軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

174 ズーン!

「エクスさん、次は私たちの番ね」

クイーンの声に振り向くと、いちゃつく僕のデフォルメ縫いぐるみが目に入る。僕の虚ろはこの中が最近お気に入りのようだ。

「えっと、何かするの?」

「見せてあげるわ。制空権を」

たしか空を飛ぶんだったっけ。

最近、ちょっとだけ男前な分身の背中を押してあげようか。

「分かった。お願いするよ。カッコイイところを見せて」

こくこく頷いてくれて可愛い。

「レビテトォォォォ」

僕の虚ろを中心に巨大な魔法陣が現れると、部屋にいた二軍うさぎ達が一瞬輝いてふわふわと浮かび、ルカの目が輝いた。

「凄い!」

「えへへ」

ルカが叫び、虚ろが照れる。

「うん。僕も同感」

飛ぶメリットは分からないけど、うさぎの縫いぐるみが部屋にふわふわ浮く風景はまるで故郷で見たスカイフィッシュの群れみたいで幻想的だ。

「可愛いね、エクス」

「うん」

ご機嫌になったルカが踊るようにくるくる回って、スカートをたなびかせた。

ちらりと見えたのは純白レースの白!

満面の笑顔で振り向いたルカは怪訝な顔で首を傾げる。

「エクス、どうしたの?」

「なんでもないよ」

いや、今のは事故だから。

ルカも気づいてないし。

「エクスさん」

「なっなに!?」

咎めるように声を掛けてきたクイーンのボタンの目を恐る恐る窺う。

「私の二軍うさぎ、可愛いだけじゃないわ。強いのよ」

「そ、そうなんだ」

セーフ。

「あら?信じてないようね。見せてあげるわ。フォーメーションA」

二軍うさぎ達が号令にビシッと反応して、得意げなクイーン。

でも二軍うさぎがその場で足をばたばたさせるだけで、ルカが微笑み僕は困惑。

「えっと、クイーン?これが制空権なの?」

「⋯」

あっ!

こいつ、普通の縫いぐるみに擬態したぞ。

そんな無責任なクイーンを抱えておろおろしだした僕の虚ろと目が合う。

やれやれ仕方ないな。

「大丈夫だよ。進む力があればいいだけだから。小さき者よ。翼を与える。ダブルウインド!」

ほらっこれで空を自由に⋯

うあっ、しまった。

予期せぬ進む力を得たせいで、ドンッバンッドンッと部屋のあちこちの壁へと激突する彼女たち。

幸い僕には当たらなかったけど、

「ひゃう」

「げふっ」

痛あっ。まさか、驚いたルカに激突されるとは。

「ううっエクスぅ。魔法かけるなら先に二軍うさぎに説明しときなさいよ」

「ごめん、縫いぐるみが軽いからか、効きすぎたみたい」

何故か怒られてると、くま吉の声がした。

「へへっ、ひよっこども。こうやって両手を広げたら停止するんだぜ」

上を向くと、空中にぴたりと静止していてかっこいい!

くま吉にもかかっちゃったか。

「どうでい、相棒?」

「カッコイイねくま吉」

褒めると、すいいっと大気を泳ぐように動き回りだしたくま吉を見て、うさぎ達も真似するように続く。

興奮したルカが目に入る。

「楽しいね、エクス」

「うん」

ルカの弾ける笑顔にあてられてこっちまで幸せな気分だ。凄いぞ制空権。

クイーンと僕の虚ろに親指を立てて賞賛を送った。

クール!

「⋯空が、俺っちを呼んでいる」

くま吉が何か言い出した。

キメ顔でニトラの作った壁の穴から飛び出す茶色野郎。

「ひゃっほーい!最高だぜえええ」

ずどどどと、二軍うさぎが追うように空へと飛び立ったっていき部屋に風が吹いた。

「ちょっと、クレイジーベア!」

びっくりして怒るルカの髪を撫でて宥めると落ち着いてきた様子。

蕩けるような上目遣いで見てきて、どぎまぎして話を逸らす。

「えっと、ルカは何をするの?」

「私は、あの子たちがいないと何も出来ないから」

あー、めっちゃ遊んでるしね。

「命令しなくて偉いと思うよ」

「命令は出来ないの。それに友達に命令なんかしない」

使い魔では無い、契約でも無い、特殊な関係のよう。

「ごめん。ごめん」

「飽きてからでいいわ。スタンピードまでは時間がありそうだし」

どうなるのだろうか。

僕も戦った方がいいのかな。

「そうだね」

ズーン!

「エクス!」

「確認しよう!」

フラグ回収早いよ。

もうスタンピードが?っと思って轟音の正体を確かめに開いた穴に駆け寄ると、やっちまった顔のニトラと目が合った。

「違ったみたい」

気の抜けたルカの声が耳に入る。

どうやらさっきのは、庭木が斬り倒された音のようだ。

冷たい目で犯人を見下ろすと、振動剣を持ったまま弁明のため、ぴょんぴょーんと2階までやってきた。

ほう、言い訳を聞こうじゃないか。

「これは、草だから、いいよね?」

耳をしおしおさせてる。

う~ん、アウト!

僕はニトラに甘いけど、甘やかしてモンスターに育てるつもりはないので厳しくいく。

「ダメです。今日は貧民スープで反省するように」

「そんなっ」

「分かりました!お任せください。旦那さまっ」

ショックを受けたニトラと対照的に笑顔でライネが頷いた。

具の少ない貧民スープは料理が苦手な彼女の得意料理なのだ。