軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第51話 ガウン推薦枠

入学式を終えた新入生達を次に待つのは、各生徒に割り振られた寮への移住作業だ。馬車に積み込んだ荷物を部屋へ移動させ、今後共に生活を送る事となる同級生との初顔合わせを行う事となっている。部屋を整えるにも時間が必要、そして新たな環境を迎えるに当たっての疲労を考慮し、本日の表立った予定はこれにて終了。後は寮の仲間達との交流を深めるも良し、改めて校内の施設を見学するのも良し、何をするかは各々の判断に任される。とはいえ、最初に行う事は殆どの者が同じだろう。寮の部屋の確認だ。

リオンが配属されたのはボルカーン寮、面接試験の試験官を担当したアーチェ・デザイアが寮長を務める場所である。リオンを含めた新入生25名は、炎の寮章が掲げられた寮の入り口に集まっていた。ここに集まった生徒達でリオンの知る顔は、今のところドロシーとシャルルのみだ。そして、その前では太陽の光で眼鏡を輝かせているアーチェが、今日も元気に点呼を取っていた。

「ひー、ふー、みー、よー…… はいはーい、ちゅーもーく! 皆さん、入学おめでとうございます! 今日という記念すべき日を、一人も欠ける事なく無事に迎えられて、私はとっても感動しています! 健康って大事だよね!」

眼鏡をクイッ! ……台詞と仕草がいまいち一致していない。

「もう皆さんは知ってると思いますが、寮の部屋は二人一組ないしは三人一組の部屋割りになっています。所謂共同生活ってやつです! 折角の機会ですので、相部屋となる相棒と仲良くなってくださいね!」

「アーチェ教官、その部屋割りは生徒の自主性に任されるのでしょうか? だとすれば、僕はもちろん女子と―――」

「―――当然ながら部屋割りは男女別、更には学園側でもう決めてしまっているので、今から発表しますねー」

「そうきましたか。ですが、まだ僕のロマンスは始まったばかり。急ぐ必要はどこにもない。と、そういう事ですね!?」

「う~ん、このアーチェ先生を困らせるとは、ある意味凄い新入生が入ってきたものですね。こいつはたまげました!」

「フッ、そんなに褒めないでください」

「「「………」」」

シャルル、早くもボルカーン寮の女子生徒達に白い目で見られ始める。

「さ、気を取り直して発表しちゃいますよ。まずはラミさんと―――」

「―――わっ、早速ラミちゃん!? はいはーい!」

最初に呼ばれたラミという生徒が、アーチェと同じくらいに元気、というか騒がしい声と共に両手を上げて返事をしている。派手な金髪、着崩した制服といい、大変に目立つ。ついでに着崩した分、露出している肌分も多い為、男子生徒の注目もそこそこに集まっていて、当然のようにそこにはシャルルも交じっている。そんな彼女に対し、リオンは少し思うところがあるようだった。

(うう~ん? あのラミって女の子、どこかで見覚えがあるような…… それも試験の時とかじゃなくて、もっと前に)

首を右に左に捻りながら、考えに考えるリオン。しかしリオンが答えを出すよりも早くに、部屋割りの順番が回って来てしまう。

「リオンさんはドロシーさんと一緒のお部屋です。仲良く楽しく過ごしてくださいなー」

「あ、はーい!」

「よ、良かった~。知らない人じゃなくて、リオンさんと一緒だ…… リオンさん、これからよろしくお願いしますね」

リオンはドロシーと相部屋になるようだ。リオンと一緒になれた事がよほど嬉しかったのか、ドロシーはすっかり晴れやかな笑顔になっている。改めて握手をしようと、右手を前に差し出すドロシー。これに応えようと、リオンも右手を差し出そうとする…… が。

「こちらこそ。僕もシ―ちゃんと一緒で良かっ―――」

「―――リーーーちゃーーーん! お久ーーー!」

「あわあっ!?」

「リ、リオンさん!?」

握手が交わされようとする寸前、真横からリオンにタックルをするように抱き着く者が現れた。閃光の如く凄まじい速さの不意打ちであった為か、リオンは回避が間に合わない。それでも何とか咄嗟に体勢を変えて、タックルを抱き止める形で受け止める。

―――ズザザァ―――!

