作品タイトル不明
186 シロンの初恋
眠れぬ夜。
王家でシロンは、何も映らぬ石板をぼんやりと見つめるがその目には何も映らない。
夜も深まったそんな時間だった。
「·····」
石板が光りだした。
レビジョンが意識を取り戻したのかフォレストエンドの映像が送られてくるが、奇妙なことに夜なのに明るい。
火事の明るさではなく魔法の明かり。
きょろきょろと動く視点は、お酒を片手に踊る領民の姿を捉えた。
「幻覚魔法?」
シロンがそう考えたのも無理は無い。
レビジョンが瓦礫の街をふらふらと、光に誘われるように近づくと嬉しそうな領民と目が合う。
ありえない!
「まさか、サンダルフォンさまが!いや、ないですね。ははっ」
一瞬、勇者が脳裏に浮かんだが、操り人形が男を見せて単独解決なんてするわけないと自嘲気味に笑う。
なら?
近づいてきた領民から上機嫌にエールを渡されたようだ。
覚醒魔法、毒魔法、危険感知魔法、そんなエフェクトが画面の向こうで飛ぶが、判定は白。
「レビジョンさんも現状が掴めていない」
不思議な表情の領民が映り、どうやらエールを飲むようだ。
映像に変化は見られない。
「スタンピード失敗? もしくはそれを偽装した 精神支配(マインドジャック) をされている」
後者なら大量殺戮が始まった合図だろう。
チリンチリン!
迷わずベルを鳴らす。
シロンの胸の中で期待と恐怖が暴れる。
もしかして石板には何も映ってなくて大きなプレッシャーに気が触れたのかも。
「シロン様!如何されました?」
「これを」
指が震える。
「フォレストエンド!スタンピード撃退!?」
「まだ、分かりません」
狂っては無かった。
あとは真実を知るだけ。
ルーラなら確かめるために現場に飛ぶだろう。
「では?」
「真実を問います。魔導師クークルに接続を」
「はいっすぐに」
聡明な王女は安全確実な手段を踏む。
「シロンさま。魔術師の庵に繋がりました!クークル様は寝起きなので少しお待ちくださいとのことです」
「ありがとう。構いません」
王族の呼び出しにすぐに応えてくれるようだ。
「ふおっふおっふおっ、夜分にどうされましたかな?安心なされよ。全てを教えますぞ」
「·····」
しかし出てきたのは子供?しかも女?
「どうされましたかの?」
「貴女は、誰?」
運動不足そうな少女が自分の持ってきた杖を見てぴょんと跳ねた。
「しまったのじゃ!変化の杖じゃない!?」
「ほんとうに貴女がクークル?」
気まずそうに頷く。
「そうなのじゃ。実際は若いが、ここにおると年寄りの口調が移ってしもうてのう」
「秘密は守ります。それよりも教えてください。フォレストエンドの現状を」
命題魔法なのか白いフクロウ?が飛び世界の正解教えてくれる。
「ワールドサーチ、フォレストエンド現状。 スタンピード防衛成功、祝賀会」
「え?魔王は今?」
朗報に赤髪のマーラがちらつく。
「魔王、現状。 街の外でエクスと交戦中」
「え?エクスさんが!?」
戦ってる姿が全く想像つかず焦る。
「そうじゃ」
「増援はどれくらい必要ですか?」
胸を痛めて聞いたが、クークルは首を振る。
「そういう質問には答えられぬ。答えられるのは事実のみ」
「そうでした。では、質問を変えます。エクスさんは今?」
幾つかの行動を用意するシロンだが、
「エクス、現状。 すやすやとベッドで睡眠中。健康状態良」
「???」
長考。
「もう良いか? ふああー」
「クークルさんありがとうございました」
ふっふふーと笑う妹の笑顔が脳裏を掠めて頭を抑えた。
「シロンさま?ご指示を」
「壮行会の延期。それと明朝、兵を派遣して情報収集してください」
「はっ!」
思考は明日の段取り変更から、街を救ってくれたエクスへ。
「働きたくない少年。·····それがなんで?」
何かに気づくシロン。
なぜか顔が赤くなっていく。
「はっ! まさか、わ、わたくしを求めて」
これだけは言おう、絶対に違うと。