軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

322話 反撃開始なんだぞっと

みーちゃんは華麗にころりんとでんぐり返しをして、ぽよりんカーから飛び出した。

かっこよい登場の仕方だ。か弱いみーちゃんが勇気を出して突撃してきたのを見て、皆は感動を……んん?

いつものように空気を和ませてからの、戦闘に入ろうと思うみーちゃんだが、いつもと違う展開であると空気を察した。

だって、覚醒モードの神無公爵が黄金の魔導鎧を着込み、余裕の表情で空中から睥睨しているからだ。

おかしいな、なんか戦闘が終わった感がするよ? もしかして間に合わなかったかな?

「みー様、助けに来てくれたのですね!」

凍りついて霜が身体に降りている不思議な戦士たちと戦っていた闇夜が喜びの声をかけてくる。隣には王牙のおじさんもいて、戦闘を繰り広げていた。

「良かった、全員無事だったね」

ホッと一安心だ。軽装甲の胸を撫でおろして安堵する。もしも闇夜が死んでいたら、どんなことをしても『 蘇生(リザレクション) 』の魔法を使用していたよ。

良かった良かった。勘違いだったみたい。

「いえ、遅い登場でした。もはや皇帝は死に、趨勢は決したと言えるでしょう」

神無公爵が余裕の笑みで告げてきた。

「くっ、そのとおりです、鷹野伯爵! 逆賊の討伐に助力をお願いします!」

勘違いではなかったみたい。

口惜しそうに歯を噛み締めて、信長が叫んでくる。おぉ、そういや皇帝いないや。死んじゃったか。

ぽむと手を打ち、足りないメンバーを思い出す。真っ先に死ぬとは、皇帝としての自覚が足りないおっさんだったな。

まぁ、闇夜が生きていれば良いや。信長が次代皇帝として即位すれば良いでしょ。

まったく皇帝が死んだことを気にしないみーちゃんです。家族とお友だち以外の人間なんかそこらへんに生えている花と一緒だからね。潰されたら悲しいけど、みーちゃんはあまり花を愛でる性格じゃないんだよ、ごめんね。

でも対外的にまずいことはわかるから、悔しそうにおててを握りしめて、宙に浮くいかにもボスです的な神無公爵を見上げる。

「神無公爵! 信長様のご命令により、反逆者として貴方を討伐しま――」

「あぁぁぁ!」

ピシッと人差し指を突きつけて、凛々しいみーちゃんイベントが始まるかと思っていたら、隣にいるヘイムダルが悲鳴をあげた。

なんなの? とても煩いよ? みーちゃんが遂にモブから卒業するところだったんだよ?

胡乱げな表情で、ヘイムダルへと顔を向けると、ムンクの叫ぶ人になっていた。

「僕のギャッ」

最後まで口にできずに、降りてきたオーディーンのおじいちゃんに小突かれてたたらを踏む。

「邪魔だ、塀右衛門」

『余計なことを口走るな、阿呆』

殺気を混ぜた視線をオーディーンのおじいちゃんは向けて、思念にてヘイムダルを嗜める。

『だって、あの化物が着ている鎧は僕の神器、終末の日を知らせる『ギャラルホルン』だよ! 姿は変わっているけど、『千里眼』の僕の目には隠すことはできない。酷いっ、パクられていたんだ!』

『むぅ……たしかにあの音は『ギャラルホルン』であった。どうやら音波兵器として使用されているようだな』

『さっき聞こえたホテルを貫いた音波のこと? 『ギャラルホルン』だったの? 音波兵器?』

世界に『終末の日』を知らせる角笛じゃなかったわけ?

『うん、世界に響かせる程の音を出せるのが『ギャラルホルン』だ。実際は魔法で世界に響かせるわけなんだけど、暇だっ、いや、来る『終末の日』に備えて改造しておいたんだよ』

フッとクールに笑うニートダル。よほどやることがなかったのだろう。

『ロキと対峙した時に、ちょっとギャラルホルンを吹くから待ってくれとお願いして、油断したロキに極限まで威力を引き上げた音波をぶつけたんだ。奴は一撃でぼろぼろになったよ。アハハハ』

