作品タイトル不明
脇役剣聖、もう何度目かわからん王都へ到着
さて、よ~うやく王都に到着した……まあ、予定通りだが。
馬車が王都正門前に到着し、俺は御者席へ。
七大剣聖になるともらえる、王家の紋章である獅子のメダルを門兵に見せると、久しぶりに『おお、七大剣聖!!』みたいな感じで驚かれた……自分で言うのもアレだが、七大剣聖って王都じゃ公爵位くらいに地位高いんだよなあ。
馬車が城下町に入ると、俺はエミネムに言う。
「今日は町の宿屋に泊って、明日王城に行くけど……エミネム、家に帰るか? 俺らと宿に泊ってもいいけど」
「そうですね……きっと、ラスティス様が戻ったことは父に知られると思いますし、家に戻らずに宿に泊まったとなれば、何を言われるか」
「うし家に行こうぜ。うん、そうしよう」
なんか、妙な勘繰りされたら命がヤバイ気がする……エミネムに手を出すつもりなんて欠片もないが、団長ブチ切れると魔族とは違う恐ろしさがある。
エスナに『貴族街』へ向かってもらい、エミネムの家……つまり、団長の屋敷前に到着した。
「わあ~、エミネムさんのおうち、大きいですね」
「おうち、って言い方していいのかわからんが……まあ、王都で一番だと思うな」
ちなみに、二番目はランスロット。
自宅であるヴァルファーレ公爵家のことなら、サティも知ってると思うだが。
「ヴァルファーレ公爵家のお屋敷には行ったことなくて。家は、アロンダイト騎士団の宿舎だったので。ああ、それでも宿舎は大きいおうちでした!!」
なるほどな。まあ、今はどうか知らんけど。
エミネムが馬車から降り、俺も降りる。
「あれ、師匠?」
「あ~……一応、大事な娘さんを長期でお預かりしたからな。団長はいないと思うけど、奥さんに挨拶くらいしなきゃだろ」
『じゃ、またな!!』ってエミネムを屋敷の前に下ろして帰るわけにいかん。
すると、サティも降りてきた。
「エミネムさんのお母さんに、私もご挨拶したいです!!」
「え、えっと……その、母はあまり」
「しまったぁ!! 師匠、お土産とか用意してません!!」
「そういやそうだな。そうだ、おいエスナ、ギルハドレッド領地のお茶っ葉あるだろ。それ出してくれ」
「はいよ。高い方でいいかい?」
と、屋敷前でごちゃごちゃ騒いでいたのがまずかった。
「……貴様、何をしている」
「え? あ、団長!! ども、お久しぶりっす。あれ? こんな時間にいるなんて……」
「……いろいろ言いたいことはあるが、まあいい。入れ」
「あ、はい」
こうして、俺とサティは、団長の家に入るのだった。
◇◇◇◇◇◇
エスナは、『アタシは遠慮する。馬車もあるし、町の宿にいるよ。馴染みに挨拶したいし、久しぶりの城下で買い物したいしね』と言って行ってしまった……これから買い物満喫したり、馴染みと会って飲み会するんだろうな……クソ羨ましい!!
さて、屋敷に入るなり、玄関先でエミネムは頭を下げる。
「お久しぶりです。お父様、お母様」
「……ほう。エミネム、強くなったな」
「立派になって……」
団長はわかるようだ。
まあ、『臨解』に『神器』と目覚め、カジャクトや俺の指導受けていたからな。
俺はウンウン頷いていると、団長は言う。
「フン。ラスティス……よくぞここまでエミネムを育てた。感謝するぞ」
「え」
「……なんだ、その顔は」
「いや、てっきり怒鳴られるのかと」
「……貴様はワシをなんだと思っている」
「あ、奥さんお久しぶりです。これ、ギルハドレッド領地のお茶です。ちょっと渋いけど、慣れると病みつきになりますよ」
「あらご丁寧に。ありがとうございます、ラスティス様」
「~~~……貴様と話すと調子が狂う。それと、そちらの」
団長はサティを見た。サティはビクッとするが、すぐ頭を下げる。
「初めまして!! ラスティス様の一番弟子、サティ・ギルハドレッドです!!」
「おいお前、ギルハドレッドは違うだろ。サティだサティ、ただのサティ」
「でもでも、ギルハドレッドって苗字カッコいいし、使いたいですー」
「お前、俺の娘かよ。まあいいか……」
「~~~……貴様の教育か。本当に調子が狂う」
「「??」」
サティと首を傾げると、奥さんがクスっと微笑んだ。相変わらず美人の奥さんだぜ。
と、俺は気になった。
「あれ、ケインくんは?」
ギルハドレッドから戻ったはずだけど……屋敷じゃなくて、自分の商会にでもいるのかな?
「あいつは執務中だ。グレムギルツ領地関係のな」
「あ、そうなんだ。挨拶したかったけど、まあ忙しいなら……うし、じゃあ団長、エミネム送り届けたんでそろそろ帰ります。模擬訓練や、七大魔将については後日」
「……待て」
と、団長は俺を引き留めた。
そして、咳払いをして、微妙に嫌そうに言う。
「……貴様、王都に屋敷を持っているのか?」
「ないっす。めんどくさいし、実は俺……屋敷とかより、城下町のボロい宿屋とかの部屋のが落ち着くんすよね」
「どこまでも七大剣聖らしくないヤツめ……貴様、昔から変わらんな。とにかく、今日はワシの屋敷に泊っていけ、そちらのサティもな」
「いいんですか!? やったあ、エミネムさん、いっぱいお話しましょうね!! あ、フルーレさん王都にいるかな? 連絡できないかな?」
「そりゃありがたい。あ、団長……久しぶりに一杯どうっすか? ギルハドレッドの酒も美味いけど、王都で飲む酒も悪くないんスよね。あ、ラストワンの店とかどうです?」
「…………はあ」
なんか団長が疲れたように頭を押さえ、奥さんがクスクス笑い、エミネムが困惑……周りにいた使用人たちも何だか驚いているようだった。
◇◇◇◇◇◇
「あれ、ラスさん?」
「よ、ケインくん」
「お久しぶりですー!!」
「サティさんまで……ああ、エミネムを送り届けに」
察しのいいケインくん。
夕食時、やや疲れた感じで現れたケインくんは、俺とサティを見て驚いていた。
そして、運ばれてくる食事。
「おお、すごいごちそうですね!!」
「さすが団長。いいシェフ抱えてますね」
「うるさい。食事中は静かにしろ。全く……」
久しぶりのご馳走に、俺も少しテンション上がる……野営は楽しかったけど、こういう手の込んだ料理作れなかったしな。
食前酒も出てきた。綺麗なグラスに、水みたいな酒。
飲むと……けっこう甘い。果実酒だな。
「おいしい~……お酒」
「そういやサティ、酒平気なのか?」
「ん~わかんないです。でもこのおさけ、おいしいです」
「なんかフワフワしてんな……すんません、水ください」
メイドさんに頼んで水を持ってきてもらうと、サティはゴクゴク飲んだ。
ケインくんがクスっと笑う。
「ふふ……なんだか、今日は楽しい食事になりそうです」
「はあ……おいラスティス、食事が終わったら付き合え」
「お、いいっすね。へへへ、久しぶりに美味い酒が飲めるぜ」
「……はぁぁ」
団長がため息を吐き、ケインくんが今にも噴き出しそうになるのだった……どうしたんだろ?