軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脇役剣聖、見守る

ダンジョン踏破を始めて十五日。

現在、俺たちは七つ目の小規模ダンジョンを攻略中……俺たちというか、三人娘たちだ。

俺はヴォーズくんと一緒に、襲い掛かる『パーン』を倒すサティたちを見る。

その戦いっぷりに、ヴォーズくんがゴクリと唾を飲み込んだ。

「す、すごい……」

「ダンジョン攻略始めて十五日目。かなり成長しているな」

サティ、フルーレ……そしてエミネム。

三人はメキメキ強くなっていく。スキルの連続使用、戦術、体術、そして連携……やっぱり、実践に優る修行はない。

それに、二足歩行の羊パーン。こいつはちょっと前のサティじゃ多少の苦戦をしたはずだ。

でも、今は二体同時に襲って来ても──。

「『 雷滅球(ジガ・シャンゴ) 』」

サティの剣からいくつもの『球』がポポポポと生み出される。

それらは空中を漂い、パーンの周囲を包囲。

あまり知能がないのか、無視して突っ込んでくるパーンが球に触れた瞬間、球が爆ぜて感電した。

すごいな……設置型の雷か。あんな器用な真似できるようになったとは、やっぱり枷を外した効果が出ている。

『メェェェェェェッ!!』

「うるさいわね……それに、うっとおしい。凍り付きなさい、『 速度凍結(スピード・フリズド) 』」

『メッ……』

ガキンと、フルーレに向かって来たパーンが急停止した。

ヴォーズくんが目を見開く。

「え、な、何が」

「すげえな……物理的なモノじゃない、概念的なモノを凍結させた」

「概念?」

「ああ。あの場合、『速度』を凍結させて動きを止めたんだ。凍らせるっていうと、水とかをイメージするだろ? 眼に見えないモノ、速度だのを凍結させるのは、自然系の神スキルでも高等技術だ。アナスタシアがあの域に達したのは、二十代ジャストだったはず……才能ってやつかなあ」

「す、すごい……」

「着実にレベルが上がってる。フルーレの奴、このダンジョン修行で上級魔族を単独撃破できるくらいまで強くなるかもな」

まあ、上級魔族といってもピンキリだけど……少なくとも、村を襲った上級魔族くらいなら、領域を展開されても倒せるかも。

だが、問題は……。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「ぶ、部隊長!!」

エミネムが、膝をついた。

剣はもう使わず、槍だけで戦う戦闘スタイルに変わったエミネム。狭い場所でも戦えるよう、六本の槍の内二本は伸縮式の槍にしてあるようだ。

その二本を手に、パーンを何匹も倒したが……やはり、限界が来たようだ。

「部隊長、以前はお二人と同じくらい戦えたのに……」

「『枷』を外していない影響だ」

「え……?」

「フルーレはすでに枷を外していたが、本格的にスキルが伸び始めたのはここ最近になってから。一人で修行するのと、サティたちと修行するのでは伸び具合が段違いなんだろう。サティも、二人に刺激されて急成長している。枷が外れた二人は、スキルを発動させる魔力も修行でどんどん伸びているからな。無意識に、体力の消費を抑えるように、全身を魔力で覆って疲労を軽減している」

