軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第176話 裏切者と反逆者

ケルヴィム曰く、奴が 白翼の地(イスラヘブン) に戻らない以上、他の十権能が外に出て来る事はないという。もちろん、これは現在セラが捕らえているもう一人の十権能も、そのまま捕獲した状態である事が条件となっているが…… それでも、敵側がかなり不利になったのは確かだろう。どんなに強い力があろうとも、外に出られなければ 白翼の地(イスラヘブン) に投獄されているようなものだ。

「各地に被害が出ないのは良い事だけど、もう十権能が攻めて来ないと思うと、何だか残念に思っている自分もいるような……」

「おい、何で複雑そうにしている? この話はお前達にとって、メリットしかないだろうが?」

「変態だからですよ、重度の変態だからです」

だから変態じゃないと言うに。

「分かった、ここはポジティブに考えよう。もう敵側が攻め手に転じる事はない。そして、今まで居場所が不透明だった敵の本拠地、 白翼の地(イスラヘブン) もケルヴィムの情報があれば、どこにあるのかが判明する。要は守りのターンが終わって、いよいよ俺達が攻めに行けるようになったってこった。そうだな?」

「ポジティブも何も、初めからそういう話だった筈だが?」

「やはり変態なんですよ、途轍もない変態です」

ハッハッハ! ……ルキル君、そろそろバトりますよ? キレはしないけど、バトルを所望し始めますよ?

「つか、お前ら意気投合してんのな…… 一応、立場的には敵じゃなかったっけ?」

「立場的には敵であるが、目的は同じだ。そう、エルドを倒し俺が十権能を正しき道に取り纏める為のな。神などという立場はなくなり、この世は真の自由を手に入れる事になるだろう!」

「そうです。十権能の長であるエルドを 理解さ(わから) せ、メルフィーナ様を崇め奉り転生神に復権させるという、唯一無二の正解ルートへと導く為に必要な事なのです!」

「「……は?」」

漸くお互いのスタンスの違いを理解したのか、意見を言い合った直後にバチバチと視線で火花を散らし始める二人。肌に刺さるような良い殺気である。

「ルキル、エルドの背信を悟って、逸早く十権能から距離を置いたのではなかったのか?」

「貴方こそ、メルフィーナ様の素晴らしさに気付いて、裏切りを働いたのではないのですか?」

「何を馬鹿な事を言っている? 先ほど戦闘前後の話を聞いたいたと言っていたが、お前のその耳は飾りなのか? 冗談だと言うのなら、まあ笑えないが許してやらんでもないが?」

「見た目からして素直ではない貴方の事です。そんな尤もらしい理由をつけて、十権能を離脱したと考えるのが普通でしょう? え、何ですか、本気で言ってます? 頭腐ってます? 頭沸いてます?」

あ、殺気がマジなものになりかけてる。そろそろ止めないと 聖杭(ステーク) がやばそうだ。

「ああ、ちょっと待った。状況整理がしやすいように、当事者のメルを呼ぶわ」

「へ?」

『へ?』

偶然にもルキルの声と、念話でのメルの声が重なる。あっちもこっちも、俺の言葉を予期していなかったようだ。という訳で、はい、召喚。

「……あなた様、なぜに私をここに?」

「必要だったからな。それに、いつまでもルキルと会わない訳にはいかないだろ?」

召喚されたメルは、手にマイDONぶりを持っていた。口元には米粒を幾つか付けている。どうやらお食事中だったようで。いや、メルは食事をしていない時の方が稀だから、何らおかしな事はないか。これがいつも通りのメルである。

「ふわああぁぁぁーーー! メメメメ、メルメルメル、メルフィーナ様ぁ!? そんな、そんな突然現れてもらっては困ります! 私、ルキルはまだ心の準備ががががぁ!」

「「!?」」

そんないつも通りのメルの姿に納得していると、大きな叫びを上げながら、ルキルが物陰へと猛ダッシュで隠れていた。あ、あれ? なぜかルキルが発狂している。いや、ネガティブ狂信者ってのは知ってたけど、こんな感じで発狂する奴だったっけ? メルフィーナを前にしても、普通に会話はできていた筈だけど……

