作品タイトル不明
170 かくれんぼ2
話は戻ってエクス家。
「クレイジーベア! 遊びは終わり。迎撃準備よ」
ルカが叫んだせいで、棚から小箱が落ちて来て思わず手を伸ばすけど全然間に合わない。
どすっと小さな小箱は誰も居ないところに落ちて心臓ばくばく。
「危なかった。良かった。片付けしなよ ひゃうっ!」
思わず変な声を上げてしまったのは、取ろうとした小箱がガタガタ揺れて、パカッと開いた中から、くま吉がこんにちはしたから。
「どうしたんでい?相棒」
「うあー。びっくりした。そんな所に隠れてるとか思わないよ」
ルカに首を掴まれてぷらーんとしながらくま吉がどやる。
「へへっ相棒。俺っちは破天荒な男でい」
「奥様。私は二人を呼んできます」
「ありがとうライネ」
たたたっと駆け出したライ姉に手を伸ばす。
「ちょっと待って!」
「はい?」
止まって振り返りきょとんとしたライ姉。
「ライネって?」
「私の名前ですが?あのご用は?」
んん?
「いやいいよ。行ってライネ」
「分かりました!」
にこやかに駆け出したライネを見送り、全然良くないんだけどと深まった謎に悩んでたらルカが裾を引っ張ってきて言いずらそうに上目づかいでごにょごにょ教えてくれた。
「あのねエクス、私も最近知ったんだけどあの子の発音が悪かっただけみたいなの」
「ニトラァ~」
これで問題児を捕まえる理由が一つ増えた。
空気を読んで出てくるような子じゃないけど、上等だよ今日は負けてあげないから。
「でもよ、主に相棒。どうやって捕まえるんでい?」
そう、両手を広げたくま吉の言うように相手は手ごわい。
最近は串焼きの罠もお小遣いをあげてるせいか効果はいまいちだし。
「うーん。ここは特上肉の力を」
「駄目よエクス、時間が無いわ。私達は魔導師。魔法を使いましょう」
ふふんと無い胸を張るルカ。
そうだね。ちょっとずるな気もするけど今日はルカの上級魔法に頼ろうか。
「よろしくルカ」
「任せてエクス。サーチ」
悪戯っぽく笑って、目を閉じたルカは初級魔法を唱えた。
術者を中心に波紋が広がり生命のあるのものが引っ掛かる魔法だ。
人形のように整った顔、違うのは白くてはりのある肌が生命力を表現していて、長いまつ毛が羽ばたき澄んだ瞳と目が合う。
「初級魔法でいけたんだ」
「つ、使い方次第なの。あっち!」
なぜか顔を赤くしたルカに引っ張られながら隠れたニトラの場所へ直行してると、くま吉がぺしぺしとほっぺを叩いてくる。
「なんだよ?」
「やれやれ、相棒は罪な男なんだぜ。でもよ。一番は譲らねえぜ」
分からないけどイラッとくる。
「あの部屋よ」
「分かった。くま吉に一番槍を譲るよ」
「どうしたんでい?相棒ぉーー」
そんなわけで足を掴んで部屋に投げた。
バンと扉を体当たりで開いてくま吉が入室っ。
「ちょっとエクス!」
「飛びたい気分かなと思って」
ぷりぷり怒るルカに雑な言い訳をして二人は遅れて入室。
「そんなわけないじゃない。クレイジーベア、大丈夫?」
少しは反省するといいんだ。
「主、今の楽しかったぜ!」
なんだと? 興奮する熊に、ルカと僕は二人顔を見合わせて微妙な顔をした。
「エクス。その…怒ってごめんなさい」
「いや、いいよ。気にしないで」
やめて、心がずきずきする。
「相棒、もう一回やってくれよ」
僕の悪意に気付かない無邪気な熊の要求を断りづらい。
見える、見えてしまう。
くま吉の自慢話を聞いたうさぎ部隊たちが目をキラキラさせながら大挙してくる悪夢が。
「分かった。ニトラを捕まえてからね」
罪悪感から嫌といえなかったら意外な反応を示した。
「主、この部屋にはいねえぜ」
「え?」
くま吉は異界の目を持っているから近距離なら逃れられないし、ルカが魔法を使い損ねるのも珍しい。
「サーチ」
焦ったルカの答えを待つ。
申し訳なさそうに目を開けた。
「ごめんエクス、二階だったみたい」
「いいよ。ありがとう。行くよ」
「ひゃう」
今度は僕がルカの手を引っ張って階段をエスコート。
強い負荷が心臓に血液をどくどく送り息が荒くなる頃、次の部屋が見えた。
「はぁはぁ。行っけえ、くま吉ミサイル」
「ひゃっほーう」
上気したルカと遅れて入った僕らに返ってきた言葉は意外なものだった。
「主に相棒、この部屋にもいねえぜ」
「「え?」」