二人は数メートルほど吹き飛んだだろうか? リオンが尻餅をつき、強襲した女生徒はそんなリオンの胸に顔を突っ込むようにして、馬乗りの体勢になっていた。ニコニコ顔のアーチェ以外の者達は、皆一様にポカンとするしかない。通り過ぎた地面には 電流(・・) が迸り、未だにバチバチと音を立てていた。

「やっば、ちょい勢い強過ぎた? ねーねー、リーちゃん平気ー?」

リオンの胸からバッと顔を上げ、そう言葉を発したのは先ほどの少女ラミ。一応は心配しているようだが、彼女の両手の指はなぜかリオンのほっぺに向かっていた。そして、すっごいむにむにしている。

「イタタタ…… も、もう! 急に抱き着いてきたら駄目だよ、雷ちゃん!」

「わ、感動ー! この姿でも私の事が分かったんだ。やっぱ私とリーちゃんの心はいつも繋がってた的な? 全然気付く様子なかったから、すっごい心配してたんだよー?」

「気付いたのは今さっきだよ。あと、好き勝手にむにむにしちゃ駄目だってば」

「だって至福だし? ほらー、むにむに♪」

「雷ちゃーん!?」

リオンに雷ちゃんと呼ばれたラミはそれで機嫌を良くしたのか、破顔しながらほっぺむにむにを継続。どうも指を放す気はないらしい。

「あと、私の今の名前、ラミ・リューオだから。その辺もよろしくー」

「よろしくするなら、お願いだから僕の言葉も理解してー!」

振り払おうにもラミの体はビクともせず、また体勢も悪い為にリオンはむにむに地獄から抜け出す事ができない。

「んんー? リオンさんとラミさんは前からのお知り合いだったのですか? そういえばお二人とも、東大陸の出身でしたっけ?」

周囲がポカンとする中、ただ一人楽しそうに二人の様子を眺めていたアーチェであったが、流石にこのままにしておく訳にはいかないと感じたのか、そんな助け舟となる質問を投げ掛けた。

「え? ええーっと…… そうです、友達です。でも知っている姿と大分違っていたので、僕の方が少し混乱しちゃって……」

「友達っていうか、親友? みたいな? 久しぶりの再会だったんで、思わずテンション上がっちゃってー。ごめんなさーい」

「ははー、そんな偶然も起こるものなんですね。でも、再会を喜ぶのは引っ越し準備を終えてから、ですよー? さ、行った行ったー。特徴のない空き部屋を、自分色に染めてこーい!」

「ちょ、ちょっと―――」

アーチェによって首根っこを掴まれ、寮の中へポイッと放り投げられるラミ。生徒も生徒であれば、教師も教師かもしれない。

「リオンさんもドロシーさんと一緒に、まずは指定された部屋に行ってくださいね。保管機能付きのマジックアイテムがあれば作業は楽かもですけど、その場合はドロシーさんの引っ越しを手伝ってあげてください。ドロシーさんは馬車から荷物を運ぶ事になると思いますので」

「わ、分かりました……」

こうしてリオンはむにむに地獄から解放され、ドロシーと共に自室へと向かう事になるのであった。

「リオンさん、大丈夫ですか?」

「ちょっとヒリヒリするくらいかな? 大分ほっぺを弄られちゃったけど、何とか形状は記憶できてるみたい」

「だ、大事に至らなくて良かったですね。でも、あのラミさんという方とは、本当にお知り合いなんですか? リオンさん、かなり驚いているようでしたけど?」

「うん、友達だよ。さっきも言ったけど、本当に格好が違っててさ」

「へえ、そんなになんですか? うーん、昔はもっと静かなタイプで雰囲気が変わった、とかかなぁ?」

ドロシーはラミの昔の姿に思いを馳せているようだ。但しリオンの言う姿の変化と、ドロシーが想像している姿の変化は、全くの別物である。

(ラミ・リューオ、ライ・リューオウ、雷・竜王、雷竜王――― 雷ちゃん、その名前はちょっと安直過ぎたんじゃ……)