作品タイトル不明
脇役剣聖、団長と飲む
さて、食後にやって来たのは、団長の屋敷内にあるバーだ。
すっげぇんだよ……屋敷の中に、本格的なバーがある。昔からあったけど、改装したのか豪華になってる。まさか、家の中に小さな噴水があるなんて思いもしなかったぜ。
そして、俺と団長はカウンター席でグラスを合わせた。
「乾杯っ!!」
「……うむ」
遠慮せず好きなの飲め……なんて渋い声で言うから遠慮しないぜ。バーのマスタ-……ではなく、屋敷の執事さんにお任せで作ってもらった。
「いやあ、さすが団長、いい酒使ってますし、マスターの腕もすごい!! うまい!!」
「貴様、なぜそんなに舞い上がっている」
「いや、美味いメシ食えば誰だってこうなるでしょ。というのは建前で……実は、野営しながら来たんですけど、酒とかあんまり飲まずに来たんすよ。だから久しぶりに美味い酒飲んでご機嫌といいますか」
「……全く、貴様というやつは」
団長はグイっとグラスを飲み干し、おかわりを要求。
俺もマスターに「マスター、団長と同じの」と言い、グラスを置いた。
「ふぃぃ、美味い酒ってのはいいですね」
「……ラスティス。貴様、 使ったな(・・・・) ?」
「…………」
一気に酔いが醒めた……というか、背中が冷めた。
団長を見ると、俺を見ずにグラスを眺めている。
「……団長はお見通しっすね」
「アザトース。あのバケモノはただの『臨解』ではない。二度と使うなと言ったはずだ」
「……いろいろありましてね」
「……チッ、まあいい。何度も言うが、貴様の『臨解』は恐らく、七大剣聖の中で最も異質な臨解だ。貴様なら、剣技とスキルだけで十分戦える。神器の使用も控えろ」
「神器は使います。カジャクトとの戦いは運が良かった。アザトースはもう使うつもりありませんけど、神器は使います」
「……昔から、貴様はワシの言うことを聞かんな」
俺はカクテルを一気に飲み干し、マスターにおかわりを要求。
湿っぽい話になりそうだったので、話題を変えた。
「そういや、ラストワンとアナスタシアは? あいつら、団長の地獄指導受けてるんでしょ?」
「ああ。二人とも『神器』に目覚めた。フン……お前の弟子なだけある。ワシの指導に音を上げずにやり遂げたわ」
「おお。じゃあこれで、七大剣聖はみんな……」
「歴代最強、と言って間違いないだろうな」
確かにそうかも。
すげえな。全員が『臨解』と『神器』に目覚めたか……これなら、七大魔将が来ても戦える。
それに……魔王。
「……魔王、アザトースだったか。貴様のバケモノと同じ名前」
「……なんとなくですけど、無関係じゃないですね。前魔王の息子で、今の魔王。たぶん……いや、確実に、俺を狙って来る気がします」
「戦いはあるか」
「ええ。でも、今の七大剣聖は最強だ。七大魔将が来ても戦える……それに、ランスロット」
「ああ。奴の娘だったか、 二人(・・) が臨解、神器に目覚めた」
「あれ、二人?」
「『神炎』と『神毒』だ。神スキル持ちが二人も……まあ、戦力になるならいい」
「へ~……そういや、エミネムと戦った子、神スキル持ちだっけ」
そういや、そんな子がいたな。名前……ああ、デボネアだっけ。
てっきりイフリータだけかと思ったけど、その子もか。
「で、イフリータはサティとの摸擬戦を希望してるんですね。せっかくだ、ランスロットに打診して、デボネアとエミネムも再戦させるか……エミネムはきっと乗り気になる」
「…………む」
「まあ、ランスロットも俺とやりたがってるでしょ。それにラストワンとアナスタシア。久しぶりに二人にも稽古付けてやろうかね。フルーレも、最近戦ってないから溜まってるだろうし」
「……いつになくやる気だな」
「まあ、魔族との戦い近いですしね。俺がアザトース……魔王と戦う間、あいつらには七大魔将と戦ってもらわないといけないし。団長、兵士たちは?」
「訓練は続けている」
「なら平気か。団長のしごきなら、みんな強くなれる」
「……貴様、何を焦っている?」
ふと、俺の手が止まった。
まあ、アザトースを使っちまった以上、寿命が削られているからな。それに魔王との戦いになったら、たぶん俺は『臨解』する。そうなれば、たぶん死ぬ。
命を賭けて、なーんて高説垂れる気はないけど、そうなったら仕方ない。
「……万全な状態にしたいだけっすよ」
「……ならいいがな。よし、では模擬訓練の内容を今のうちに考えておくぞ」
「了解っす。酒けっこう飲んじゃったけどいいっすかね?」
「あくまで、軽く決めるだけだ。明日、王城で七大剣聖による会議を行う」
「え、あ、明日!? 展開早くないっすか!?」
「うるさい。今日はもうお開きだ。部屋に戻って寝ろ」
「あの、団長の屋敷に風呂ってあります?」
明日は会議か……正直、かなりかったるかった。