軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

173 振動剣

ふらふらしてるマーラを見て、ライネに目配せする。

「マーラさん、お部屋まで案内します」

「うん、ありがとう」

体は異常なさそうなので、後はきっかけさえあればって感じかな。

正反対に喉をごろごろ鳴らして甘えてきたニトラに微笑んでしまう。

「まずはニトラの魔剣作りから始めようか」

「ありがと」

おっと、隣のルカからプレッシャーを感じるので早めにすまさないと。

「あれ? そういえば、セーラさん。ニホントウって何処で手に入りますか?」

「あー、すまない少年。というか、言い出しておいて何だが、あれは珍しい。おそらくオークションじゃないと手に入らないだろう」

いつものように諦めたセーラさんに微笑む。ふふ、別にニホントウに拘らなくてもいいんですよ。

「そうだ! 普通の剣を2本では?」

「駄目だ。なまくらだと振動で折れる」

ええ!? そうなんだ。

いつものパターンが使えなくていきなり頓挫してしまったぞ、どうしよう。

「うーん」

「例えば柄に振動する石を中空に浮かせ、握ると刀身に接触するような構造にすれば、普通の剣でも実用可能だろう」

「作図は出来るが、作製は出来ないと」

「そうだ。騒ぎが落ち着けばどこかの鍛冶屋へ依頼すれば良いから、少し待てばいい」

ドワーフの仲間が欲しいな。

アミン様に相談したら、アミン様が付いてきそうで悩む。

さすがに女王は不味い。

「むりしなくていいよ?別にいらないし」

健気に笑うニトラ。

それなら仕方ないよねと思いかけて、

「待って! 考える」

思わず声が出た。

へにょっとなったニトラの耳に、貧乏だった子供時代の自分を見た気がしたから。

いや、もっと単純に。

凄いって目で見られたいだけかも。

「うん。でも我慢できるよ」

「いいや、我慢なんてしなくていい」

くいくいっとルカに裾を引っ張られた。

でも、オークションは開催されてないし、質屋には置いて無かったし、あぁっどうすればいいんだ。

何かないか考えろ、考えろ。

アミン様、部下の人、リィナの店、質屋、

ぐにっ。

·····ルカがほっぺに固い何かを押し付けて邪魔してきた。

ぐに、ぐにっ。

あのね、ルカ。

さすがに構ってちゃんがすぎるのでは。

「るひゃ·····」

視線は合わなかった。

ルカの澄んだ青が見ているのは、僕じゃなくて、ほっぺに押し当てたなにか。

見慣れない黒く艷めく 棒(ワンド) はピンクの花びらが散るような意匠が施されて武器なのか持ち手もある。

なんだ•••これ?

んあっ!

「もしかして、ニホントウ?」

「相棒、正解だぜ」

えええ、準備良すぎない?

マジックバッグから出したのだろうか。

「ありがとう。 でも、なんで持ってたの???」

剣なんて魔導師に扱えないから欲しいなんて選択肢はない。

まさか、ルカも勇者病に。

いや、勇者に憧れる僕へのプレゼントだったり。

「そいつは、クレドルに心酔した極東のお姫様が友好の証に送りつけてきた逸品だぜ」

「そうなんだ」

全然違った。

「主が腐らせとくより、使ってやった方がそいつも喜ぶってもんよ」

ルカも扱いに困ってたらしく、こくこくと頷くので気兼ねなく貰おうか。

「そういう事なら振動剣にしよう。ルカとくま吉、危ないからちょっと離れて」

「おうよ、期待してるぜ。魔剣の鍛冶師!」

ルカの腕の中で応援してくれたくま吉の口車に乗って、ちょっと格好つけてみようか。

こういうのは雰囲気大事。

みんなが見守る中、刀を片手で握り水平に突き出し構えて、厳かに決める。

「これから作る剣の名は、振動剣。剣よ魂よ、震えろ! アースクエイク」

ビィィィ。

「おおおおっ」

振動剣が震える音とどよめきが重なる。

赤の森に棲む死神チクチクの羽音ような甲高い音だ。

「少年、試し斬りはしないのか」

「ふふ、良いでしょう」

セーラさんに唆されて、部屋を物色すると飾ってあった鎧が目に入る。

たたたっと駆け寄り一閃。

「せいっ! なんてね」

いや、まぁね。

非力だから斬れるわけないのは分かっ!?

ジャイイイン。

なんだっ!?

振動剣が金属鎧に触れると、甲高い金属の鳴き声と熱い火花が飛び散り剣が食い込むように鎧に入っていき、ガシャッと音を立てて壊れた鎧のパーツが落ちた。

は?

「斬れた」

「きゃあ!」

皆が驚いた。

一番びびったのは、間違いなく僕。

「エクス、凄い!」

「相棒、やるじゃねえか」

「こうなるのか、なるほど」

「すごいすごいすごーい」

心臓をバクバクさせながら、わくわくしたニトラに釘をさす。

「ニトラ、この魔剣は危険だ。だから、魔物と雑草以外は斬らないと約束出来る?」

「出来る!」

いい子だ。で、どうやって渡せばいいんだ?

床に置くと暴れまわりそう。

早くと急かすニトラにパニックってペいっと投げたら、ちゃんと空中キャッチしてくれて良かった。

「魔剣・振動剣を授けよう」

「ありがと!ちょっときってもいい?」

渡してはいけなかったか。

「雑草だけだよ」

「うんっ」

スタンピードが待ちきれないのか、さっそく2階の窓枠に近寄り片手で開けられなくて、

ジャォォォン!バカッ!

斬って開けて満足そう。

「雑草ぉぉ!」

「ごめん、今のは無し。気をつける」

ひらりと出ていっちゃったけど、不安すぎる。

「人を斬らねば良いがな」

「セーラさん?」

「ふふっ冗談だ。驚く顔が可愛いな。さて、私はお風呂に入って寝るとしよう」

爆弾発言を残し、眠そうに、んぅ~と背伸びをして部屋を出ていった。

なんで落ち着いてるんだ?大人の女だからか。

僕は心配になってきたのに。

「エクス、あの子をもっと信じなさい」

「でも」

帰ってきたライネを見る。

「どうしたんですか?」

「ニトラに魔剣をあげたんだけど、人とか斬らないよね」

良かった、ライネが笑った。

「旦那様に奥様、ご安心を。あの子は隠すのが上手なんです」

良くねー。

ほら、ルカもあわあわしだした。

うん。なんか分かんないけど癒される。

ああっそうか! 自分より焦ってる人を見ると不思議と落ち着くんだな。