軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追加調査1

怪しい依頼の調査は完了したが、報酬の話がまだ終わっていない。今日は盗品の引き渡しと報酬額の交渉があるため、王城に行くつもりだ。

今回の報告は冒険者としてではなく騎士としてだから、王城に行くのは俺だけで十分。だが、一応みんなにも声をかけておく。

「今から王城に行くけど、一緒に行く?」

「あ……では、私はその間にお買い物に行ってきます」

「そっか。ま、一緒に来ても退屈だろうから、それでいいよ。俺1人で行ってくる」

ルナを筆頭に、他のみんなも他にやることがあるらしい。というわけで、今日は自由行動だ。

王都に家を買うまでは、俺と一緒に行動しないと王都に行くことができなかった。でも今は気軽に王都に行けるので、わざわざ俺の用事に付き合う必要がなくなったのだ。こんなことなら、もっと早く家を買ったほうが良かったのかなあ。

王城にあるいつもの部屋に転移した。ここで王の手が空くのを待つ……つもりだったのだが、今日のいつもの部屋には珍しく人が居た。と言っても、王ではなく、見覚えのあるおっさんだ。よく王と一緒にいるのを見かける。側近的な人なのかな。

「お待ちしておりました」

側近らしきおっさんは俺を待ち構えていたようで、俺の顔を見るなり頭を下げた。

「待っていた? 王は居ないのか?」

「本日の要件は例の盗賊の件ですよね。そちらは謁見の間にて報告していただきますので、その旨をお伝えするためにお待ちしておりました」

冒険者ギルドも巻き込んだ大掛かりな捜査だったから、いい加減な報告で終わらせるわけにはいかないのだろう。謁見の間……久しぶりだなあ。

「なるほど……じゃ、謁見の間に行けばいいんだな?」

「準備がございますので、この部屋にてしばしお待ち下さい。準備が整いましたらお呼びします。では、私は準備がございますので、ここで失礼させていただきます」

側近のおっさんは矢継ぎ早にそう言って、部屋から出ていった。すると、すぐにメイドが入室してきてお茶を出してくれた。出されたお茶をすすりながらしばらく待つ。

ちょうどお茶がなくなる頃に、側近のおっさんが帰ってきた。おっさんは笑顔で頭を下げながら言う。

「お待たせいたしました。ご案内させていただきます」

「意外と早かったな」

俺はそう言って席を立った。

側近のおっさんに先導され、お互い無言のまま廊下を歩く。廊下を進み、扉を開け、また先に進み、謁見の間へと続く扉の前に到着した。側近のおっさんは、すぐにその扉を開けて中に入る。俺はそのままその後を追った。

「では、こちらへどうぞ」

側近のおっさんは、謁見の間の真ん中あたりで停止すると、隣に並ぶように俺を誘導する。誘導されるまま側近のおっさんの隣に立った。

目の前の豪華な椅子に、王がふんぞり返って座っている。王の両脇には高そうな服を着たおっさんが立ち、部屋の両脇には兵士が並んでいる。見覚えのある光景だ。

ただし、今日はいつもと様子が違う。人数もいつもより多いように思う。俺と王の間に、見覚えのないおっさんたちが数名、俺の方に向いて立っている。その中の特に偉そうなおっさんが、敵意むき出しで俺を睨みつけていた。

