軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第586話 笑顔で死合う

「生を謳歌じゃって。王のあの台詞、どう思うよリオン?」

「ケルにいらしくって格好良いと思うよ! アレックスもそう思うよね?」

「ガァウ!(ノーコメント!)」

止めて! わざわざ俺の台詞を拾わなくて良いから! 場の雰囲気で何気なく出ちゃっただけだから!

そう心の中で叫ぶも、決して表情は崩さない俺。だってさ、ああ言われて赤面でもしてみろ。その時点で恥ずかしいと認めているようなものだ。ここは恥ずかしさを気取られず、この雰囲気のままで押し通すのがベスト。だからほら、早く進行して。誰かさっさと説明を始めて……!

「とうっ!」

俺の魂の叫びが通じたのか、セラがクロトお気に入りの噴水へと跳躍し、その頂点部分に着地する。お立ち台代わり、といったところだろうか? 顔には決め顔を貼り付けたままだが、内心凄いホッとした俺がここにいる。

「さっきケルヴィンがコレットに秘術を掛けてもらったように、私達全員にも致命傷を回避する術が施されているわ。術が発動したら、クロメル達のいるバルコニーに飛ぶよう設定しているのがね!」

セラの指差す先で、笑顔のクロメルが手を振っている。なるほど、あそこが天国か。

「セラ、お前も粋な洒落を言うようになったんだな。言い得て妙だぜ。マジで妙だぜホントにもう」

「まったくじゃて。シュトラも一緒だしワシ昇天しそう。しかし安易にリタイアはできない悲しみの騎士道」

「は? 2人とも何言ってんの?」

おっといけない、口が勝手に思った事を。

「すまん、たった今正気に戻った」

「もー、しっかりしなさいよね。エフィルも何か言ってやりなさい!」

「クロメル様がいらっしゃってからというもの、ご主人様の心はいつにも増して浮き立っているご様子。これはもしや、更に子が増えれば倍々でご主人様も幸せになるのでは……!?」

「エ、エフィル、貴女までトリップしてない?」

思案に暮れるエフィルを、噴水から飛び降りたセラが懸命に呼び戻そうとしている。しかしこれからを考えると、エフィルの言うところは心配要素になってくるかもしれない。クロメル1人でジェラールの如きこんな調子なんだ。今後、エフィルやセラ達とも子供ができたとしたら、俺は一体どうなるのやら。

「セラねえ、エフィルねえの事は僕に任せて、説明の続き続き」

「ウォウォン(また脱線してるよ)」

「それとも、アンジェさんが代わりにやろっか? 元ギルド職員として、説明は得意だし」

「あ、そうだった! 大丈夫、私がやるから! ケルヴィン、説明再開よ!」

説明の再開、そして再度噴水によじ登るセラ。どうも説明役とお立ち台は譲れないらしい。

「俺がこの台詞を言うの、今日で何回目になるのか分からないんだが…… で、そのルールは?」

「まあ、ルールなんてあってないようなものなんだけどね。どんな武器を持ち込もうが、どんな能力を使おうが全て自由! 禁じ手なしの真剣勝負で、私達と死合ってもらうわ! 舞台はコレットの 聖堂神域(タバーナクル) でぐるっと囲った庭園一帯! ケルヴィンが致命傷を負ってバルコニーに移動する事なく、私達全員を倒してバルコニーに送る事ができればクリアよ! 全チェックポイントで間違いなく最難関だけど、ケルヴィンを持て成すならこれくらいはしないとねっ!」

