軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

108 ルカとライ姉3

「奥さま、今バナナにかけられた液体は何でしょう?」

興奮気味のライ姉がルカに絡むと、優雅に振る舞っていたルカが人見知りに戻ってしまったようで、固まったまま目で助けを求めてくる。

「ライ姉、それはポーションだよ」

「そうなんですか!御主人様は物知りです」

うっ、ライ姉がくるっとターンして僕を狂信的な眼差しで見つめてきた。

ルカの口元がありがとうと動いたような気がしたからいいか。

「助かったぜ相棒」

「やるじゃないエクスさん」

少し救われる。

出来れば僕も助けて欲しい。

それにしても、もう少しまともな朝食が食べたいな。少し前までスライム食だった僕が言えた義理じゃないけど。ライ姉は暴走するから、言い出しにくいし。

ニトラの耳がぴくぴくして顔を上げた。

「誰か来た!」

全然聞こえなかったけど獣人は凄いな。

「教えてくれてありがとう、よく聞こえたね」

「良くやりましたニトラ」

「こんなの普通だから」

そっぽを向いたけど、ライ姉に撫でられて尻尾がぶんぶんと動いてて照れが隠せてないようで見ててほっこりする。

「行こうか」

まぁ基本、予定の無い僕らは揃ってぞろぞろと客の顔を見に玄関へ。あれ?ルカも来るらしい。

「御主人様、誰でしょうか?」

「うーん。見てのお楽しみかな」

案内人か姫様、もしくは――

「げげっ」

思わず声が出た。

扉を開けて玄関の前にいたのは、どこかで会った派手な服の女性と清楚な服の女性と大男。

しかも、その後ろに大勢スラム街の人達が荷物を抱えてた。少し警戒。

「やっほー。エクスせんせ、久しぶりだねえ。アタイたちの事は覚えてる?」

「何の御用でしょうか?」

さっと前に出て皆の盾になると、きょとんとした顔をされた。

「いや…アタイ達は呼ばれてきたんだけど?」

視線を追って首を回すと僕の肩に乗ったクイーンが、短い足を組み偉そうに挑発してきた。

「あら今日は鼠がいないわね?」

「ああ?何だって?」

予想どおり派手な服の女性の顔が怒りに染まり、ギロリと睨んできて一触即発に。

はぁ、なんで僕が。

「あの…ウラカルさんは?」

「あの人は、俺の仕事は便利屋じゃねえと拗ねちまってさ」

「ボスが来なくてごめんなさい」

「お嬢が謝ることないんだな。 痛ってえ!すみませんでした、姐さん」

うわっ。彼女のヘイトを大男が引き受けたのかヒールで足を踏まれて涙目になってて痛そう。うちのうさぎが迷惑かけてごめん。

姐さんは刺すような視線から、愛想笑いに戻り猫なで声で話しかけてきたんだけど。

「黙りなッ!…すまないねえエクスせんせ」

「あの…先生じゃないんですが」

「もうっ謙遜しちゃって、あの人がそう呼ぶ以上はアタイもそう呼ばせて貰うから。エクス先生は見かけによらず頼りになる男なんだってね」

「はあ」

なんかもう恐怖しかない。

てててっと走り出す影が、姐さんに近づき指を突きつけた。

「おうおう、さっきから聞いてりゃぶ」

「ちょっとくま吉黙ろうか。皆さん案内しますから荷物を運んでください」

これ以上面倒にされてはたまらないので、じたばた暴れるくま吉の口を塞ぎ、ルカの別棟へとご案内〜。

「ぷはっ何すんでい、俺っちは相棒を思ってだな」

「ありがとう。でも仲良くしてよ」

「おおぅ、仕方ねえ。大目にみてやるか」

姐さんのパンパンと手を叩く音が響く。

「さぁて、皆。仕事の時間だよ!」

「「おー!」」

ぞろぞろとスラムの住人達が荷物を運んでいく。

おっ、あの人が運んでるのは屋台の人達に押し付けられたリュックサック。

「すみません」

「ひぃっ!おら何かしてしまっただ?」

「エクスせんせ、何か失礼があったかい。しっかりヤキ入れるから気軽に言ってよね」

姐さんに脅されて、荷物を運んでた人ががくがく震えだしたんだけど。

「いえ、違います。そのリュックの中身は大量の食料なんです」

「あわわ、信じてくれっ。おねげえだ。おら何も盗んじゃいねえ!スラム帝国のモンに手え出すバカなんて裏町にいねえんだ」

「言い訳はいいからこっち来なっ、ここじゃ床が汚れるから。エクスせんせ、ごめんねえ。吐かせてくるから少し時間を頂戴な」

凄惨に笑って何をする気なんだよ。

周りのスラム民も戦々恐々と姐さんを見てる中、動揺しすぎたのかリュックをひっくり返して食料がごろごろと転がる。

「アゥアゥア…おらは…」

「その人は何もしてません」

「あ!ありがとうございまずぅ」

凄く感謝された。

まるでピンチの村に勇者が現れたかのような。でも火をつけたのは僕だから複雑。

「エクスせんせ。念の為に吐かせるだけだから手間じゃないよ?」

「違います。それは差し上げます」

びっくりした顔で見られた。

「良いのかい?」

「ええ。皆さんでどうぞ」

スラム街のお手伝いさん達の目が、食料品を見てギラギラと輝きだした。姐さんがニヤリと笑う。

「お前ら、頑張ったもんから好きなのを選べるようにしてやるよっ!」

「「流石です、姐さん!やっぱり姐さんは良い女だ」」

満更でもなさそうな姐さんは照れ隠しに怒った。

「このスカタン!お礼はエクスせんせに言うんだよ」

「「エクスせんせえ、ありがとうございますだ」」

おおぅ良かったね。

張り切るスラムの住人にうさぎ部隊も混ざって運ばれてきた荷物を次々とくま吉の指示でセッティングしだす。

どさどさっという音がして一匹のうさぎが荷物の下敷きに。手助けに行こうとしたらクイーンに耳を引っ張られた。

「痛っ」

「少し様子を見てて」

見てるとニトラが近付いてきて、ひょいと荷物を持ち上げた。だから何なの?

あと汚水がうさぎ部隊にかかった時も同じ感じで、ライ姉が助けるまで止められた。

「何なの?」

「エクスさん。乙女には秘密があるのよ」

もふもふしてやった!

「こいつめ」

「あぁー、激しすぎるわ」