のんびりと謁見の間を観察していると、俺を睨んでいた見覚えのないおっさんが突然怒鳴る。

「頭を下げろ! 跪け!」

ん? 俺に言ってんのか? なんだ、こいつ……初対面の人に対する態度かよ。人間性を疑うね。うるさいから威嚇の魔法で静かにさせようか……。

「そのままで良い!」

王の怒鳴り声が響き、広い謁見の間が一瞬にしてピリついた。だが場の吸気を読まず、見覚えのないおっさんが言葉を返す。

「しかし陛下、この者の態度は……」

「構わぬ。すぐに報告を始めよ」

王は見覚えのないおっさんを無視して話を進めようとした。だが、俺は怒鳴られたままで気分が悪い。せめて誰なのかは聞いておきたい。

「いや、その前に。この礼儀がなっていないおっさんは誰なんだ?」

俺がそう言うと、見知らぬおっさんが俺を睨みつけた。俺も王も、それに気づきながら無視している。

「ドゥーリン子爵である。商人ギルド本部の管理を任せておる」

「今回被害に遭われたは主に商隊でしたので、詳細を確認していただくために同席をお願いしました」

側近のおっさんが小声で言う。側近のおっさんは、こういった補足をするために俺の横に並んでいるらしい。正直助かる。

ドゥーリンは盗品のチェックをするために呼ばれたようだ。こいつを排除すると話が進まないんだな。邪魔だけど今は放置だ。

でもイラッとしたのは間違いないから、こいつの気配は覚えておこう。次に会ったらコッソリとぶん殴る。

「了解。じゃ、盗品を出すぞ。全部盗賊のアジトから持ち出したものだ」

そう言って、持っていたすべての箱をマジックバッグから取り出した。大小様々な木箱が軽トラ約2台分、数にしたら23箱。うち2箱は硬貨がギッシリ詰まっているから、驚くほど重い。積み上げると開けるのが大変なので、床に並べていく。

すべてを並べ終えたので、王に向かって声をかけた。

「これで全部だ。危険物が入っていないことは確認済みだが、ここで開けてもいいか?」

この言葉に、王はドゥーリンに目配せをした。行動を促したのだろう。ドゥーリンは、神妙な面持ちで頷き、他のおっさんとともに並べられた箱を次々に開けていく。布が入った箱が開けられたところで、側近のおっさんから補足が入った。

「あの布は王家が注文した、紋章入りの高級品なんです。あれに手を出さなければ、ここまで大規模な捜査にはなりませんでしたのに……」

そういえば、アジトの奴が一番警戒していたのは布が入った箱だったな……。どうして布を警戒したんだ? って疑問だったが、これで納得だ。あの盗賊は、王家に喧嘩を売ったと判断されたんだろう。

ドゥーリンたち数人がすべての箱の確認を終えた。これで終わりかと思ったのだが、ドゥーリンは険しい顔で言う。

「貴様、まだあるだろう。全部出せ」

「は? これで全部だって言っただろ」

箱の中は何もいじっていない。証拠が無いと言われればそれまでだが、俺は王に対して怪しまれない程度の信用を積んだつもりだ。

しかし、ドゥーリンには信用が足りない様子。

「しらばっくれても無駄だ。こちらで盗品の数を調べてある。まだあるはずだろう」

俺がネコババしたと思っているな。こいつ、どうして初対面の相手にそんなに喧嘩腰なんだろう……。失礼にも程があるぞ。育ちが悪いのかな? それとも、王の躾がなってないのかな?

「俺はアジトに残っていた箱を全部持ってきただけだ。その前に処分された荷物については関与してない」

「今すぐ出したほうが身のためだ。憲兵に家の中を漁られたくないだろう」

言いがかりが止まらない。さすがにムカついてきた。とはいえ、謁見の間で貴族をぶん殴るのは、どう考えても拙いし……。仕方がない、嫌味の一つでも返して我慢するか。

「ふん、俺が盗んだって言いたいみたいだな」

「キミはずいぶんと金が好きらしいじゃないか。金に目がくらんだのか? いいから早く出せ」

ドゥーリンはどうしても俺を泥棒にしたいらしい。ああ、本格的に腹が立ってきたぞ。もう我慢の限界だ。ぶん殴ってもいいかな。うん、そうだな。よし、こいつをぶん殴ってこの国から出よう。

