軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第168話 念話越しの逢瀬

「あっ、そう言えば 聖杭(ステーク) は!?」

突然、セラが大声を上げた。次いでキョロキョロと辺りを、そして上空を見回す。

「私が来た時にはもうなかったわよ。というか、 聖杭(ステーク) が例の隠密状態だったとしたら、そもそも発見自体ができないのだけれどね。守護者――― セルジュが十権能の一人を倒した時にも、 聖杭(ステーク) はいつの間にか消えていたらしいし、今回もそうなんじゃない?」

「それってつまり、逃げちゃったって事?」

「そう」

「あー、うっかりしてたぁー!」

グロリアの魔法で完治したセラはすっかり元気になったようで、地響きで出るレベルで地団駄を踏んでいた。戦いが終わってこの国に野性の動物達が戻って来そうなところだったのだが、これにより再び彼らは国外を目指す事になる。

「セラ姉様、どうどう。こうなる事は事務員のカチュアを学園に戻した時点で決まっていたのよ」

「うう、それなら帰すんじゃなかったわ…… 縛ってでも今回の戦いを特等席で見学させるべきだった、そういう事ね」

「うん、我が姉ながら鬼畜な事を言うわね。たとえ戦闘の流れ弾がカチュアに当たらなかったとしても、刺激が強過ぎてショック死してるわよ、その場合」

「あー、そうなったら 聖杭(ステーク) の発見どころじゃないか。どっちにしろ、両方をとっ捕まえるのは難しかったのね…… 残念!」

「それよりも、貴重な情報源を生きたまま捕まえられた事を喜びましょう。どれだけ根性があったって、今の状態なら絶対に口を割るだろうしね。ああ、運ぶのは私に任せて。流石に戦闘後のセラ姉様に、運搬までさせる訳にはいかないもの」

「え、良いの? そう言えば今更だけど、こんなところにまで来て、学園の許可は大丈夫なの?」

「そんなもの、学院長のアートが何とかするでしょ。寮長のボイルも篭絡済みだし、セラ姉様が心配するような事ではないわ。安心して」

そう言って、ベルが拘束状態のグロリアを担ぎ始める。

「そうなの? んー…… じゃ、ベルの言葉に甘えさせてもらおうかしら! 運搬先は、そうね~。ルミエストは流石に不味いでしょうし、拠点を置いているパブの金雀に運ぶってのも、何か違うような気がするのよね…… ううーん、どうしたものかしら!」

「……セラ姉様、念話ができるのでしょう? ケルヴィンとでも相談してみたら?」

「あら、ケルヴィンに頼っちゃって良いの? ケルヴィン嫌いのベルの口から、そんな言葉が出るとは意外ね」

「べ、別に嫌ってる訳じゃないわよ。いえ、確かに姉様を取られた感があって、その点はいつまでも恨むと思うけど、根っ子のところはパパと同じ気持ちのつもりよ。これでも姉様の夫になる人間だって、一応は認めているんだからね? ……あんまり意地悪しないでよ」

ほんの少し頬を染めながら、視線を逸らすベル。

「フフッ、ごめんなさい。ベルが素直にそう言ってくれて、私も嬉しいわ! そうだ、式の時にベルも一言挨拶してよ! 今みたいに、実はケルヴィンを認めてるって風で!」

「それは嫌。セラ姉様の祝福はしたいけど、あいつの目の前でそれを言うのだけは嫌」

真顔で即答のベル。本当に嫌なのか、頬の色もすっかり元に戻ってしまっていた。

「もう、変なところが父上に似ちゃったんだから。でもまあ、ケルヴィンに相談するって案は、それがベストかしらね。ベル、念話するからちょっと待ってて」

「はいはい、ごゆっくり」

セラ、ケルヴィンに念話を送信。十権能と会敵し、これを迎撃&捕縛した事を喜々として伝えるのであった。その声色は大変に明るく、褒めてオーラが全開である。

『―――という事になってね、私ったら大活躍だった訳! あの雄姿をケルヴィンにも見せてあげたかったわ! それはもう大活躍よ! ねえ、ケルヴィン聞いてる!?』

『ああ、ちゃんと聞いてるよ。十権能の一人を倒した上に生け捕りにするなんて、流石はセラだな。俺も見習わないとって、そう思っていたところだ。マジで凄いぞ!』

『フフン、そうでしょうそうでしょう! もっと褒めなさい!』

このようなやり取りを数回ほど繰り返し、セラが大方満足したところで、話は漸く本題へと入って行く。

『ふう、満足した!』

『そ、そうか。それは良かったよ…… それで、捕らえた十権能をどうするかって話だったよな? 本当なら俺らの屋敷の地下で、厳重に監禁しておきたいところだけど、それだと西大陸で活動している間、何かと不便になるよな』