「ぶ、部隊長は……?」

「枷の外れていないエミネムは、二人ほど魔力の伸びがない……というか、修行を始めて十五日。全く伸びていない」

「そ、そんな」

「このままじゃ、どんどん離されるだろうな」

「じゃあ、部隊長の『枷』を外せば……」

「まだ、エミネムの覚悟が決まっていない。あいつは、本能で恐れているんだ。自分の中のバケモノの姿を」

「…………部隊長」

魔獣の襲撃を退け、ダンジョンの奥へ踏み込むと……ダンジョンのボスである超巨大羊、『キングパーン』が現れた。

でっかい……全長二十メートルくらいある。

「おーい三人とも、戦えるか?」

「愚問」

「できます!! 今のあたし、メチャクチャ昂ってますんで!!」

「……はぁ、はぁ、はぁ」

フルーレは余裕そう、サティは超余裕そう、エミネムは……うん。

「エミネム、お前は戻って来い」

「えっ……た、戦えます!!」

「駄目だ。今のお前じゃ、二人の足手まといになる」

「っ……!!」

「ちょっと、そんな言い方ないじゃない。その子は」

「フルーレ、黙れ」

強く言うと、フルーレは黙ってしまう。サティはエミネムを見て言う。

「エミネムさん。あたし、 先に行って待ってます(・・・・・・・・・・) !!」

双剣を構え、サティは飛び出す。

フルーレも、一度だけエミネムの肩を叩き、サティに負けじと飛び出した。

そしてエミネムは……何も言えず、くやしそうに俺の元へ。

「……ラスティス様」

「くやしいか?」

「……何故でしょうか。私……お二人に置いて行かれるのがくやしくて、怖い……!!」

「ぶ、部隊長……」

ヴォーズくん、こんな弱っているエミネムを見るの、初めてなんだろう。

両手で身体を抱き、くやしそうに震え、顔を歪めている。

向こうでは、派手な雷と氷が舞う。雷光が氷に反射し、キラキラと幻想的な輝きを見せていた。

「私、こんなに憶病だったんですね……お父様の威光に怯え、私を見向きもしないお兄様の功績に怯え、自分の力である『神スキル』にも怯えている……こんな怯えっぱなしの私なんて、強くなれるはず、ありません……」

「…………」

「ラスティス様。私、もう……」

「エミネム」

俺は、エミネムの頭にポンと手を乗せた。

「俺は昔、自分の『枷』を外した時……恐くて動けなかったんだ」

「え?」

「俺の枷を外したのは団長で、俺は調子に乗ってたから、枷を外した時に飛び出した『神』を、自分の手で仕留めようとした。でも……あまりに怖くて動けなかった。そんな時、団長が俺を守ってくれたんだ」

「お父様、が……?」

キングパーンの両足が氷漬けになり、動きが封じられる。

サティが双剣に雷を宿し、跳躍した。

「あの時の団長、メチャクチャカッコよかった……ああ、俺は守られてるんだなーって、自分があまりにもカッコ悪いことを認識したよ」

「…………」

「エミネム。お前は確かに臆病者だ。でも……一人じゃない。俺もサティもフルーレもヴォーズくんもいる。一人で抱え込まず、頼ってみろよ」

「……頼る」

「なあエミネム。枷を外すのは怖いか?」

「……はい」

エミネムは俯く。

俺はもう一度、エミネムの頭を撫でた。

「怖いなら、俺が守る。お前の怖いモンは、俺がみんなブッた斬る。お前の傍には俺がいると思え。それならどうだ?」

「……ぁ」

頬を赤らめ、エミネムは……ほんの少しだけ微笑んだ。

「怖くありません。ラスティス様がいるなら……」

「よし。なら、もう大丈夫」

「……ラスティス様。私……『枷』を外します。二人に置いて行かれないように、もっともっと強くなるために。だから……お願いします!!」

「わかった。お前の枷、俺が外す。そして、お前を守ってやる」

「はい!!」

そして、キングパーンが両断され消滅……というか、全然見てなかった。

「師匠、終わりましたー!! どうでしたか!?」

「え、ああ……すごかったぞ」

「やったあああああ!!」

「……噓ね。あなた、見てないでしょ」

「いや、あー……うん、済まなかった」

正直に謝りました。

こうして、ダンジョンの一つを踏破。

地上に戻り、野営を設置して俺は今後の方針を伝える。

「ここからは、二手に分かれる」

焚火を囲みつつ言うと、サティが驚いていた。

「ふ、二手?」

「ああ。俺とエミネム、お前とフルーレとヴォーズくんだ。お前たちは残りの小規模ダンジョンを全て攻略しろ。俺とエミネムは中規模ダンジョンを攻略する」

「なな、なんでですか!! あたしだって中規模ダンジョン攻略したいですー」

「駄目。まず……俺はここで、エミネムの『枷』を外す。そうなると、エミネムは一日動けなくなる。お前たちはその間、先に進んでダンジョンを攻略しておけ。で、エミネムが回復したら、俺と一緒に中規模ダンジョンを攻略……遅れを取り戻す」

「枷を……」

フルーレがエミネムを見ると、エミネムは頷いた。

「わかったわ。サティは私がしっかり監督するから」

「ああ。お前の実力なら、小規模ダンジョンはもう問題ないだろう」

「ええ……あなたも、気を付けて。ちなみに言わなかったけど……私の枷を外した時、おじいちゃんは重傷を負ったの。それくらい、『神スキル』の中に眠る力の塊は凶悪よ」

「知ってる。ま、俺に任せておけ」

こうして、ダンジョン攻略は後半戦に入るのだった。