軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第175話 死神の背比べ

「勝者は敗者を好きにして良い、そんな話だったよな? つまり、命令する権利は一つじゃなくて、幾つでも良いって訳だ」

戦いをこれ以上継続させるのは難しい。そう悟った俺は、早速話を纏める事にした。仕方なく、仕方なく嫌々纏める事にした……

「そういう話で戦いを始めた筈だ。神に二言はない」

「そうは言っても、あくまで口約束だったからな。だから、ほれ」

「む?」

「少しだけジッとしていてくれ。これ、ちょっと時間が掛かるんだ」

「むう……」

ケルヴィムの心臓部分、後は念の為に頭部を指差して、ある魔法を施す。相手が暫くジッとしていてくれないと、この魔法は成功しないからな。不便なものである。

「……よし、もう良いぞ」

「漸くか。で、一体何をしていたんだ?」

「ああ、ちょっと 鷲掴む風凪(ハートカーム) を――― って言っても分からないか。まあ、言ってしまえば時限爆弾のようなものを仕掛けさせてもらった。心臓と頭にな!」

「おい、気軽く何をやっている?」

尤もなツッコミである。

「お前と同じで、戦闘が終わって俺も冷静になって来たんだよ。『致死』なんて危険な能力を持っている奴を、口約束をしただけで野放しになんてできないだろ? いくら何でもさ。元リドワンみたいに、俺の『召喚術』でマジもんの配下にするって手もあったけど、生憎ともうその枠がないんだ。で、この手を選んだって訳」

「なるほど、流石にそこまで愚かではなかったか」

「当然だ。ああ、ちなみにそれ、俺以外に権能を使おうとしたり危害を加えようとすると、脳と心臓を切り刻むようになってるから、そこんとこよろしく」

「全くよろしくないな…… いや、待て。お前は良いのか?」

「は? 何言ってんだ、当たり前だろ? こちとら、常時仲間からも寝首を掻かれて首を持って行かれそうになったり、就寝中に関節を決められて逝きそうになってんだ。酒の席なんて命懸けだぞ? 事実、俺は何度も死にかけているからな。今更そこに一人くらい反逆者が紛れ込んだって、大した差はないよ」

「……一体どんな仲間なんだ?」

「首フェチで寝相と酒癖が悪いだけだけど?」

段々とケルヴィムが怪訝な表情になって来ている。いや、俺は事実を述べただけなんだけどな。これくらい、ごく普通の事だろ? ……普通、だよな?

「分かった、理解した。だからこその常在戦場、という訳か。納得がいった」

「……? よく分からんが、納得してくれたようで良かったよ。じゃ、ちょっと 聖杭(ステーク) にでも寄って、権能を回復させようか。実のところさ、ハードの権能も後数分しか持たなかったんだよ。もう少し粘れば良かったな?」

「フン、だからその手には乗らんと言っている。しかし、 聖杭(ステーク) のその機能まで把握しているのか…… さてはルキルからの情報だな?」

十権能は色々と制限が課せられているが、奴らが乗る 聖杭(ステーク) にはそれら制限を部分的に緩和させる機能があった。それが 白翼の地(イスラヘブン) 外での活動制限時間、権能を行使できる制限時間の補充だ。恐らくではあるが、 聖杭(ステーク) 内に一定時間留まる事で、 白翼の地(イスラヘブン) に居るのと同じ効果が発揮されているんだろう。尤も、 白翼の地(イスラヘブン) で活動できる人数制限までは誤魔化す事ができないようだが。

「そんなところだ。つか、それを知らなかったら『 不壊(ふえ) 』の権能だって補充できないだろ?」

「ククッ、確かにそうであったな。俺が乗って来た 聖杭(ステーク) を早速掌握するか? 安心しろ、帰還命令は出していない」

真上を見上げると、そこにはケルヴィムの言う通り、奴が乗って来た 聖杭(ステーク) がまだあった。セラやセルジュの時と違って、 聖杭(ステーク) が自動隠密モードで逃げる事はないようだ。噂によれば、マジで知らない間に消えているらしいからな。ちょっと安心。