『ふんふん、それじゃあどうするの?』

『ギルド本部のシン総長を頼ってくれ。俺の方で話をつけて、十権能を入れても大丈夫な場所を確保してもらってる』

『あら、やけに話が早いわね?』

『まあ、こっちでも色々あってな。それに、セラなら倒した上で捕まえてくれるだろうって、そう信じていたからさ』

『ッ! ま、まあ当然ね! 私ってば、ゴルディアーナに匹敵する良い女だもの! ケルヴィンの期待にだって、もちろん応えちゃうわ! 今も、これからもね!』

この時、セラの満足ゲージは限界突破していた。同時に隣で様子を窺っていたベルは、セラのテンションの昂りっぷりに嫉妬した。次に会ったら取り敢えずケルヴィンを蹴ろうと、そう決意した。

『ハハッ、調子が良いな。でも、そこはゴルディアーナを越えたとは言わないんだな?』

『へ? ま、まあ、そこは…… うん。だって実際そうだし、匹敵するって意味でも本当にそこまでなれているのか、正直怪しいかもしれないっていうか、ごにょごにょ…… ううん、何でもない! 兎に角、今の私はゴルディアーナと同じくらいなの! 分かった!?』

『お、おう? よく分からないが、よく分かったよ……? っと!』

逢瀬の最中、念話越しにシーンにそぐわないケルヴィンの声が聞こえて来た。向こうで何かあったのだろうかと、セラが首を傾げる。

『ケルヴィン、そっちで何かやってるの? もしかして、立て込んでいたかしら?』

『え、俺か? あー、まあ立て込んでいると言えば、立て込み中かな。ちょっと今―――』

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『―――十権能が出たって場所に、俺自身を召喚したところでさ』

各所に設置した魔杭を使い、ルキルが 聖杭(ステーク) を待機させている中央海域にまでやって来た俺。方法としては、かつてトリスタンがやってみせてくれた『召喚術』の反射用法を、ジェラールの 大戦艦黒鏡盾(ドレッドノートリグレス) で再現した感じだ。何度か近場で練習したけど、転送されるこの感覚にはまだ慣れないな。念話でも変な声が出て、セラに怪しまれてしまった。失敗失敗。

但し、俺自身の召喚に関しては成功だ。当初の目論見通り、中央海域へ俺自身を召喚する事ができた。この辺りは快晴で、海も実に穏やかなものだ。正に釣り日和、ってやつかな? セラがこの光景を目にしたら、速攻で釣りをしようと誘って来る事だろう。今はベルと一緒のようだし、ひょっとしたらベルも乗り気で来るかもしれない。 ……いや、流石にそれはないか?

『は、十権能? 他の十権能の出現情報はないって、さっきそう言ってなかった!?』

『いや、それがタイミングの悪い事に、あの後に情報が来ちゃってさ。で、今から俺が全力で事に当たるところ』

『ちょっと、それって呑気に念話している場合じゃないでしょ! もう切るからね! ケルヴィン、そっちに集中して! それでそれで、私とお揃いの勝利を飾るのよ! 良いわね!?』

『もちろん、端っからそのつもりだよ。じゃ、また後で』

『ええ、後でね! ファイト!』

プツリと念話が切れ、賑やかだった俺の耳に涼やかな潮風の音が入って来る。それと同時に、眼前に一人の男が舞い降りて来た。ルキルのとは別の 聖杭(ステーク) が、既に真上へ来ていたようだ。

現れた男は黒髪かつ目つきが悪く、ローブらしき装備までもが黒を基調としていた。少し親近感と言うか、近しい何かを感じる。外見の見た目とか、装備の見た目とか、色合いとか。