軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

茶番と呼ぶなかれ

いくら相手が犯罪者とはいえ、人道的見地から当然であるが、魔人化する薬を仕込むような真似を俺はしない。

露出魔さんの口の中に入った薬は俺の結界で謎時空へ飛ばし、彼自身はその瞬間に気絶させておいた。

あとは変身したように見せかけ、声まで作って演出したのさ。

彼が着ていたコートは体の膨張に耐え切れず、ビリビリに破けて弾けた。

その裏っ側に張り付けてあった金色のカードがひらひらと虚空を舞う。

「いただきぃ!」

狙いすましていたのか、嬉々として飛びついてカードを鷲掴む女魔人幹部さん。

「またアタシの勝ちみたいねぇ。アンタたちはそいつと遊んでなさい!」

勝ち誇ったような哄笑を上げながら、女魔人ヴァリは空高く舞い上がって退散していった。

という流れは今回、シャルたちには重要部分だけ見えない&聞こえないよう立ち回っておりますです、はい。

ヴァリがカードを手にしたところや、『アタシの勝ち』って部分はね。

さて、魔神側勢力がいなくなったので、ここからは『シャルロッテを全力で楽しませるターン』だ。

茶番、などと侮らないでいただきたい。

やるからには俺も大真面目だ。

手を抜けば、聡いシャルなら確実に見抜いてしまう。

むろん安全には配慮するが、いざ真剣勝負と行こうじゃないか!

タコ型怪人がぷしゅーっと黒い墨を吐く。

「うおっ!? あっぶねえ!」

地面に落ちた液体はしゅわしゅわと地面を溶かしていた。

続けざま、うにょうにょしていた八本の腕が、ビュビュンと大きくしなって鞭のように襲いかかる。

「また僕かよ!?」

いかんな。シャルたちの安全を考慮するあまり、ライアスを集中的に狙ってしまった。

「どうすんだよ! 元が人だっつっても、やるしかねえぞ」

「ぅ、ぅぅぅ……」

シャルは空中で唸っている。眉根をこれ以上ないほど寄せ、苦悶に満ちた表情で。

当然だ。

たとえ犯罪者といえど未遂ばかり。死をもって償うほどの罪はないのだから、心優しいシャルが彼に攻撃できるはずもない。

……めっちゃ罪悪感なんですけど!

シャルが苦しんでいるのは俺にキく。

というわけで、ちょっと早いけどアレをやってしまおう。

『……キュア…………ラブキュア…………』

「はっ!? 今、頭の中で直接……? いえ、コレは……わたくしの記憶?」

『……ぷちっと☆ラブキュア…………第27話……』

「27話……? もしや!」

シャルロッテが魔法のステッキを空高く掲げる。

「みなさん、離れてください!」

ステッキが光り輝く。

「魔の源よ、その姿を現してください! マーベラス☆プリティ★ダークネス★シャワー!」

眩いばかりの光はしかし、黒い霧となってタコ型怪人を包みこんだ。

「見えました! そこです!」

黒い霧が怪人にまとわりつくと、胸の中央付近が赤く妖しい光を放った。

赤黒い水晶のようなそれが、くっきりと浮かび上がる。

「今です!」

シャルロッテがその場でくるりと一回転。再びステッキを天へ突きあげると、

「昇天しちゃいませ♪ マーベラス☆プリティ☆ラブアンドピース★デス★エクスプロージョン!」

ビームが飛んだ。

タコ型怪人へ向け、その胸に現れた赤黒い水晶にぶち当たる。

「ご、ァアアアァアァアアァアッ…………ぁ……」

砕け散る水晶。

叫ぶ怪人。

がんばれ!と励ましているかのような慈愛に満ちていながら幼いながらも母性にあふれてなんかもうトニカク可愛い我が妹。

やがて。

ぴかーっと。

タコ型怪人が真っ白な光に包まれる。さらーと白い粒子が拡散していき、空気に溶けていった。

「ぅ、ぁ……」

ぱたり、と倒れるタコ型怪人だった露出魔の男性。コートはびりびりにしたけど服はちゃんと着せてあったので謎の光で隠す必要はない。

「おや? 肉体が膨張したのに服がそのままなのはどうして……?」

イリスは余計なこと言わないでよろしい。

「ともかく、終わったんだよな? で、カードは? 今回は外れなのか?」

おっと忘れるとこだった。ライアスもたまには役に立つな。

「あれを!」

お姉ちゃんが目ざとく見つける。

虚空をひらひら舞い落ちる、一枚のカード。

シャルちゃんがすいーっと飛んで行ってカードをキャッチ。

それを大事そうに、小さな胸にあてがうと。

「ご助言、ありがとうございました。兄上さま……」

おっと、さすがにバレてしまったか。

まあ最初から最後まで俺が仕組んだとは気づかれてないはず。大丈夫だよね?

さて、露出魔さんはあとで警備兵に引き渡すとして、今回も無事に終わったのだけど。

「……あいつ、何やってんの?」

俺はシャルたちとは違う監視用画面に目をやった。

王妃ギーゼロッテこと魔神ルシファイラだ。

奴は女魔人ヴァリが戻ってくるのを待たず、王都を飛び出してずっと東の山奥までやってきていた。

そこに――

『グルルルルゥゥ……』

真っ暗でよく見えんけど、めっちゃでかい『何か』がいた――。