自慢げに笑うヘイムダルだが、結果を知っている身としては微妙だと思う。

だってヘイムダルとロキは相討ちだったからね。ぼろぼろになった相手と相討ちとは、どれぐらい力に差があったのかわかろうというものだ。

ろくなことをしない神である。そんな兵器を残さないでほしかった。

道理でピンチのたびにギャラルモニカを吹いていたはずだ。本来のギャラルホルンなら、敵に大ダメージを与えることができたのか。

これまでの光景でギャラルモニカを吹いていたニートダルを、音波兵器ギャラルホルンを吹くヘイムダルに変えてみる。

ピンチのたびに敵をギャラルホルンで駆逐して、颯爽と助けてくれるヘイムダル。うん、たしかにかっこよかったかもしれないね。

まぁ、いっか。こいつの性格から予想して、ギャラルホルンを持っていたら、もっと酷いルートとかになった予感もするし。

それよりも、闇夜を助けて、クリア条件の『神無公爵の撃破』をしなくてはならない。神の力を見せずにだ。

即ち、取るべきルートは一つ。

「ししょー、神無公爵を倒すのを手伝ってください!」

くるりと後ろを向いてお願いをする。みーちゃんのアストラル体はまだ完全回復していないからね。激しい運動は禁止なのだ。

「仕方あるまい」

オーディーンが腕を水平にあげると、隻眼を光らせる。

『こい、グングニル』

思念にて、自分の愛槍をオーディーンのおじいちゃんは喚びだす。空間を超えて、神槍『グングニル』が飛んできて、オーディーンのおじいちゃんの手に納まった。

「とりあえず、皇帝にはドルイドの件で恩義があるからな。神無公爵、おとなしく死ぬことだ」

みーちゃんもヤールングレイプルを装備したいが、あれはみーちゃん神専用鎧な予感がするから、がまんしておく。神気の剣もアウトだろう。

なので、ポヨポヨの槌を手にして、援護に徹することにしておく。モブに相応しい役柄とも言える。

「よろしい。悪逆の徒よ。この国を救うために、私が貴方達を倒します」

聖人にでもなるつもりなのか、手を広げて神秘さを見せようとしてくる。なんだか、正義の味方っぽい言い方をする神無公爵に不自然さを感じるが、ここは戦場、奴は敵だ。

「ししょー、最初は周囲の凍死体から倒すね。それまでは様子を見ていて!」

「倒してしまっても構わないのだろうと応えれば良いのか?」

極めて珍しいことに、オーディーンのおじいちゃんはニヤリと笑い冗談を口にすると、地を蹴って神無公爵へと向かう。

その間にみーちゃんは闇夜たちを助けることにする!

一度神となったみーちゃんには見えるのだ。

闇夜たちと戦っている凍死体はもちろんのこと、兵士たちも全てが死んでいる。淀んだ不味そうなヘドロ色の糸が死人を動かしているのだ。

しかも恐ろしいことに、ただのアンデッドではない。『死人』という新たなる種族になっている。ターンアンデッドが通じない『死人』という種族なのだ。

カァとカラスの鳴き声が聞こえてきて、その正体を暴く。

『死人:レベル48、自動蘇生、認識阻害、弱点万能』

もしかしたら、戦闘している兵士自身、その身体が死んでいると自身の『認識阻害』の力で気づいていないのかもしれない。

闇夜たちも倒れていた死人たちが傷が塞がって立ち上がっていることに気づいていない。その様子から援軍がやってきたと思わされているらしい。

そして、敵は死人であるゆえに、その力にリミッターがないために人間時以上の力を出せるのだろう。

闇夜たちも手応えが変だとは気づいているかもしれないが、心臓が鼓動を打っている死人がいるとは思わないだろう。

倒す方法は簡単だ。マナにより身体を維持しているので、魔法で維持が不可能なレベルまでマナにダメージを与えれば良い。ようは疑似アストラル体の存在なのだ。

下手に倒したと思って放置したら、蘇生するにちがいない。簡単だけど、万能属性を持たない闇夜たちでは倒せないから、助けなくっちゃね!

「皆、一気に倒すよ! みーちゃんの善の光を宿した魔法なら倒せるはず!」

『勇気の刃』

『勇者』の付与魔法を皆に使う。白金のオーラがそれぞれの持つ武器に宿り、神秘の輝きが皆を照らす。

万能属性付与の魔法だ。『死人』に致命的な魔法である。ただし、この魔法は次の攻撃のみにしか効果を発揮しない。『勇者』の神殺しの技は必殺であれという運営の嫌なこだわりのせいだろう。

「オーケーだよ! セイちゃん、練習していたあれを使おう!」

「ここは私たちの出番〜?」

みーちゃんに続いて車から飛び出たホクちゃんとナンちゃんがセイちゃんの後ろにつく。

「………睡眠時間を毎日16時間から12時間に減らして練習したわざー」

セイちゃんが車に揺られて気持ち良かったのか、ほとんど瞑りそうな目で、両手を掲げる。

「三位一体!」

ホクちゃんが右手を水平に伸ばし、左手をセイちゃんの肩に乗せる。

「皆のぉ、マナをひとつにぃ」

ナンちゃんが左手を天に掲げて、右手をセイちゃんの肩に乗せる。

「………えいっ」

最後の決め台詞をセイちゃんが口にしようとして、眠いのか諦めた。

三人のマナが体内から吹き出すと、一つになりセイちゃんの手に持つ短剣へと集まっていく。

バチバチとセイちゃんが放電で光り輝き、莫大なエネルギーが短剣に宿り、全てを焼却するプラズマソードへと変わった。

「……はぁ」

気合いの言葉と共に、セイちゃんがプラズマソードを振りかぶる。

『究極極限極大雷神剣』

早口言葉のような武技を発動させる。プラズマソードの刀身は天井に届くかというぐらいに伸びて、敵の集団へと振り下ろされた。

超高熱のプラズマは、漂うキラキラと輝く霧を霧散させて、死人たちを切り裂く。

身体が一瞬で薪のように燃えて、死人たちは抵抗すら許されず、灰となってしまうのであった。

「や、やったぁ」

「練習してきた甲斐があったねえ、お腹空いたよぉ」

ホクちゃんとナンちゃんが身体をふらつかせて膝をつく。どうやらマナを全て使い切る魔法だったみたい。

「……私の短剣も崩れた」

セイちゃんが手に持つ短剣が砂と化すのを見て、悲しそうに呟く。プラズマソードのエネルギーに耐えきれなかったのだろう。

『魂覚醒』

『女神の加護』

『勇者の刃』

なので、素早く皆のHPとマナを回復してあげる。『女神の加護』は人間のマナ程度なら満タンにできるスキルだからね。

「セイちゃん、これを使って!」

アイテムボックスの肥やしになっていた蟷螂の脇差しをセイちゃんへと投げ渡す。

セイちゃんは蟷螂の脇差しを受け取ると、感動して涙目でみーちゃんを見てくる。うんうん、気にしないで良いよ。お友だちでしょ。

「皆、反撃開始だよ! 私が支援するから、敵を倒しちゃおう!」

ここからはみーちゃんのターンだぞ、神無公爵。お前の思い通りにはさせないから覚悟するんだな!

………ちなみに後藤さんはぽよりんカーに乗り遅れたので、置いてきぼりとなっていた。