわけで――。

件の露出魔さんはナイフを握ったまま腰を落として固まっている。

てか、なんでナイフ? しかもけっこう大ぶりだ。護身用かな? そもそもこの人、露出魔のくせにコートの下はがっつり着込んでいる。異世界の露出魔は早脱ぎとかを魔法でやっちゃう感じなのか? まあいいか。

とにかくシャル改め正義の魔法少女イモータル☆シャルちゃんが登場した。

ここからいつもの面子が登場するかと思いきや。

「ふははははっ! 貴様が魔人とやらか。我が前に現れたことを後悔させてやる!」

高笑いが響き渡るも、

「フレイ、そこじゃ霧に隠れて見えない」

リザが屋根の上に声をかける。

シャルの傍らにいつの間にか控えていた彼女。青っぽい、シャルとおそろいのフリフリ衣装を身にまとう姿は新鮮だ。そしてちょっと恥ずかしそう。

「とうっ!」

ライダースーツにバタフライマスクをつけた女怪盗みたいなのが降りてきた。言わずもがなのフレイである。

「な、なんなのよアンタたちは……」

えっちな格好の女魔人――ヴァリはドン引きだ。あえて言おう、おまいう。

「ま、まあいいわ。よくよく見れば魔族のようだし、相手にとって不足はないわね」

彼女的には前回、勝ちはした(と思いこんでいる)がいいようにあしらわれていたのだ。今回は徹底的に、本気の本気でシャルたちをコテンパンにしたい気満々でございましょう。

しかぁし!

その辺りは俺も考えている。

なにせシャルの安全がかかっているのだ。俺の本気度だって負けていないのだよ。

てなわけで、魔族チーム二人を護衛にしつつ事前に仕込みをしていたのだけど……。

ちゃんとやってくれるかな? てかアレクセイ先輩はちゃんとやってくれたのかな? 本人は暗い顔で『ああ、やることはやったさ。私が演者でなくて心底よかったと思いながらね』とか言っていたけども。

ヴァリが赤い目をギラリと光らせる。なんか周囲に風が渦巻いていますねえ。めっちゃ魔力高めてませんか?

「さあ、恐怖なさい。そして絶望の中で死になさいなぁ!」

ヴァリが片手を振り上げる。すぐさまその手を振り下ろした。

身構えるシャルちゃんたち。

でも大魔法的なものは放たれてはおらず、いつの間に握っていたのか、なんか小さなものがぴゅーっと飛んでいく。

訂正。ものすごい速さでずびゅーんっ!って感じだ。

その何かはまっすぐ放心している露出魔さんへ向かい、

「んごっ!?」

口の中へ飛びこんだ。

「ぐ、ぅ、ぅぅぅ……」

苦しみだす露出魔さん。

「たたたたいへんですぅ!」

「なんだか知らんがすぐに吐き出せ!」

まだ幼いシャルがテンパる中、女怪盗もといフレイが飛びかからんとする。お前、背中とか叩いて吐き出させようとしてる? 思いきり? いや死ぬぞ。

「ダメ! すぐ離れて!」

リザがフレイの肩をつかみ、思いきり引き寄せつつ地面を蹴った。さすが空気の読める子は違うな。

「ぐぅ、ぉぉ、おおおぉぉおおオオオォオオッ!」

露出魔さんは人ならざる雄叫びを上げるや、黒い霧を体中から噴き出していく。黒い霧は自身の体を覆いつくし、着ている服をびりびり破りながらその体躯を膨張させ――。

「む? 変身、しただと……?」

フレイが驚くとはなかなかの事態だな。

「オオォォオギャオオォッ!」

露出魔さんは獣の咆哮じみた叫びを放つも、その姿は獣とは対極にあった。

頭部がぶよぶよと異様に膨らみ、側面に移動した目玉がぎょろぎょろと動く。両手はそれぞれ四本に増え、しかし先端は細く全体的に吸盤が並んでいた。

「タコ型怪人になっちゃいました!?」

うん、タコだね。両脚を含めると十本脚なのでイカでは?とのツッコみはスルー。身長が三メートルに迫る大きなタコ型怪人に変貌した。

「あはははっ! 本来ならこのアタシ自らギッタンギッタンにしたいところだけど、アンタたちには別の苦しみを与えてあげる」

ヴァリは怪人化した露出魔さんの背後に浮かび、哄笑を上げながら告げる。

「さあ、『正義』の魔法少女さん、まだ『人』の心を残したコイツを殺せるかしらぁ?」

「ゥ、うぅぅ……クル、しい……た、スケて……」

タコ型怪人からそんな声が聞こえてくる。

「ぇ、あれ? まだしゃべれるの……?」

ヴァリが妙なことを言ったがそれはシャルたちに届いていない。

「なんて卑劣な……」

シャルちゃんは辛そうに愛らしい顔を歪めたけどやっぱり可愛い。

でもちょっと俺も心が痛むな。

でも大丈夫。

俺は姿を消してすぐそばで見守りながら、ほくそ笑んだ。

――計画通り!