軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

157 サポート1の秘密2

ガチャガチャと鎧が擦れる音がする。

マーラの所へ案内してくれる冒険者は重そうな鎧を着てるのに僕より足が速い。

ついていくのがやっと。

「大魔導師さん、少しペースを落としましょうか?」

「いえ。僕は遅いけど無限に走れますので」

口の中から鉄の味がするけど、サポート1のAP+1があるから気にしないで欲しい。

だから、そんな目で見ないで。

「そういう嘘は良くないな、強がっていると魔の森ではあっさり死にますよ」

「大丈夫です。元冒険者ですから」

僕は出来るんだとムキになって走る。

サポート1の真価に気づいたのは、森林警備隊の警ら業務の下請けに初参加した日。

死んだ·····と思った。

たぶんサポート1に、生命+1という誰も使わない基礎魔法を入れて無かったら、僕はあの日あっさりと死んでいただろう。

死ななかった理由は、延長の命題により生命+1が無限延長されて下限が1に固定されるからだ。

だからシャドウウルフの噛みつきも、キングオークの棍棒も、ドラゴンのブレスも、延長中なら等しく生命力残り1で耐えてしまう。

こんなチートが知られてないのは、延長が僕だけの物だから。

「はぁはぁ」

「え?」

思考を乱すような荒い息が聞こえてきたので、走りながら見上げると冒険者の人が鎧が重いのか辛そうな顔をしだした。

「そろそろ休んでも大丈夫ですよ」

「僕は大丈夫ですが?」

限界が近いのを隠しきれない表情に、もしかして追い抜けるのでは?という邪な考えが頭をちらつく。

「くそっ、魔法職のくせに後悔しますよ」

「僕は負けません」

冒険者 VS エクス

僕達は子供のように本気で競走しはじめた。

びゅんっと距離を離されたけど、チートしてる僕はじょじょに距離をつめていく。

ついに、捉えた。

「かはっ限界だ。嘘だろ?これが弟子を想う力」

「うぉぉぉぉっ。きっ気持ちいい〜」

YouWin!

勝利の味にぞくぞくする。

いつもニトラに駆けっこでは負けるので、たまにはいいよね?

帰ったらルカに自慢しようか。

いや、呆れた目で見られそうなので、僕を盲信してるライ姉に聞かせよう。

「すみませんでしたっ。待ってください。大魔導師さまーーー」

「はぁはぁ。仕方ないですね ん?何だろう」

前方に人だかりが見えた。

いやそんな事より完全勝利して足を止めると、限界を超えて酷使した足がぷるぷると震えだす。これ、ダメージ受けてるかも。

「「ぜーはー」」

2人して荒い息を吐いて一旦休憩。

先に呼吸が回復した冒険者の人が立つと、人だかりを見つめて首を傾げて何かを見つけたようだ。

「なんで?マーラ様があんな場所に」

「え?どこに?」

どうも人だかりの向こうに、氷漬けのマーラが見えるようだ。

頑張って背伸びをしてうろうろしたけど人垣のせいで、背の低い僕には何も見えなかった。

「あっ!肩車しましょうか」

「いえ。ここまでの案内ありがとうございました」

ぐぬぬ。

身長を伸ばす初級魔法は無い。

なぜ無いんだ。

「でも、そんなに小さいと」

「駆けっこでは僕が勝ちましたよね?僕には僕のやり方があるんです」

ついイラッときて反撃しちゃった。

小さいマウントを取ってしまい、満足感と罪悪感が。大人げなかったな。

「いえいえ。それなら、もっといい方法があるので、私に任せてください」

「はい?」

怒ったのか黒い笑顔になって、何をするんだろうと思ったら大声で叫んだ。

「皆っ!!!聞いてくれ。マーラ様の師匠のエクス大魔導師を連れてきた!」

「ちょっちょっと」

いきなり何を言い出すんだ。

大勢の人が一斉に振り向き、僕を見つめてきたじゃないか。

「今からマーラ様の所へ、師匠の大魔導師が会いに行くから道を開けてくれ!」

「え?え?え?」

人垣が割れるように延びていき、氷塊が見えた。

「大魔導師エクスさま、お進み下さい。走るのには負けましたが、お役に立てて何よりです」

「あっありがとうございます」

なんて大人げないんだ。

でも、道は拓けた。

両側から、ちくちく刺さる視線を浴びながら、マーラへと近付いていく。

「あの子が大魔導師?」

「なんで今まで出てこなかったんだ」

「馬鹿っ見りゃ分かるだろ、とても戦えるようには見えない」

ざわざわとした声を聞き流し到着。

体がばらばらになってなくて安心した。これなら生きているはず。

「マーラ、久しぶり」

氷漬けにされた無言のマーラは美しかった。

やれやれ、手間が掛かるな。

「ファイヤーボール」

氷塊に魔法を放つ。

じゅじゅじゅっという音を立てながらじわじわと氷が溶け始めると、何を勘違いしたのか正義感にかられた人が出てきた。

「お前、マーラ様に何をする!」

「何をって?氷を溶かしてます」

「馬鹿野郎、マーラ様の遺体が燃えるだろ!」

「いいえ。魔法の炎は自然の炎とは違います。対象が消えたら消えます」

素人発言を指摘され目を白黒させてるけど、自然の炎なら炭もないのに燃えないよ。

ビキッ!ゴロゴロ。

氷が砕ける音がして地面に転がったマーラの胸が上下に揺れ始めて息を吹き返した。

「かはっひゅーひゅー。げほっごほっ」

ほらね?と文句を言った人を見ると震えだす。

「生きかえった?」

「いいえ。マーラは死んでません」

信じられないって目で興奮しながら見てきた。嬉しそうにはしゃぎだす。

「奇跡だ!!マーラ様が復活された!マーラ様が復活されたぞ」

「「おおおおおおおおっ」」

どよめきが気持ちいい。

近くの数人から畏敬の瞳をバシバシとぶつけられる。僕はファイヤーボールで氷を溶かしただけなんですけどね。