軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

177 スタンピード3 反撃せよ

転送門を潜り抜けた魔導師レビジョンは、隠れ家喫茶から地上へ出ると想像外の光景に目を丸くする。

「なんだ·····あれは?仲間割れか?」

兎の縫いぐるみのような浮遊する悪魔?がオークに抱き着き電撃を放っている。

見間違いでなければ先程飛んでいたような気が。

ぐきゃぉー。

断末魔を上げてオークが小魔石に変わりころころと転がった。

パリパリと帯電した浮遊する兎と目が合う。

緊張でごくりと喉が鳴ったが、どうやら味方のようでふよふよと次の獲物を探して飛んでいった。

「ふぅー。使い魔か?いったい誰の」

逃げ惑う人の波に逆らうように危険な場所を目指して歩く中、数体の浮遊する帯電兎にすれ違う。

「まさかあれが複数いるとは。マーラではないし、エクス大魔導師でも無い。隣国の介入か?」

どうにも不可解な事が多すぎる。

空飛ぶ縫いぐるみもそうだが、それにしてはフォレストエンドの護りがあっさり抜かれているのも分からない。

「どうなっている?」

勇者を呼ぶための死体を探していたら、門の近くで、何か知ってそうな包帯ぐるぐる巻きで倒れている階級の高そうな領軍らしき兵士を見つけた。

第一怪我人発見。

近づいて手をかざす。

「おい、大丈夫か?君。エクストラヒール」

「げふっ助かるぜ」

回復魔法により全身から煙が上がったので、ファッションで巻いていた包帯ではないようだ。

それにしても、よく生きていたな。

「なにがあった?」

「イゼルが、森林警備隊のイゼルの野郎が裏切りやがった!あの野郎っ結界の電線を切ったうえ、裏門から入り門を開けやがった」

「なんだと!?」

「動けない俺の代わりに奴を追ってくれ」

どこかを指している。

「どこへ?」

「恐らく子爵家だ。このままでは街を掌握される。俺たち領軍は馬鹿だ。子爵の命令ならどんな理不尽な命令でも脳死で従うやつがいる。それは不味い」

「隊長がしっかりしていれば」

「俺が隊長だ!」

と、その時。

空が暗くなった。

「なんだ?」

「げふっごふっ」

遅れて、吹き降ろす風を叩きつけられ砂埃が巻い上がる。

圧倒的な存在感を感じて大空を見上げれば緑の鱗が見えた。報告には聞いていたが、これがモンスターの王者。

「あれはっドラゴン!」

「頼む、早く子爵様を」

興奮する。

「撮れ高」

「は?」

何か頼まれたような気がするが、私が命を賭けているのは映像。

それに戦闘力も無い。

「怪我は治した。私に頼るな」

「治した? ああっくそったれ、体が治ってるぞ!? 何を弱気になってたんだ俺はよお。礼を言うぜ。うおおおっ」

元気になったのかまた怪我をしに走り出した包帯男の背中を見送り、ドラゴンの方向へ走り出す。

「彼は馬鹿だな。そして私は大馬鹿者だ」

笑っていた。

「見ていますか?姫様!ドラゴンですよ!」

少年のように目を輝かせて危険に近づく。

「シティハイド」

存在をぼやかす魔法を使い、危険なグリーンドラゴンへとさらに接近。

なんの予告もなく、しっぽを一振した。

ズドーン!ガラガラガラ。

ただそれだけで周りの建物が音を立てて崩れ落ち砕けた欠片が体に当たり血が滲む。

「はぁはぁはぁ」

恐怖と興奮と感動で胸が張り裂けそうだ。

生きている。

こんな馬鹿は私だけだ!なんて浸っていたら、生粋の馬鹿が現れた。

「なんだ?あの馬鹿は」

思わず声が出た。

目に入ったのは、猫じゃらしと勘違いしているのか尻尾に飛びかかっていく子供の獣人。

ひょいっとドラゴンが尻尾を避けたから良いようなものの。

「殺されても知らないぞ」

しばらくひょいひょいと遊んでいたドラゴンが飽きたのか、急に尻尾を速く振って殺しにきて体が強ばる。

「危なっ·····いい??」

ズバンッと赤い血飛沫が弾けた!

ただし信じられない事に血が流れたのはドラゴンの方で、尻尾が断面を見せながら街の彼方へと飛んでいくではないか。

「は?」

遠くで土煙が上がった。

ドラゴンは硬い。

それはもう滅茶苦茶硬いはず?

グオオオオオオ!

怒ったドラゴンを前にして、猫の幼女は得意げに刀をぶんぶんと振る。

素人目には洗練されていないような動きに見えるが、あれは高度なフェイントなのだろうか。

「まさか、あの御方が東方の剣聖?」

分からない。

だが、大丈夫かもしれない。

レビジョンは、勇者いらないかもという言葉を飲み込んだ。