軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

175 勇者サンダルフォン

エクスがニトラに処した貧民スープの刑に巻き込まれ渋い顔でスープを啜ってる時、ホワイト王国にもドラゴン襲来の報せが届いた。

「報告です!フォレストエンドにグリーンドラゴン出現」

王の間で、国王達も顏を顰めることに。

「早すぎる。まだ部隊は帰ってきておらん」

「お父様は悪くありません」

「陛下、ご指示を」

出せる指示があればとっくに出しているわけで、静まる室内。

「ふふっ」

笑いだそうとしたルーラを目で制したのはシロン。

「ルーラ?」

「お姉さま。お忘れですの?きっと大魔導師さまが奇跡を起こしてくれますわ」

シロンは能天気な妹を優しい目で見た。奇跡を起こして欲しい、縋りたくなるのは自分も同じと。

王が呟く。

「どうしたものか」

しかしながら打てる手は無い。

そんな中、駆け寄る伝令の足音が聞こえた。

「失礼しますッ。勇者協会の方がお見えになりましたが、いかが致しますか?」

王の眉間にシワが寄る。

飛びつくにはリスクが高く難しい判断だから。

彼らはヤクザな組織で白い魔薬ゾンビパウダーまで扱っているなんて噂まであり、利権を吸いにきたのは明らか。

だが、強い。

「ここに通してください」

シロンの凛とした声が響き、近衛兵は困った顔で王を見て頷いたのを確認してほっとして敬礼。

「お連れいたします」

やって来たのは、ギラギラした指輪をした勇者協会の枢機卿ジャスティスと、不潔な感じのサンダル履いて現れた勇者サンダルフォン。

「魔王が現れたとお聞きし、勇者協会よりこのジャスティス、馳せ参じました」

「シロンちゃーん。会いたかったよ」

サンダルフォンがシロンを舐めるように見つめたが、嫌いなのか無視して直球で聞くようだ。

「対価は?」

「白金貨一万枚」

ジャスティスが嗤い金歯が光った。

「馬鹿げてる!」

思わず叫んでしまったのは近衛兵。

吹っかけてきたので気持ちも分からなくないが、マナー違反の近衛兵にシロンが冷たい目でじろり。

「黙りなさい」

「はっ! 失礼しました」

そしてその矛先は勇者協会へと。

「ジャスティス卿。貴方の勇者イゼルは責を果たせませんでしたが?」

「ははは、これは痛い所を突かれました。ただ、彼は名誉勇者。お金を払って私どもの看板を貸していたにすぎません。さすがに此度は看過できない不祥事を起こしたので既に除籍しておりますので御安心ください」

イゼルが凶行に走ったのは、しっぽ切りされたのもあるのかもしれない。

「それにしても、高すぎるのではありませんか?」

「これはおかしな事を。命に比べて高いものなぞありませんよ」

正論だが、暴論でもある。

「しかし、それでは民に重税をっ」

「シロン様は、フールが元勇者だったという噂を聞かれたことはありませんか?」

意外な事を言われ集中力がきれた。本当に勇者ならば不利な材料の積み上げになるからだ。

「あるにはありますが」

「彼の国は勇者協会を通さず、安く勇者を作ろうとした。そればかりか魔王を倒した彼に不細工な自分の娘を押し付けようとした結果、哀れなフールは新たな魔王になってしまった」

言葉に詰まる。

「それは⋯」

「ホワイトニング王国は、お金をケチりその悲劇を繰り返すつもりですか?」

シロンは、ちらりと勇者サンダルフォンを見ると、でへっと勇者がニヤけた。

「シロンちゃん。安心してよ。俺が助けてあげるから恩にきてね。シロンちゃんならフールも魔王なんかにならなかったのに」

何も理解していない操り人形の勇者がキメ顔で笑う。

彼は嫌いな男だが根は善人で、勇者協会からの汚いお金を貰って生活している自覚すらないのだろう。

シロンが、深い息を吐いた。

覚悟を決めた。

そんな顔で場を支配する。

「いいでしょう」

「さすがは、ホワイト王国!気前がよろしい」

「これでドラゴンスレイヤーか。腕がなるね」

「シロン、待ちなさい」

止めたのは王。

しかし、シロンは止まらない。

「父上、安心してください。金貨1枚だって勇者協会には払いません」

は?っ顔になる皆を置いて姫は続ける。

「対価は私。フォレストエンドを救った者に、この身を捧げましょう」

勇者の顔だけが喜びに染まる。

「シロンちゃん!やっぱり僕の事を好きだったんだね」

何を言ってるんだ?こいつ正気か?と、ジャスティスが横目で見ながらも提案を祝福した。

「美しい。民のためにその身を捧げる姫。このジャスティス感動しました。結婚式は、勇者協会をあげて大々的に祝いましょう」

「えっと」

「さすがはマイハニー。たくさん愛してあげるからね」

ぞわりとするようなセリフを吐き近づいてきた勇者の間に、ニコリと笑ってルーラが入って通せんぼ。

「勇者サンダルさん。気が早いですわ。それに、あの町には大魔導師さまがおられますの」

「え?でも大魔導師なら老人じゃん。そんな老人にシロンちゃんは相応しくないよ。あれ?もしかして、老人じゃないの?」

的外れな事を口走ったサンダルフォンに、ジャスティスが咳払いした。久しぶりに大魔導師が抜擢されたという噂は聞いているが、名誉の負傷で行動不能になっているいう噂も同時に耳にしている。

「しかしながら、その者は活動停止中では?現在これといった動きも無く、再稼働は絶望的」

これまた的外れのようだ。

何か事情を隠しているといった反応に近く、ジャスティスは戸惑う。

「ふっふふー、ヒントにこれを差し上げますわ」

謎の、冷たい棒を貰った。

なんだこれ?

「どうか⋯国民をお救いください」

シロンが深々と頭を下げて、謁見は強制的に打ち切られた。

商談は纏まったが、すぐに転送門で出発とはならない。

勇者協会は大きな組織のため、大規模な壮行会を行い始めて出兵となるのだ。

浮かれた勇者を他所に、枢機卿ジャスティスは用意された自室で冷たい棒をしげしげと眺めていた。

「ただの玩具に見えるが⋯」

鑑定してみるが、初級の風魔法と氷魔法が掛かっただけの棒。

「分からぬ」

ぞくりと首筋が寒くなった。

人は理解出来ないものを恐れる。

なぜ玩具を作っただけで、大魔導師になったんだ?

「まさか王族は何か隠している。大魔導師エクス、もしや今回の件に」

微塵も関わっていないが、ジャスティスは震える。

分からない事は恐怖だ。

何か起こるかも。

寒い中、じっと冷たい風が吹く棒の中を見つめるが何もない。

「寒い。この体の底からくる震えはエクスのせい?」

隠されたのは、しょぼい謎。