軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第341話 スペシャリスト

―――ドクトリア王国・仮拠点

大布で包まれた長方形の形をした、巨大な何か。倒された状態で運ばれて来たので、人によっては馬鹿でかいまな板が布で覆われているようにも見えるかもしれない。それも1つだけではなく、運搬物は2つもあった。街中でこんなものを運ばれては目立つので、取り敢えず敷地内に入ってもらう。大急ぎで目隠しとしての壁を 絶崖黒城壁(アダマンランパート) で形成。休憩している暇がない。

「ええと、これはどういう……?」

「先ほども申しましたが、献上品の転移門2対になります。いやあ、爺を説得するのに時間を要しまして。お待たせして申し訳ありません」

「いや、俺が聞きたいのはそういう事じゃなくてだな……」

「遠慮なさらないでください。私からの祝儀だと思って頂ければ良いのです。グスタフ様が何と仰るかは計り切れませんが、私は兎にも角にも喜びを分かち合いたい! セラ様の新たな門出を祝って、などと言っては洒落のように思われるかもしれませんがね。アッハッハ!」

おいおい、そんなポンと贈り物にして良いものなのか、転移門? 運んで来た配下の悪魔達はいまいち状況を読めてない感じだぞ…… たぶんだけど、ガリアのいう爺が一番ポカンとしていると思う。セラの存在を知らなければ、異様な行動でしかないもんな。 ……まさかと思うが、ごり押しで持ってきちゃったんだろうか? 行動力有り余ってますね、王様。

「そのように遠慮せずとも大丈夫ですよ。我が国には既に転移門が1対ある事ですし。それにこれらは偶然に発掘したものでして、一度も使用していない新品…… かどうかは分かりませんが、兎も角余計な心配は不要。セラ様の伴侶は謙虚な方ですね」

「いやー、これでも自分の欲には素直な方だと思ってたんだけどな……」

そうか、なるほど。俺、謙虚だったのか。

「あなた様、ご安心を。骨の髄まで私と同類ですよ」

それは褒めているのか、貶しているのか? って、ええい、また話が明後日の方向に向かっているぞ。

「ガリア王、質問なのだけれど。その転移門って、持ち運びできるの?」

おっと、シュトラが良い質問をしてくれた。今まで俺たちが見てきた転移門は、どれも予め設置されていたものだった。厳重に警備された城の中や地下とかな。ツバキ様が前に説明してくれた話では、確か失われた技術を使っているとか何とか。まあこれだけでかいと、携帯用だとしても実用性は低そうだけど。

「普通、転移門は発見した場所から動かす事ができないの。なぜなら転移門は古代の英知を集結させたブラックボックスの塊で、無理に動かしてしまうと機能に支障をきたしてしまうから。地上の今の技術では、とてもではないけれど内部機構の解読はされていないわ。その転移門を運搬させて来たって事は、特定の場所に設置していないのよね? 位置軸を固定に台座の設定、魔力の展開方式にその他諸々エトセトラ――― ガリア王が満足気に転移門を引っ張って来たって事は詰まり、悪魔の技術はそれを可能にしている事を指すのよね? 是非ともご教授してほしいのだけれど、お願いしても?」

「……へ?」

……断っておくが、別にシュトラはガリアを煽っている訳ではない。単に知識欲がそうさせているだけなのだ。メルフィーナがご馳走を見るようなキラキラした目をしているし。で、期待の矛先である問われる側のガリアは、というと―――

「ヒソヒソ……(お、おい、転移門とは地面に置けば作動するものではないのか? じ、軸の固定? 云々などと手順を踏まなければならぬものなのか? 城にある転移門は魔力流せば勝手に動くぞ? 領内の場所でしか使用した事はないが……)」

「ヒソヒソ……(恐れながら王、我々転移門を使用した事がありませぬ)」

「ヒソヒソ……(ぬうっ、爺を連れてくるべきであったか!?)」

色々と残念な感じになっている。転移門の使用には莫大な魔力を必要とするんだが、下手に 上級悪魔(アークデーモン) なだけにその辺の条件はクリアしてしまっているようだ。電化製品を説明書を読まずに何となく使い続けてきたと例えるべきか。まだかまだかと期待を膨らませるシュトラ相手に、たじたじになってしまっている。

