作品タイトル不明
第545話 相棒
この世界に目覚め、記憶をなくした俺が最初に仲間にしたのがクロトだ。あの頃のクロトはブルースライムという種族で、今のステータスからは想像もできないだろうが、パーズ周辺に出現する一般的なモンスターとそう変わりない存在だったっけ。おぼつかない召喚術で何とか仲間して、それから暫く一緒に活動して、いつしかクロトは進化した。
スライムの進化先は多岐に渡り、どんな種族になるのかはメルフィーナも分からないと言っていた。ブルースライムより現在の種族であるスライム・グラトニアとなり、固有スキルを得たクロトは更に頼れる仲間に成長。今となってもクロトがどうしてこの種族になったのかは、分からないままだ。
最も早くに仲間になり、最も早くに進化したクロト。ただそれ以降は特に進化をする事はなく、ジェラールやアレックスが何度か進化を重ねる間も、基本的にレベル上げと暴食によるステータスアップが強化の主となっていた。ある時に俺は、クロトの進化はここで打ち止めなのではないか? なんて考えをした事があった。スライム・グラトニアへはあれほど早期に進化したというのに、幾らレベルを上げて強敵を食べさせても、一向にこれ以上の進化をする気配がなかったからだ。だけど、そんな考えは直ぐに捨てる事にした。
神であるメルフィーナでさえ分からない事を、俺が悩んだって仕方のない事だ。人なんてレベル100を超さないと進化は起こらなかったし、ダハクら竜ズに至っては竜王に勝利する事が条件という、かなり特殊なものだった。何が進化のトリガーになるのか、前例がない限りは予想もあったもんじゃない。が、決して道が断たれた訳ではないんだ。俺達がすべき事は、今できる事を全うする事。それが進化に通じていれば儲けもん、その程度の認識に留める事にしたのだ。
但し、進化の可能性は意外なところに落ちているもので、俺達は意図せずその可能性と遭遇する事となる。それはクロトの保管内に溜め込んでいる、アイテム武具その他諸々の点検作業をしている時の事だった。広大かつ外部からの目が届かない屋敷の地下修練場にて、俺はクロトが順々に取り出したものを確認しては戻し、確認しては戻しと作業を繰り返していたのだが―――
「ん? これって、確かガウンで手に入れた……」
コロリと床に転がったのは、黄金色に輝く拳大の魔力宝石。ガウンの神獣の岩窟で、神獣ディアマンテの仮面から剥ぎ取ったものだ。その時は何かに活用しようと目論んではいたが、結局使わず保管に入れっ放しの状態になっていたんだ。
「久し振りに見たけど、やっぱ見事なもんだよなー。クロトもこれ以上に質の良い魔力宝石は、流石に見た事ないだろ?」
頻りに頷くような仕草を見せるクロト。それと同時にもっと近くで見たいのか、スライムの体から手を伸ばして来た。
「はいよ、じっくり見てくれ。しっかし、こいつを活用して何かの装備に役立てられないものかな? ジェラールの盾に使うには脆い気がするし、エフィルはもう形見の宝石を使ってるし。うーん…… うん? クロト?」
ふと、魔力宝石を受け取ったクロトを見る。なぜだか、ちょっとした違和感を感じたんだ。そのスライム状の体をプルプルと震わせ、俺の声掛けに反応を示してくれない。意思疎通を通じて、クロトの中で感情が渦巻いているのが伝わってくる。ああ、俺はこの現象を知っているし、見た事があった。
「まさか、進化の最中……?」
思い起こされるは、クロトが初めて進化した時の光景だった。あの時は魔力体の状態ではあったが、メルフィーナが傍にいてくれて、冷静になるよう落ち着かせてくれたっけ。冷静に、冷静に。 ……ハラハラ。
クロトの周りをウロウロと見守りながら歩き回り、8周目に突入しようとしていたその時、変化は起こった。クロトの全身が、一気に輝き出したのだ。余りに眩過ぎて、思わず手で光を遮ってしまいそうになる。が、それだけは何とか堪えた。今のクロトの姿を、この目に焼き付けておきたかったんだ。長らく世話になった、スライム・グラトニアとしてのクロトを。
「……クロト?」
光が徐々に収まり出し、恐らくは進化を終えたであろうクロトが、新たなるシルエットを覗かせる。
「クロト、お前―――」
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生まれ変わったクロトはその身を漆黒ではなく、青色へと染め直していた。まるで始まりの種族、ブルースライムに戻ったが如くの変化だ。ブルースライムと見た目で異なる点といえば、スライムの核となるコア部分だろうか。与えた魔力宝石がそのままコアとして変化したように、クロトの心臓部は淡く光り輝く美しいものへと変貌していたのだ。
こうして見ると、容姿の変化についてインパクトは少ないかもしれない。が、何よりもの変化はやはり中身。その能力は以前とは比較にならず、こうしてクロメルの表情に驚きの色を与えている。
「―――何ですか、それは?」
「何かとはつれない奴だな。お前もよく知ってるだろ? クロトだよ」
クロメルが放った攻撃に次ぐ攻撃。それらは全て、俺の懐から飛び出たクロトが防ぎ切っていた。突き出たクロトのスライム状の体がクロメルの拳と交わり、俺へと攻撃を届かせる前に威力を殺す。今更ながら、打撃無効とは強力なスキルだ。俺も覚えられるものなら覚えたかったが、会得可能なスキル欄に載ってなかったんだよなぁ。他の仲間達も会得できなかったし、スライム特有の能力なんだろう。実に惜しい。
「なるほど、打撃の無効化ですか。ですが、少しばかり迂闊ですね。私の 致命傷の体現(デッドエンド) は、耐性であろうと劣化させるのですよ? いくら進化してステータスを上げたところで、全ての努力が無に帰します」
「そうか? 帰すどころかやる気満々だぞ?」
今もクロメルの拳を受け止めているクロトであるが、その力が衰える様子は一向にない。それどころか、意思疎通を通じて「やってやるで!」と、ボルテージを上げている。ついでに『吸収』も発動させている。
「んん……?」
これにはクロメルも不審に思ったのか、摑まえられた拳を振り払って距離を置いた。そして、自分の手足に視線を落とす。なぜ劣化の力が通じないのが、全く理解できていない様子だ。安心してほしい。クロメルの劣化の力は正常に働いているし、解除もされていない。ただ、クロトには通じないだけの話だ。
「……クロトの力ですか?」
「さあ、どうだろうな? さっき1つネタ晴らしをしたばっかりだし、これ以上ヒントや答えを教えてやるつもりはないよ」
「なるほど、愚問でしたね。これは失礼しました」
頭上より、閉じ込めていた聖槍2本が舞い降りる。上空に逃がしていた牢が突破されたか。クロメルの本領発揮は恐らくはここから。だけどな、俺だって本業は召喚士だ。こっからは、頼りになる相棒と2人掛りで戦わせてもらう。
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クロト 0歳 性別なし ディユ・マーレ
レベル:198
称号 :常闇
HP :8496/8496(+100)
MP :9044/9044(+100)
筋力 :7304(+100)
耐久 :6702(+100)
敏捷 :6318(+100)
魔力 :5839(+100)
幸運 :5330(+100)
スキル:暴食(固有スキル)
絶対不変(固有スキル)
装甲(S級)
自然治癒(S級)
金属化(S級)
吸収(S級)
柔軟(S級)
分裂(S級)
解体(S級)
保管(S級)
大食い(S級)
消化(S級)
打撃無効
全属性耐性
補助効果:召喚術/魔力供給(S級)
隠蔽(S級)
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