軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

七大魔将『破虎』ビャッコ⑤/虎の牙

「『閃牙』」

俺の最も得意とする斬撃。抜刀、斬撃、納刀を一瞬で行う技。

狙いはビャッコの首。手ごたえあり───……首は落ち、地面を転がる。

「今、何かしたか?」

「!?」

俺は瞬間的にビャッコから飛びのく。ビャッコはすでに拳を放っており、俺は鞘で拳を受けた。

後ろに飛んだのと、鞘で受けたことで直撃こそ回避できたが……ビャッコの拳が俺の腹部を掠り、猛烈な激痛が全身に走った。

「がっは!? な……馬鹿な」

名乗り、間合いに入った瞬間に斬った。

間違いない。手ごたえもあった。斬ったという事実に間違いは絶対にない。

だが、ビャッコの首は斬れていない。

ビャッコは首をトントンし、ニヤニヤしながら言う。

「斬ったぜ? 間違いなく、お前の斬撃はオレの首を両断した……だが『斬られた瞬間に治った』ら、斬られていないのと同じだ」

「何……」

「七大魔将には、魔界の伝承に残る偉大なる八つの獣の魂、『 八神獣(はっしんじゅう) 』が宿ってる。ラクタパクシャに聞かなかったのか?」

聞いた。ラクタパクシャには『フェニックス』とか言う魔獣が宿ってるとか。

「オレに宿る魔獣の名は『ウェアタイガー』……虎の始祖にして、不死の虎だ」

「……不死」

「ああ。不死っていうのは、その回復力にある。オレは首を落とされても、核を破壊されても治っちまうんだよ。はは、難儀な力だぜ……この力のせいで、痛みにも鈍くなっちまうし、どんな無茶もできちまう」

「…………」

マジか……不死って、傷は負うけどすぐ直っちまうってことか。

首を切った瞬間、すでに切断面が治癒されれば、それは『斬られなかった』と同じ。透明な刃で身体を『通した』のと同じってことか。

「まあ、火傷とかは数秒かかるけどな。ははは、お前はどうだ? 斬るだけか? なあ?」

「…………」

断言する。

こいつは俺の天敵。最悪の相性だ。

斬撃特化の俺とは絶望的に相性が悪い。どれだけ斬撃を突き詰めようと、俺の攻撃は全て『斬る』ことに特化している。

「お、いい顔だな。困ってるような、活路を見出そうとしているような。くははっ、オレはな、そういう奴らのを顔を見て、鼻っ柱をへし折るのが何より好きなんだよ」

「いい趣味だな……だが、お前の再生も無限じゃないだろ。だったら、お前が回復できなくなるまで斬りまくってやる」

俺は半身になり、柄に手を乗せ抜刀の構えを取る。

するとビャッコは、両手をパンと合わせた。

「『 理想領域(ユートピア) 』展開」

「っ!?」

そして───……周囲一帯が、木々の生い茂る『ジャングル』へと変化した。

「駆け抜けろ、『 野生王国(サバンナ) 』」

「りょ、領域……七大魔将の……ぅ」

猛烈な暑さだった。カラッと乾燥し、太陽が照りつけている。

周囲に生えている草木も大きい。樹木は二十メートル以上あるものばかりだし、草はイネ科のものしか見えない。

周囲は岩場もあり、小さい川も流れている。

大自然。これが、ビャッコの理想とする世界なのか。

ビャッコは、大岩に上に立ち、五指を開いて爪を光らせる。

「光栄に思えよ。この領域は、ルプスレクスの野郎に破られてから、更なる強化を施した特別製だ。オオカミごときの牙が、虎の爪と牙に敵わねぇってことを、テメェの身に刻んでやる」

「やってみろ、このデカ猫野郎」

ビャッコが大岩から飛び、俺に向かって来る。

やってやる。この野郎を何度も切り刻んで、この世から消してやるよ。

◇◇◇◇◇◇

◇◇◇◇◇◇

アルムート王国。

現在、七大魔将の脅威に備え、アルムート王国騎士団とアロンダイト騎士団が戦闘準備に入っていた。

アルムート王国騎士団はボーマンダが、アロンダイト騎士団はランスロットが指揮を執っている。

ボーマンダは戦闘準備を終え、ランスロットの元に来た。

「準備は」

「すでに完了しています。いつでも戦えますよ」

ニコリと、柔らかな微笑を浮かべるランスロット。

ラスティスとの戦いでランスロットは変わった。胡散臭い笑みは消え、素直な子供のように笑うことが多くなった……ボーマンダが気付くほど、ランスロットは変わったのである。

ボーマンダがいるのは、アロンダイト騎士団専用の郊外訓練場。

騎士団の数は三百ほど。十三の部隊に分けられ、総隊長を娘のイフリータが担っている。

神スキル持ちの娘。ボーマンダはエミネムを思い出す。

「団長、ご息女の心配ですか?」

見透かしたような言い方だ。

ランスロットは変わった。それは違いないが……どこか小馬鹿にしたような性格は治っていない。

ボーマンダはムッとして反撃する。

「心配はしておらん。ラスティスと共にいるからな。それに……魔族との戦いを経験させるのも悪くない。奴らの『領域』を一度でも経験したことがあるなら、その強さが身に染みてわかるだろう」

「……確かに、そうですね」

イフリータはまだ魔族との経験がない。

エミネムはすでに魔族と戦っており、ラスティスの指導も受けている。

遠回しに「うちの娘すごい」と言われたような気がして、ランスロットの眉がピクリと動いた。

「近々、イフリータの『臨解』を行おうと思いまして……団長のご息女はもうされたのですか?」

「……まだ早い」

「おや、そうですか。ロシエルのように生まれながら枷が外れていたのならわかりますが……もう十七です。私も十五で枷を外したので、遅いくらいですよ」

「……む」

ちなみに、ボーマンダが『臨解』したのは二十歳。

当時は最年少での臨解者だったが、ラスティス、ランスロットと天才が現れあっさり抜かれてしまった。

エミネムは十七歳。ランスロット曰く『遅い』らしい。

「……エミネムの『臨解』は、ラスティスに任せる」

「なんと。自ら行わず、ラスティスに任せると?」

「ああ。奴の弟子でもあるからな、師に任せておこう」

「ふふふ……それは楽しみですね」

バチバチと火花が散っているように見えるのは気のせいじゃない。

ボーマンダは鼻を鳴らし、質問した。

「ランスロット。魔族は……七大魔将は来ると思うか?」

「来ますね。剣士としての勘が告げています。団長、あなたも感じているのでは?」

「……」

感じていた。

膨大な闘気、といえばいいのか……強い『何か』がデッドエンド大平原にいる。

正直なところ、ウズウズしていた。

ボーマンダの神スキル『神撃』を、全力で振るえるかもしれない相手が、近くにいる。

それは、ランスロットも同じだった。

「ラスティスは、勝てると思いますか?」

「……わからん。ルプスレクスの時とは違う。それに、奴には弱点がある」

「……」

「ラスティスは、確かに強い。だが……どれだけ剣技を極めようと、奴の攻撃は全て斬撃に特化している。斬撃を無効化するような敵だとしたら……勝率は限りなく低くなる」

「……確かに、その通りですね」

ランスロット、ボーマンダは、デッドエンド大平原の方を見ていた。

「だが、奴なら」

「ええ。何かを起こす。気に入らないですが、そう思います」

「ほう、気に入らないか」

「ええ。だって私は、ラスティスが大嫌いですから」

あまりにも爽やかな笑顔で言われ、ボーマンダは思わず笑いそうになっていた。