軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第169話 大戦の発端

対峙した十権能と視線を交わし、互いにジロジロと見ること数秒。言葉を変えれば眼を飛ばし合っていた訳だが、まあ相手の正体を探り合っていたとも言える訳で。取り敢えず、このままでは埒が明かない。一秒も早く手合わせ願いたい俺は、早速自己紹介をする事にした。丁寧に、紳士的なバトルジャンキーとして。

「さて、どうしてこの場所にやって来たのか、色々と聞き出したい事が山盛りだ。けど、その前に挨拶しないとな」

「ふん、不思議なものだな。先ほどまで何の気配もなかった筈だが、一瞬でお前がこの場所に現れたような気がしたぞ」

「「………」」

「俺はケルヴィン、ケルヴィン・セルシウスだ。お前、十権能だな? 勝負しろ」

「俺の名はケルヴィム・リピタ、お前がケルヴィンだな? 丁度良い、お前にひとつ提案がある」

「「………」」

発言がもろに二度も被ってしまい、何とも言えない空気が辺りに漂い始める。いや、近しい何かを感じるからって、そこまでタイミングを合わせる必要はないんだよ。ついでに名前も似ているんだよ。ほら、お互いにまた発言しにくい状況になっちゃったし。

「あ、あー…… 俺の名前を知ってるって事は、それなりに十権能にも知られてるって訳かな?」

今度は発言を被せる訳にはいかないと、若干慎重になりながら言葉を口にする。よし、今度は被らなかった。 ……何でこんな事に気を遣っているんんだ、俺?

「コホン! ……リドワンを従わせ、バルドッグを倒したのはお前の一派だと聞いている。噂にならない方がおかしいだろう? しかし、出会い頭に戦闘を望むとは…… 噂通りの戦闘狂のようだな」

心なしか、相手も気を遣っているような感じがする。いや、気のせいだろう、多分気のせい。

「戦闘狂なのは認めるけど、リドワンは兎も角、バルドッグとやらを倒したのは違う奴なんだよなぁ…… まあ、協力関係を結んでいるから、同じようなものか。それで十権能様の頭に俺の事が入ってくれるのなら、これ以上光栄な事はないな。で、お前達にとって邪魔者な、そんな俺に提案って? 戦いのお誘いなら大歓迎だぞ?」

「お前、さっきからそればかり――― いや、まあ良いだろう。俺からの提案も、あながちお前の発想と相違している訳ではない。 ……ケルヴィンよ、俺と共に十権能の長、エルドを倒さないか?」

「は?」

想像の斜め上の提案に、思わず素っ頓狂な声を返してしまう俺。何だか最近、変な声が出まくっている気がする。

しかしだ、この提案を予想していなかったのはマジのマジだ。ルキルの話を思い出すに、エルドってのは十権能のトップ、邪神の右腕とされた堕天使だった筈。それこそ、このケルヴィムって奴の上司みたいなもんだろう。そんなエルドを共に倒す? 一体どうして? 仲間割れでもしたのか?

「フッ、お前が考えている事は分かる。同じ十権能の仲間である筈なのに、なぜそのような事を。と、そんなところだろう?」

「……そんなところだな。正直、お前が言っている言葉の真意が分からん。よく初対面の俺にそんな提案ができるな?」

「こちらも選り好みしている余裕がないんだ。俺と共闘できる程度に実力が保証される者となれば、この世界には数えるほどしか存在しない。いや、逆に言えば義体の身とはいえ、十権能である我々との戦闘が成立する時点で、この世界はかなりおかしな事になっているのだが……」

「そうか? 世界は広いんだ、神と戦える人間がいたって、別におかしくはないだろ?」

前の世界なら兎も角として、この世界はクロメルに打ち勝った俺以外にも、人から転生神となったゴルディアーナに、歴代最強超自由勇者のセルジュ、その他大勢の怪物達が沢山いるんだ。そんな怪物達が十権能と渡り合ったって、何らおかしな事はないだろう。

