軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

176 勇者サンダル壮行会

次の日。

ホワイト王国はお祝いムードに包まれる中、シロン姫の表情は憂いを帯びていた。

そんなお姿もお美しい。

「シロンちゃ~ん。俺が守ってあげるからね」

「ありがとう⋯ございます」

対照的に近づいてきた幸せ絶頂な男、勇者サンダルフォンがごそごそとポケットを漁り小さな箱を取り出したようだ。

「実はさ、シロンちゃんにプレゼントがあるんだ。開けていいよ」

「なんですか? 指輪?」

趣味の悪い指輪。少し迷い機嫌を損ねるわけにもいかず辛そうに指に嵌める。

「驚いた? それは婚約指輪だよ。明後日頃には俺が大活躍して結婚が決まるから今日しか渡せないと思って。あれ?もしかして、そのデザイン気に入らなかった?」

「いえ」

こっそりと近づいてきた近衛兵に会話が中断されシロンは胸を撫で下ろしながら、何か動きがあったのか?と耳を澄まして小さな報告の声を拾う。

「報告します。さきほど、フォレストエンドにてスタンピードが発生しました」

「!!」

焦るシロン。

「サンダルフォンさま。早く向かってください」

しかしサンダルは狼狽えるだけ。

「ちょっちょっと、ジャスティス卿の指示を仰がないと勝手に出撃は出来ないよ」

「⋯」

しょせん、この男は協会の犬なのだ。

「そんな暗い顔しないでよ。俺が行ってすぐに倒してあげるから。重要人物は逃げ出したって聞いてるし。なら、少しくらい死んでもいいでしょ」

話が出来る相手!

シロンと目が合った風邪気味のジャスティスが近づき、にこやかに囁く。

「お顔が優れませんが、いかがなさいましたか?シロン姫」

「ジャスティス卿。フォレストエンドでスタンピードが発生しました。⋯式典はまだ始まっていませんが今すぐ向かって頂くわけにはまいりませんか?」

シロンは全てのカードを切っており、もはやお願いする事しか出来ない。

返ってきた答えは

「シロン姫。物事は手順が大切です。しかし、お気持ちは分かりました。大量虐殺が始まれば、壮行会のさなかでも直ぐに勇者を派遣しましょう」

「ありがとうございます!」

なんとか及第点だと、表情が少し和らぐ。

あれ?そんな中に呼ばれていない4人目がてこてこ近づいて。

「ふっふふー」

ジャスティスがぎょっとした目で見たのは満面の笑みで入ってきた御歳14歳。

「何用ですか?小さな妹姫」

「フォレストエンドには大魔導師さまがおられますが、そんな悠長にしてて良いのですか?」

揺さぶりを掛けてきた。

唖然とするジャスティスの隙を突き、シロンがサンダルを目で追撃。

「ジャ、ジャスティス卿。俺はいつでも出れます」

効いたっ!

圧力に負けて寝返ったサンダルに、ジャスティスの眉間に皺が寄る。

「勇者サンダルフォン。それは式典の役目を果たさずに勝手に出たいという意味か?」

「い、いえ。出たいという気持ちはあるという心づもりです」

2秒で屈服したサンダルを見たシロンの目から光が消えると、ジャスティス卿の牙は、間抜けな部下から揺さぶりを掛けてきたルーラへ。

「小さな妹姫。エクス大魔導師のことは調べさせて頂きましたが、現在は力を失い引退しているとか。子供の浅いはったりは効きませんよ。勉強になりましたか?」

「ふふっ。では私からもひとつ教えてさしあげます。知りたいことは自分の目で確かめるべきですわ」

反撃されボルテージがあがる。

「ご忠告感謝します。しかしながら出来るなら見せて貰いたい。もしもエクスが魔王を倒した暁には勇者に認定致しましょう」

「まぁ!ありがとうございます。きっと大魔導師さま喜びますわ」

ジャスティスは面食らった。

嫌味が効かないだと?

ルーラは、ただエクスを自慢したかっただけで、嫌味が一切なかったため噛み合わない。

遠くから全ての事情を察した爺やがうんうんと頷き独り言を漏らす。

「姫様はやはりトリックスター」

「侍従長さま。何か言われましたか?」

尋ねてきたメイドに首を振る。

「いえ、壮行会を始めましょう」

「はい!」

壮行会は、立食形式で貴族が集まり主役のそれぞれ2人に激励とお祝いを述べていくスタイルのようだ。

内情を知らないものはシロン姫にお祝いの言葉を投げかけ、それとなく知っている者は励ましの言葉を贈る。

このように。

「シロンさま、聞きましたぞ」

「レビジョンさん」

彼は見ていることを離れた複数の石版に映すことが出来る珍しい魔導師。

命題︰テレビジョン。

犠牲︰自らは視聴不可

「失礼。しかし、もっとご自分を大切にして欲しかった」

「ええ、私は彼のように自由を選べませんでした。ですが、ホワイト王国の誇りを捨てるのなら死んだようなもの」

真剣な表情に、ふっと魔導師が微笑む。

「気になりますか?フォレストエンドが」

「ええ。しかし知る術が」

憂いの表情に、この男。光を照らす一言を投げかけた。

「ところでシロンさまは、私の命題をお忘れですかな?」

「確かに適任ですが、貴方の命題は現場に行かないと使えなかったはず。危険です。許可出来ません」

今度は真剣な表情になる男。

「命題を果たせない魔導師は死に体ですよ」

「うっ」

完全にいい負けたシロンに石版が渡された。

「私が死んだらテレビのお墓を立ててください。それでは特別放送フォレストエンドのスタンピードを開始します」

「ご武運を」

石版には、泣きそうな自分の顔が写っていた。