作品タイトル不明
185 燃える赤髪
様子を見ていたホワイト王国。
「エクス大魔導師、よく頑張って頂きました」
映像を見ていたシロンから目の光が消えて、ルーラが慰めるように抱きつく。
「お姉様。大魔導師さまは」
「ありがとう、ルーラ。もう。もういいのです」
対照的に別室では酒の入った勇者がご満悦に飯を貪り、ジャスティスは胸を撫で下ろす。
「ギャハハ。弱っ」
「ふむ。杞憂であったか」
しかしながら、
レビジョンの途切れた強制放映を目撃した多くの者がエクスの敗北と感じた中。
たった一人、正しく状況を理解した者がいた。
それは、マーラ。
「凄い。これは·····超効率化の先。連撃で喜んでいたが今なら分かる。あれこそが、超超効率」
彼女の瞳に生気が戻る。
いつしか恐怖の震えは興奮の震えに変わっていた。
「ああああ、凄いッ」
「マーラさん!大丈夫ですか?」
奇声にライネがビックリして駆けつける。
「心配掛けたなメイドさん。終わらせてくる」
「あっ、そこは窓」
開け放たれた窓からひらりと空を蹴り飛び出すと、漆黒の空に雷光が光る。
空に浮かぶ赤髪の女が狂ったように歓喜の声を上げた。
「ははは、これで終わりだぁ!」
ブォブォブォ!
雷球が着弾したのはしっぽを無くしたドラゴン。
今までの鬱憤を晴らすかのように。
傷付けられた尊厳を取り戻せ。
ブギョオオオ。
ドラゴンの悲鳴に、ざわついたのは魔王達。
だが!遅い。
「むぅぅぅ、何なの!?」
「魔王様、先程映像が途切れたことにより勇者が駆けつけたのかもしれません」
森林警備隊員の声に椅子から立ち上がり、
「勇者が?早くない? イゼル!僕ちんが戻るまでここを死守!」
「わ、分かった。ここは任せなさい」
ワープするも、余裕の笑みを浮かべたマーラの向こうではドラゴンが消滅しようとしていた。
「マーラ!? 生きてたんだ!」
「遅かったな、魔王。スタンピードは失敗だ。さっさと街から出て行け」
顔を赤くする魔王。
「むっかぁ!今度は殺す、確実に殺す、お前だけは許してあげない」
それに対して憐れむような表情のマーラ。
「今度? 終わったんだよ」
「またハッタリ?何度でもスタンピードを起こせば良いだけだし。それまで、震えて眠れ!!」
憐れみは笑いに変わった。
「ふふふ、ははは。あははは! これが笑わずにはいられるか」
「はあ?むっきーっ!覚えとけ次は殺すから!」
支配率が逆転した魔王は職能制限により街の外へと弾かれるのを見送るマーラ。
空に浮かぶ微笑みを浮かべた長身の女の赤い髪が揺れていた。
「終わったんだよ。愚か者め」
過去、エクスのバフが切れてスランプになったマーラは知っている。
今平然と空に立ち続けられるのはエクスのおかげ。手負いのドラゴンをリバースせずに圧殺出来たのもエクスのおかげ。
チャンスの神様を掴み損なえばそこで終わりだと。
「エコー」
マーラは複数のメガホンのような媒体を召喚しそれを周囲に投げた。
声を増幅する魔法で勝利の雄叫びをあげろ。
「フォレストエンドのみんな。聞こえているか?私はマーラだ」
魔法により増幅された声が荒れた街に響く。
「待たせたなみんな。喜べ、我々は勝利した!魔王は直に死ぬだろう、大魔導師エクスの命題魔法によって」
ざわめきが広がる中、演説は続く。
「いいか、先程のエクスのファイヤーボール。あれは消えない。これから一年、不滅の炎は魔王を焼き続ける。昼も夜も延々と焼き続ける。よって、フォレストエンドの勝ちだッ!」
ぺちゃっと拳に引っ付いた赤い炎は、延々と燃え続ける。
雨だれがぽつぽつと石を穿つが如く、エクスの炎はメラメラと魔王を燃やし続ける。
半信半疑の人々が固く閉ざされた家の窓からきょろきょろと外を伺う中、マーラはS級冒険者の器を見せる。
「聞け、スタンピードの生還者よ。私はS級冒険者、連撃のマーラ。酒場の全てのマスターに告げる」
聞いている民衆の喉が期待でごくりと鳴った。
「今夜は私の奢りだ。超超効率の大魔導師エクスに感謝を!」
街が歓声で揺れた。
「「うおぉぉぉっ!!」」