「ル、ルキル……? えっと、一体どうした? お前、メルに対してはもっとグイグイ来るタイプじゃなかったか?」

「か、覚悟と心構え! 以前は覚悟と心構え、そして綿密なイメトレをしていたから、あの時は良い感じに纏める事ができたのです! と言いますかケルヴィン、行き成りメルフィーナ様を呼びつけるなんて、不敬にもほどがありますよ!? ぶっ殺しますよ!? 理解さ(わから) せますよ!?」

「……あなた様、ルキルがああ言っている事ですし、私は帰っても良いのでは? この通り、まだ食事も終えていません。戻してください。今直ぐに、ハリー」

「待て、逃げようとするんじゃない。つか、殺す宣言をされている俺を残して行く気かよ。 質(たち) は悪いが、アレもお前の信者なんだ。女神なら俺と一緒に相手をしてくれ」

「あなた様の場合、そんな宣言をされても喜んで受け入れるじゃないですか。それに私、元女神なので。もう女神じゃないので」

駄目だ、こいつこの空気に当てられて、マジで帰りたがってる。いや、俺にだって選ぶ権利はあると思うんだよ。いつもなら喜ぶところだけど、何かルキルは少し毛色が違うと言うか、何と言うか……

「まったく、この場には変態しかいないのか? 実に嘆かわしい、困ったものだ」

「お前にだけは言われたくないわ!」

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「―――それで、何のお話でしたっけ? 私はそこまで暇ではないのです。手短に説明してください」

休憩時間を挟み、落ち着きを取り戻したルキルが、不服そうにそんな事を言って来た。どうやら覚悟と心構えとやらが完了したようである。

「一度、お互いの利害関係を整理しておこうと思ってさ。確認だけど、ルキルの目的はメル、いや、メルフィーナを転生神に返り咲かせる事。その為には天使の長達の義体を使っている十権能に、その事を了承させる必要がある。つまりはそいつらに強さを示す必要がある訳だ」

「大事なところが抜けていますよ。その上で、十権能全員にメルフィーナ様の素晴らしさを 理解さ(わから) せるのです。布教には地盤固めが必須ですからね。過去に罪を犯した十権能を改心させたとなれば、メルフィーナ様に対する信仰はそれはもう凄まじい事に―――」

「―――わ、分かった、分かったから、その辺にしておいてくれ。で、一方のケルヴィムの目的は十権能のリーダー、エルドを倒して十権能を正しき姿に戻す事。そして、邪神の教えの通り世界を自由に…… ええと、諸々の神を倒して、他の全世界を抑制のないものへと変える事、だったな?」

「うむ。まあ、その為にはケルヴィンを倒すという工程も挟むのだがな。今の第一目標はエルドを排除する事だ。その点においての反対意見はあるまい」

「お待ちなさい。これ以上、十権能の頭数を減らすのは賛成しかねます。長の過半数の賛成でメルフィーナ様を転生神に復権させる事はできますが、後々の信者の数が減ってしまいます。あなた方には真のリンネ教幹部として一心不乱に信仰活動をですね」

「ですから、私は神に戻る気なんてないんですって。めでたくも寿退社をした私は、これから子育てに励むという大任が待っているのですから! モグパク!」

「フッ、お前の神とやらは、ああ言っているようだが? どうやら最初からその選択肢はなかったようだな!」

「いいえ、何ら問題ありません。なぜならば、十権能と共にメルフィーナ様にも 理解(わか) って頂く予定でしたからね! 真の信者というものは、心を痛めながらも間違いを指摘するものなのです!」

「………」

俺は思った。手っ取り早くバトって決めたいなぁ、と。