「いや、まずはあっちの 聖杭(ステーク) で、ルキルと再会しておこうか。お互い、色々と言いたい事探りたい事があるんじゃないか? 俺はその様子を茶でもしばきながら眺めているよ。ああ、もちろんルキルに対して変な事をしようとしても―――」

「―――時限爆弾が作動する、であろう? 全く、良い趣味をしているものだ」

「形式上、勝者は俺だからな。じゃ、そろそろ行くとしようか。っと、でもその前に、あー……」

ケルヴィムを一瞥し、今になって大事な事に気付いてしまう。懐のクロト分身体に何か適当なものを出してもらい、それを奴に突き付けてやる。

「まずはこれでも着てくれ、うん……」

「………」

如何に相手がルキルと言えども、一応彼女も女性である。そんな彼女の前に絶賛キャストオフ中のケルヴィムを出す訳にもいかず、俺は適当な衣服と下着を差し出すのであった。

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ケルヴィムの着替えが終わった後、俺達はルキルが待つ 聖杭(ステーク) の内部へと向かった。しかし、ルキルと協力関係を結んでから何度かお邪魔させてもらったこの場所であるが、魔法的と言うよりも随分と科学的、いや、未来的な印象を受けるんだよな。喩えるとすれば、ジルドラが建造した神の方舟に似ていると言うか。力の系統が同じなんだろうか? けど、これを創造した奴、セルジュが倒しちゃったんだよな。それは確かにもったいないなぁと、ケルヴィムに同情してしまったり。

「ちなみになんだが、 聖杭(ステーク) って全部でいくつあるんだ?」

「六機だ。ルキルが奪ったものが一機、そして俺が持ち込んだものが一機ここにあるから、 白翼の地(イスラヘブン) には残りの四機がある事になる」

「こ、こんなデカブツがまだそんなにあるのかよ? そんなすげぇ開発者を前線に出すとか、マジで意味が分からないな……」

「だから俺が行動を起こした」

こんな感じの軽い雑談を交えつつ、俺達は漸くルキルの居る 聖杭(ステーク) の中枢部へと到達する。方舟よりは大分マシだけど、それでもやっぱ広いわ、ここ。

「来ましたか、変態共」

「あー、やっぱり 聖杭(ステーク) に搭載された画面で見ちゃったかって、おい待て。何で 共(・) なんだ? 俺は関係ないだろ?」

開口一番、ルキルが身に覚えのない罵声を浴びせてきやがった。全裸をかましたケルヴィムは弁解の余地がないとはいえ、なぜ俺にまでその矛先が向かうのだろうか。当然、俺は断固拒否する。だって身に覚えがないんだもの。

「そうだ、俺は変態などではない。戦う事しか頭にないこのケルヴィンが変態なのは、まあ理解してやるところではあるが」

「おい、逆だろ!? 俺が指摘してやらなかったら、お前あのままここに来ていただろ!?」

「私からすれば、どちらも十二分に変態ですよ。 ……さて、馬鹿な話はここまでにしておきましょう。ケルヴィム・リピタ、戦闘前後でのケルヴィンとの会話、全て聞かせて頂きました。貴方、本当にエルドを倒すおつもりですか?」

「でなければケルヴィンにおかしな魔法を使われてまで、ここまで来る筈がないだろう? それに俺がこの場に居る事自体が、お前達にとって大きな利となっている。 ……まさか気が付いていないのか?」

「「?」」

俺とルキルが揃って首を傾げる。

「ならば説明してやろう、心して聞くが良い! バルドッグのように死んでいるならまだしも、囚われるなどして生きている者がいる限り、義体の人数制限はそのまま維持される。俺にグロリア、そしてケルヴィンの配下となってしまったリドワン。これで義体が 白翼の地(イスラヘブン) 外で活動できる、限界人数の三人を満たしている。そろそろ理解できたか? そう、もうこれ以上、十権能が 白翼の地(イスラヘブン) を出る事はできないのだ」