王都の家は惜しいけど、俺がアレンシアに足を踏み入れるのは今日で最後だ。

覚悟を決めて一歩踏み出したその瞬間、王が大声を張りあげる。

「待て!! ドゥーリン子爵、退席を命ずる!!」

「はっ! 陛下、何を……」

突然発せられた王の言葉に、ドゥーリンはうろたえながら反論しようとしている。

「黙れ! 聞こえなかったか? 退席だ」

「しかし!! 盗品はまだ……」

「衛兵! ドゥーリン子爵をつまみ出せ!」

王は何かを言いかけたドゥーリンを無視し、兵士に命令を出した。兵士は即座に動き、ドゥーリンを羽交い締めにして引き摺っていく。

ドゥーリン子爵は兵士に引き摺られながら、恨みがましく俺を睨みつけている。まあ、あいつが居ると話がややこしくなるから、途中退場は当然の処分かな。

「むう……こんなことになるとは……」

王はうんざりとした顔でぼやく。俺に気を使ってくれたってことかな。王の顔に免じて、ドゥーリンを殴るのはやめておこう。でも文句は言うよ。

「あいつは何なんだ? 人の上に立つような人間には見えなかったぞ?」

「彼の名誉のために言いますが、普段の彼は理性的な人間です。今日は虫の居所が悪かったのでしょう……」

側近のおっさんが答える。

たまたま機嫌が悪かったって? そんなんで八つ当たりをされても困るぞ。やっぱりあいつは要注意だな……。

まあ、邪魔者が居なくなったわけだし、さっさと報告を終わらせて報酬の交渉に移ろう。

「俺が持ってきた盗品はこれで全部だ。足りないというのなら、俺の他にも依頼を受けた冒険者が居るんだろう。マドフは何も話していないのか?」

マドフは手当り次第に声をかけているように見えた。それに、アジトに残された荷物も、1人で運ぶには難しい量だった。状況から考えると、複数の冒険者に仕事を振ったのではないだろうか。

マドフを含む関係者は合わせて6人。全員捕縛され、取り調べを受けているはずだ。おそらくマドフが中心人物だろうから、俺よりマドフに聞いたほうが早い。

俺はそう思ったのだが、王は静かに首を横に振った。どういうこと?

「そのことなのですが、実は盗賊の一味はアジトに居た1人だけでして……。マドフを含めた5人は、依頼を受けただけの冒険者だったのです」

「マジ!?」

側近のおっさんの説明を聞いて、思わず声が漏れた。側近のおっさんは、さらに補足をつなげる。

「はい。マドフは荷受人で、王都で捕縛した3人は輸送役でした。いずれもギルドに登録された冒険者です」

計算ミスをしたなあ。今回は首謀者を捕まえないと大幅に報酬が下がってしまう。だからこそ、わざわざ兵士に協力を頼んでまで確実に捕縛したのに……。まさか現場に首謀者が居ないとは。

「コーよ、心配せぬでもよい。報酬は満額支払う」

王が不敵な笑みを浮かべて言うと、側近のおっさんが口を挟んだ。

「陛下、予定と違うようですが、よろしいのですか?」

「うむ。コーの働きは十分であった」

側近の様子から察するに、王は土壇場で予定を変更したらしい。急な心変わり……ということは、ドゥーリンの件をこれで水に流せという意味なのかな。いいだろう、王の案に乗る。

「いやあ、助かるよ」

「その代わり、其方には追加で冒険者ギルドでの聞き取り調査を任せたい。やってくれるか?」

しまった、この流れは断れないじゃん。引き受けるしかない……。

「わかった。だが、俺も追加の報酬を請求するぞ。それでもいいか?」

「調査で金貨20枚、得られた情報によって上乗せを検討する。これでどうだ?」

報酬は安め。でも話を聞いて回るだけだから悪くはないか。この依頼は受諾するとして、最後に盗品の引き渡し交渉だ。

「妥当だな。了解だ。それと今回持ってきた盗品だが、これについても報酬を請求する」

「うむ。盗品の奪還には規定の報酬がある」

「奪還した金品の査定額の2割という規定がございます。検品、査定が終わるまで、しばらくお待ち下さい」

交渉するまでもなかったようだ。盗賊が大物であればあるほど儲かるんだな。硬貨だけでも相当な額だったはずだから、かなり期待できる。でも2割ってのは微妙かもしれない。ドゥーリンが指摘した通り、ネコババしたほうが儲かるのは間違いないぞ。

「盗品を国に渡さない奴も居るんじゃないか?」

側近のおっさんに聞いてみた。

「居ないこともありませんが、ごく少数じゃないですかね。盗品の売買は死罪までありえる重罪です。やっていることは盗賊と同じですから」

なるほど。この国では盗品のネコババが盗賊と同罪なのか。そりゃあ割に合わないわ。

「俺の話は以上だ。他に何かあるか?」

「以上だ。下がれ」

王が偉そうに言う。ま、王は偉そうにするのが仕事か。ここは王の仕事場なんだから、偉そうに振る舞うのは当然だな。

王に軽く手を振って、謁見の間を後にした……ところで気付いたのだが、ついいつもの調子で喋ってしまったぞ。今日は王の仕事場だったんだから、俺もそれに合わせて丁寧な態度を心がけるべきだったんじゃないかな?

いや、過ぎたことは仕方がない。王には怒られなかったし、別にいいだろ。気を取り直して冒険者ギルドに行こう。