軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

133 キノコ狩り4

「そうだ。ライ姉もやってみる?」

「はいっ」

少し疲れたので交代して籠を持つことに。

前の僕ならギルマスの錬金術ならぬ連勤術とかいう休まない方針に従って限界までやっていただろう。問題は自分のバフ魔法のせいで体力の限界による終わりは無かったことだが。

悲しい過去に浸ってると張り切ったライ姉が凄い勢いでズババって採取を始めた。えっ?僕の2倍ぐらい速くない?

「凄いね。才能あるよ」

「毎日やってきましたから」

そういえば、スラム街の孤児でゴミ拾いが日課だったのか。悲しさの次元が違った。

「そっか。大変だったね」

「いえ!今はご主人様に拾って戴いて、毎日とても幸せです」

「それは良かった」

「あわわ、今の無し!つい癖でご主人様呼びを。でも、なんて呼べば良いですか?」

ちらりと近くのルカを見る。

「ルカに聞いてよ」

「そんなの普通に呼べばいいの」

これは、察してっ意味で、望む回答は決まってるパターンだよな。

面倒なルカの試練に挑戦するのはライ姉。

「では、エクス様。エクス君。いや、エッ君はどうでしょう?」

「げふげふっ」

不意な一言に思わずむせたら、ルカにジト目で見られた。

「…エクス」

「なんでも無いよ。でもその呼び方はちょっと」

師匠、元気にされていますか?

初恋の人、エリーゼ。

歳を取らない大人のハイエルフ。

ズキリと胸が痛んだ。

困ったライ姉は、ルカに直接聞くことにしたらしい。

「奥さま、なんてお呼びすれば?はっ!旦那様はどうでしょう?」

「悪くないわ」

「外堀作戦成功だな、主!」

こ、こいつう。

まぁ嬉しそうなルカを見てると、怒る気も湧かないけど。やれやれ。

「私の大事な旦那様、命を懸けて頑張ります」

「ほどほどでいいよ。ブラック反対」

それに荷物も増えそうだし。

遠くで狩りにはしゃぐニトラを見てそう思った。

日が暮れて、籠からキノコが溢れ、ニトラがオーク肉を大量に抱えて嬉しそうに近寄ってくる。

「おにくっおにくっおにくっー♪」

「ニトラもお疲れ様。串焼きフルコースかな」

「えへへ、まだあるよ」

取りに戻っていく揺れる尻尾を見送る。

「さて、そろそろ帰ろうか。ルカ、長い布を出して」

「仕方ないわね。エクスは私がいないと駄目なんだから」

マジックバッグから出して貰った長い布にレビテトをかけて魔法の絨毯が完成。

戦利品を山盛りにしていく。

「それにしても採ったな」

「ええ」

「俺っちにかかればこんなもんよ」

「頑張りました」

「おにくっおにくっおにくっー♪」

皆の顔は充実感に満ちている。

心地好い疲労感。

ん!!!?

そっか、程よい疲労って良いんだな。

「さぁ、僕たちの家に帰ろう」

ルカをエスコートして魔法の絨毯に引き寄せて、全員乗ったのを確認して出発!

「ウィンド」

両の手のひらから出る風を推進力にふよふよと、楽しそうに談話しながら危険なはずの魔の森から帰還。

「エクス、楽しかった!また来ましょう」

「そうだね」

「俺っちの活躍が目立ったぜ」

「ニトラもだいかつやくした」

「偉い偉い。でも旦那様の雷剣のおかげでしょ」

「ううっそうだった。ありがとう」

灯りの代わりに前方に配置した火の玉を避けるように森が蠢き道が出来るので、とても快適。

「森よ、道を拓け」

カンカンカン!

街に近付くと作業音が聞こえて、行く時は無かった牢屋のような防衛拠点がポツポツ現れ始めた。

建築作業していた冒険者とスラム住人が、僕の絨毯に気付くと驚愕して手を止めてめっちゃ見てくる。

「なんだ??あれは」

「エクス先生が乗ってる!」

「まさか、魔の森で遺失魔道具をエクスさんが見つけたのか?」

そういえば、彼らは防衛拠点を作るとかなんとか言ってたな。

背中に温もりを感じた。さっきまではしゃいでいたルカが人見知りを発動して背中に隠れるようにしがみついてきたからだ。全くこの子は。

「見てみろ。遺失魔道具の上に凄い量のオークを載せている!」

「俺たちのために戦ってくれてたんだ」

「凄い」

ニトラの耳がぴくぴく動き、尻尾が揺れる。

何か話したそうに近寄って来たので、両手を横に広げて推力を0にして停止。

「エクス先生!前線で魔物を倒してくれてありがとうございます」

「エクスさんが前線で戦ってくれたお陰で、拠点が完成したぞ」

「だから、明日から街の防衛は不甲斐ない俺らに任せてくれ」

「いえ、あの…僕たちはキノコ狩りしてただけです」

真実を告げたら、まるで少年が勇者を見るかのようなキラキラとした視線でオッサン達に見られたんだけど。

「見直したぜ!功績を誇らないなんて本当に格好良い」

「もしかして、今までも陰で守ってくれてたのか?なんてな」

「そんなの当たり前じゃねえか!後ろに積んでる大量の魔石を見て見ろよ」

「いえ、違います。魔石は獣人のニトラが1人で狩ったので」

いっそうキラキラした視線で見られた。

何故だ。

「くっそー。格好良い!あくまで功績を隠すのか。憧れてしまう」

「仲間を立てる。これこそヒーロー!」

「そうか!実は大魔導師さまなんだな」

ダメだ。

話が通じない。

ルカががくがく震えてるので発進してもいいよね?両手を後ろにふよふよと風をきる。

「「ありがとうー!」」

ふっ、人と人とは分かり合えないのかも。

炎を消して、入口に入るとビシッと敬礼で迎えられた。

街に入ると、すれ違う人達にぎょっとした顔で見られる。

「なにかしらあれ?」

「遺失魔道具に乗る子供達と、大量の食材?」

「あの子、便利なエクスくん?」

大人なのに。

まぁ僕の体は成長しないんだけど。

定食屋の前に到着したので風魔法を消す。

「よっと」

ひらりと着地が成功。

ルカの手を取って食堂に入ると、メイン食材が尽きているからか閑古鳥が鳴いていた。

「やれやれ、キノコ狩りしてただけなのに」

「諦めなさい。貴方はチートなの」

「相棒、有名人だな」

「旦那様の凄さがようやく伝わりました」

「お肉フルコース」

店の奥から元気の無い犬耳店員がふらふらと現れる気配が。

ふふっすぐに笑顔に変えてあげよう。