「一度屋敷のバルコニーに送られた人の復帰はなしだから、その辺は安心してね。と、隙あらば補足するアンジェさんでした~」

「ああっ、それも私が言おうと思ってたのにっ!」

若干の不満をアンジェに対して漏らしつつも、これで話が終わったのか噴水より降りるセラ。一方の俺はというと、嬉しさから目頭が熱くなっていた。最近は本当に涙脆い俺。

「なるほど。何から何まで、俺好みに調整してくれた訳だ。やばいな、マジで嬉し泣きしそう…… でさ、もちろん全員本気で俺を殺しに来てくれるんだよな?」

「「「「もちろん!」」」」

「ウォーン!(もちろーん!)」

皆の声に共鳴するように、クロトも大きく膨れ上がって喜びを表現してくれる。同時に意思疎通での感情がもろに俺へと来て、色々と整理するのが大変だ。戦闘狂冥利に尽きる、これ以上当て嵌まる言葉はないだろう。

「 魔人紅闘諍(ブラッドスクリミッジ) 、アーンド 無邪気たる血戦妃(クリムゾンアストレイア) !」

「蒼炎解放、最初から最大火力で叩きます」

「人狼一体、三刀流――― 影狼(かげろう) モード!」

「ガゥガゥ、ウォン!( 稲妻超電導(ライトニングヴァスト) 付き!)」

「ふっふー、アンジェさんにはまだ 風神脚(ソニックアクセラレート) の効果が残っていて、そこにリオンちゃんの 稲妻超電導(ライトニングヴァスト) も加わった! これが本当の最高速だよ!」

「孫パワー注入完了! いつになく絶好調なワシ!」

最後の魔王鎧はさて置いて、ハナッから全力全開でのもてなしだ。クロトなんて巨大化のし過ぎで、コレットの障壁に頭をぶつけてしまっている。

「ケルヴィン。合図をされる前に、さっさとクロメルに力を使わせなさい。そのままだと100%負けるって、貴方も分かっているでしょ?」

「……やっぱそうなるかな? 俺としては、ここまで来たら自力でクリアしたい気持ちがあんだけど。ほら、この後にも最後のチェックポイントがある事だし」

「それで負けちゃ世話ないでしょうが。使える手は何でも使って良いルールなのよ? それに裏を返せば外にいるクロメルがただ見ているだけなんだし、躊躇する必要はどこにもないわ」

「私はご主人様にバトルラリーを完走して頂きたいです。ですが、だからといって手を抜くような冒涜は絶対に致しません。 ……どうか私に、ご主人様の最高に良いところを見せてもらえませんか?」

「………」

エフィルらが口にしているのは、クロメルの固有スキル『怪物親』の事だ。この能力はクロメルが 家族(・・) と認識している者、特に 両親(・・) にあたる者が彼女の視界内に存在している時、その者のポテンシャルを引き上げるというものである。これまでにもこの能力について色々と検証してみたが、俺を父、メルを母として認識しているのは間違いない。家族については、屋敷に住む皆が対象になっているのはもちろん、俺の生み出したゴーレム達までそれに含まれていたのだから驚きだ。クロメルの家族愛は広く、そして底が深い。俺は泣いた。

この固有スキルは大変強力であり、両親の俺とメルの引き上げの上がり幅はとんでもない事になっている。家族がとんでもなく絶好調なコンディションになるのに対し、両親は過去最大に力を振るっていた時の状態と化す。一見この2つに違いはないようにも思えるが、少し考えてみてほしい。俺とメルが、過去に一番力を持っていた時は一体いつなのかを。そう、メルが女神としての力を発揮し、俺がその力を行使して黒女神クロメルと戦っていた、あの決戦の時だ。今であれば絶対にあり得ぬ状況だが、クロメルの『怪物親』はそれを可能とする。それが如何にとんでもない事なのか、ここに集った皆は十分理解しているだろう。ちなみにこの能力には捕捉機能があるらしく、こちらは能力を発動せずとも俺から目を離さないようにできたりもする。

但しこの能力、まったく欠点がないという訳でもない。今のところ発動できるのは最長でも3分、それも一日に一度きり! 視界に入った両親・家族をもれなく対象にとるから、恐らくはここに集った仲間達も強化されてしまうのだ。あ、いや、最後については別にデメリットではなく、むしろメリットか。うっかりうっかり。

「クロメル、期待に応えて合図に合わせて使ってくれ! パパ、超頑張っちゃうから!」