「ケルヴィン、折角だから貰いましょうよ? 転移門なんて簡単に発掘できるものじゃないし、あったら便利よ?」

「まあ、そりゃあそうだろうけど…… 新たに設置する為の転移門の設定なんて、俺はやった事ないぞ」

管轄外もいいとこである。そうだ! メルフィーナなら――― ああ、駄目そうだ。目を逸らされてしまった。女神なら知ってそうなもんだけどな。義体の『神の束縛』に引っ掛かるのか? となると、本格的に貰ってもどうしようもない無用の長物になってしまうぞ、これ。一番転移門に詳しそうなシュトラにさえ、解読はできないと豪語されてしまったしなぁ……

「……応援、呼ぶか」

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ドクトリア城にある転移門をガリアからこっそりと借り(ついでに転移門の使用許可印も貰った)、俺はとある場所へと向かった。地獄からの門開通の申請で大丈夫かと少し心配だったが、使用の許可は意外とすんなり通った。で、大して時間も掛からずに 奈落の地(アビスランド) へと戻る。ある人物を連れてな。

「えー、転移門のスペシャリストとして先生をお連れしました」

「ケルヴィン様にご招待頂きまして、この度参上致しましたコレット・デラミリウスです。ドクトリア王、お初に目にかかります」

「ああ、これはどうも。ご丁寧に……」

はい、という訳でお呼びした先生とはコレットだ。清い聖女モードの彼女は見ていて違和感しか覚えないが、俺の中で無駄に高性能な変態との異名を持たせているだけに、巫女の秘術は転移門にも精通しているのだ。以前、トライセンにあった転移門を強制的に起動させたのもコレットだったしな。転移門の設置も或いは……! なんて推測したんだ。しかし、 奈落の地(アビスランド) からでも普通に使えるもんなんだな、転移門。恐らく使用者に条件はあるんだろうが、俺たちに限ってはこれでわざわざ火山を上り下りしなくて済む。

「ケルヴィン様から伺っております。 奈落の地(アビスランド) は夢の国、一度はおいでよ楽しいよ! ……と。なるほど、納得致しました。確かにここは夢の国、いえ! 楽園です!」

「……地上はどれだけ修羅の国なんですか?」

ほら、メルフィーナを横目にコレットのテンションが徐々に上がってきたせいか、早速ガリアが地上を誤解しちゃってる。お前にとってはメルがいればどこも楽園だろうに。いや、それを狙った地獄への誘い文句じゃなかったんだけどな。まあいいけど。

「ああ、そうでした。アンジェ様にダハク様、昨今のご活躍から冒険者ギルドで二つ名が正式に認定されましたよ」

おお、遂にアンジェとダハクにも二つ名が付いたか。実力から考えてみれば遅いくらいだが、アンジェは今まで裏稼業でダハクは人型になってからの活躍だったからな。

「わ、本当に? ダハクのは実は知ってたりするけど、私のは初耳だな。最近決まったのかな?」

「その通りです。あら、ダハク様は留守なのですね」

「ああ、男を磨きに旅に出たよ。代わりに聞こうか」

流石にここでダハクのをスルーしてしまうのは悲しいもんな。

「アンジェ様が『首狩猫』、ダハク様が『蔬菜帝』です。おめでとうございます!」

く、首狩り? いや、まあ…… 蔬菜は、ええと、野菜の事だったか? ダハクなら喜ぶかもしれない。

「わっ、ケルヴィン! 私の思惑通り二つ名に猫が入ってるよ! この猫耳フード付き 夜陰(グルーム) のお蔭だね! エフィルちゃん、ありがとう!」

「はい、私たちの作戦通りですね。とても可愛らしいです」

その黒フードの猫耳、そんな思惑があったの!? そしてそれでいいのっ!? ある意味正し過ぎる二つ名だけどさ……

「……か、可愛いんじゃないか? うん、可愛い」

「だよね、だよね?」

アンジェが良いなら良いんだろう。二つ名は兎も角、黒フードの猫耳は実際愛らしいものだし。

そして今更ながら、地獄にデラミスの巫女を連れて来てしまって良かったのかと考え始める。世代が異なるとはいえ、デラミスの巫女は魔王の仇敵と呼べる存在。魔王グスタフの元配下を会わせてしまって良いものだろうか? どうも名前は知らないようだけど。

「……あの、ちなみに貴女とケルヴィン様のご関係は?」

「愛人、いえ、妾です」

「グガッハァ!?」

「「「お、王が血を吐いたっ!?」」」

ああ、そうか。俺がヘイトを稼げばいいのか。