「……そうか? フッ、そう思うのならケルヴィン、お前は随分と我々側の考え方をしているらしい。なかなかに見る目のある奴だな。どうだ? エルド討伐の成功の暁には、お前を新たなる十権能として迎え入れてやっても良いぞ?」

「何でそうなるんだよ…… 勧誘するならするで、もう少し魅力ある提案をしてくれ。邪神の復活なんてものを目的とする十権能の仲間入りとか、何の誘い文句にもなってないぞ」

「ふむ? なるほど、まずはこの世界の真実を理解しなければ、我々に完全に賛同するには至らないと、そう言いたいのか。ならば仕方あるまい。 ……教えてやろう、この世界の真実を!」

俺は思った。あ、これって話が長くなるパターンだな、と。十権能と戦いたいが為に、遥々ここまでやって来たというのに、なぜか世界の真実講座が始まる流れになっている。違うよ、俺はそんなの望んじゃいないんだよ。別に高尚な意見交換がしたい訳じゃないんだよ。

「まずは、そうだな。なぜ我々の神アダムスが、今現在この世を統べている偽神と敵対したのか、そこから懇切丁寧に説明してやるとしよう。腰を据えて理解すべき事柄だ、気合いを入れて聞き入るが良い!」

やっぱり長くなりそうだ…… 恐らくこいつは、見かけによらず面倒見が良いんだと思う。ただ、絶望的に相手の心を察してくれないというか、空気が読めないタイプであるらしい。説明して満足してくれたら、こいつは俺と戦ってくれるだろうか? くれる情報はもちろん覚えておくが、その後の展開が何だか不安だ。今のうちに戦いを始める理由付け、少し考えておこうかな。

……今更だけど十権能と義体って、 白翼の地(イスラヘブン) 以外の場所だと活動限界があるんじゃなかったっけ? こんなにゆっくり講義していて、果たして大丈夫なんだろうか?

「あの大戦は、そう、今から遠く、貴様ら人間の感覚では測れぬほど遠い昔に―――」

―――これはいかん。時間短縮の為、奴の話を要約しよう。

昔々、大昔、方向性の違いからか、神々が勢力を二分しての争いを始めた。片や、今現在世界を管理している主神の陣営。片や、封印されてしまった邪神アダムス及び十権能の陣営。セラや義父さん、ビクトールの先祖に当たる悪魔の始祖も、邪神側に立って争っていた訳だ。

で、その争いが始まった原因というのが、神々が管理運営する世界の方針だった。

主神側の方針は、管理する生命の強さを一定以下に保つ、つまりは個人に異常な力を与えず、勇者や魔王といった顕著な力を持つ者をなくすというものだった。多少の身体能力の差はあっても、世界に生きる生命体は皆平均的な能力を持つ者達で占められるべき、という話だ。これは運営する世界が徒に破壊されるのを防ぐ為の予防であり、管理する生命が神々の脅威とならないようにする為のものでもあった。まあ、言ってしまえば地球的な世界なのかな?

対する邪神側の方針は、そもそも神々が世界の管理などせず、強き者があるがままに生き、弱き者はその理に従って淘汰される、というものだ。進化の可能性を持つ者達に枷を掛ける必要などなく、その結果神々に牙を剥き、破るまでに至ったのであれば、それもまた自然の摂理――― と、割り切った考えなのである。自由に学び育ったそれら生命を御してこその神、そうかつての邪神は公言し、同志を募ったんだそうだ。

やがて主神と邪神の陣営は激突し、神話時代の大戦と呼ばれる神々の戦いが勃発。結果として勝利したのは主神側で、主導者たる邪神は未来永劫封印される事となり、その配下であった十権能も肉体が消滅させられ、意識のない魂となって異なる次元の牢獄へと繋がれた。それよりも下の者達は、種族を悪魔として統一させられ、閉ざされた大地である 奈落の地(アビスランド) に幽閉させられ――― という流れであるらしい。

ここまではまあ理解できる話だ。しかし、疑問もある。俺達のいるこの世界、勇者や魔王もいるし、別に強さの制限なんてされていないよな? それに、どっちかと言うと邪神が望んだ世界であるような…… ああ、なるほど。だからケルヴィムもおかしく思っているのか。