軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

169 スタンピード2

焼け爛れた森、荒れた岩山の洞穴が揺れた。

中からずりずりと這うように出てきたのは、硬い緑の鱗を纏った巨大なドラゴン。

獰猛な赤い目がカッと開き、鋭い歯を見せながら大きな口を開く。

グオォォォォォ!

グリーンドラゴン

脅威度S

ビリビリと揺れる空気の後に訪れた静寂の中で、小さなぱたぱたという羽音がして狂乱するのは小さな悪魔ゼノ。

「うぷぷぷー 僕ちんの時代がっキタァァー!」

ついに、恐れていた事が起きた。

…フール陣営が大物を引き当てたのだ。

その切っ掛けを作った新たな仲間となった全身黒鎧の男が、パチパチパチと、白々しい拍手をした。

「実に目出度いですな」

はて?どこかで聞き覚えのある老人の声だが。

「ありがとうね! まさか君が仲間になってくれるなんて驚きだけど」

「ふふっ確かに儂が一番、ゼノ君とフールから被害を受けました。が、それをチャンスと捉えただけのこと」

誰だ?

「たくさんの魔石ありがとうねー」

「なんのなんの、お役に立てて何よりです」

どうやらドラゴンが産まれたのは、老人が献上した魔石で、魔物ガチャの排出率がアップしたのが原因らしい。

「よろしくイゼル」

「ええ。森林警備隊の隊長と勇者協会で培った経験を活かし、これからはゼノ君の有能な副官となりましょう。人間牧場の管理は、人間の儂にお任せください」

裏切り者は胸を叩き、ガチャッと金属の音がした。

「でもイゼルは裏方でいいの?」

「構いません。儂はゼノ君にとってなんの価値も無い街の中にある財宝だけで結構ですので。ふはは」

あれ?意外といいコンビ?

「支配したらね。毎日一人ずつ殺すんだ。長持ちして僕ちん頭いいでしょ」

「待ちなさい。少しプランを練り直したほうが良いでしょう」

おやおや、さっそく仲間割れか?

ゼノがつまらなそうに疑いの目を向けるが、

「命乞い?」

「違います。安易に殺してしまうのは実に勿体ないっ。いいですか?殺すとどんどん減っていくのです。奴隷は大切な資源です。それより、男達には穴を掘らせ苦痛の感情を生産させるのです。築きましょう、我らの地下帝国を」

ニヤリと笑うイゼルの提案に、ゼノは興奮した。

「いいね!それ」

「すべて儂に任せなさい」

もう少し魔物が集まれば、スタンピードが起こせるだろう。

「臆病なフールと違って、人間も役に立つね」

「それは儂が特別だからです」

ドラゴンの咆哮が効いたのか黒い雲のようにフォレストエンドから、恐怖の感情が立ち上り始め、ゼノが恍惚な表情で口をパクパクして吸い込む。

「美味ちぃ!」

「はっはは。リョグ、マーラ、そして愚かなラードリッヒ。儂の栄光の老後を台無しにしおって。喜びなさい、貴様らは特別に殺してやる」

□■□■

同時刻、双眼鏡で警戒していた領軍の兵士が、ごくりと唾を飲んだ。

「ドラ·····ゴン」

ドタドタと、転がり落ちるように物見櫓から本部へと走る。

「リョグ隊長に早く知らさねば!」

鐘を鳴らさなかったのは街をパニックに陥れないようとの配慮からだろう。

「おいっ何があった?」

本部にいた包帯姿のリョグに、息を整えながら喋る。

「かはっ。ドッ、ドラゴンです。げほっ。グリーンドラゴンが召喚されました!」

「くそっ、スタンピードまで秒読みか」

隣で直立不動に立っていた副長が憔悴に満ちた顔でリョグに問う。

「隊長! イゼルは、いつ頃帰ってきますか?」

「分からん。王都へ転送門を使って、応援を求めに行ったばかりだ。まだだろう」

んん?

「早く帰ってきて欲しいですね」

「あぁ。あんな奴に頼る事になるとはな。しかしあのクソ野郎は交渉が上手めえ」

なんの話だ。

「ホワイト王国との交渉用に街の魔石も半分渡しましたし、必ずや精強な軍隊を呼んでくれるはず」

「そうだな、俺らはバカだからよぉ…腹の探り合いなんて出来ねえ。頼りたくねえが奴を信じるしかねえ」

バカである。

彼らの根底にある仲間を疑わぬ善良さが仇となったようだ。

「はいっ。リョグ隊長の仰るとおりです」

「おめえら、森林警備隊のイゼルが応援呼ぶまで気合い入れて耐えきるぞ」

パンっとリョグが手を叩いて締める。

「よしっ各員伝令。籠城戦、気合い入れてくぞ!」

「「おおーっ!」」

街の人達が心配そうな顔で外に出てキョロキョロする中、領軍は笑顔で伝えた。

「こちらは、領軍です。落ち着いて聞いてください。先程の咆哮はグリーンドラゴンです」

「やっぱり」

「スタンピード」

「フォレストエンドも終わりだ」

人々がざわめき、顔が曇る。

「静粛に!静粛に! しかしながらっご安心ください。今、ホワイト王国へ森林警備隊の勇者イゼルが増援を呼びに行っています。それまで死力を尽くして耐えきりましょう」

「間に合うのか?」

「イゼルはクソ野郎だが有能だからな」

「領軍! それよりもマーラ様はまだ休養中なのか?」

関心は、マーラへ。そしてエクスに及ぶ。

「マーラ様は、大魔導師の家で静養中です。回復は絶望的っ。ホワイト王国からの援軍を待ちましょう」

「それにしても、あの大魔導師は働かねえな」

「俺、お願いしてくる」

「俺も行こう」