軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

323話 おじいちゃんの力なんだぞっと

闇夜たちもマナが回復し、体力も満タンになり疲労も消えたため、動きにキレが戻り反撃に移っていた。

「ハァッ!」

「ギハッ!」

ピュンと小さな風斬り音がすると、闇夜の前の兵士が首を刎ねられる。ぐらりと体を揺らして、兵士は苦悶の表情で消えていく。その存在は灰すら残らない。

「こ奴ら? 手応えが変わった?」

眉をピクリと動かして、闇夜と同様に立ちはだかる敵兵を倒した王牙がすぐに違和感に気づく。そりゃ、そうだろう。さっきまでは倒して放置していたら立ち上がって、また戦闘に加わったんだろうからなぁ。

「それに兵士たちの身体が消えていきます、お父様」

「うむ……強さといい、恐怖を覚えることなく戦えることといい、神無公爵め、非道なる人体実験をしていたようだな」

闇夜たちは実験体だと考えているが、まさかの新種族だとは思うまい。ヘルヘイムの遺産なのかなぁ。それにしては数が多い。神無公爵も新種族を作れるのか? 違うような感じがする。

霜が降りたへんてこな戦士たちが、仲間が倒されても気にせずに淡々と襲いかかってくる。なんだ、こいつら?

ムニンに命じると、カァと鳴き声がどこからか聞こえてくる。

『 霜巨人(フロストジャイアント) :レベル55、自動蘇生、氷無効、弱点万能』

マジかよ、そうじゃないかと思っていたが、コンパクト化に成功した『 霜巨人(フロストジャイアント) 』か。人間と同じ大きさで巨人とはいかに?

とはいえ、駆逐しなければなるまい。目を正義の炎でキラキラと輝かせて、フンスフンスと鼻を鳴らして興奮しちゃう。

新種族だよ! 新たなる敵が実装されたんだ。ドロップアイテムは何かなぁ。

「神無公爵は強化人間を作っていたようだけど、みーちゃんが許さない! 絶対にトドメは刺すから任せて!」

非道なる実験ということにして、正義の味方、か弱いものの英雄、ドロップアイテムに心躍らせるみーちゃんは拳を突き上げて叫ぶ。

「ぽよりーんっ!」

「ぽよーっ」

ぽよりんが宇宙砲台に変形して、敵をロックオンすると、砲口を光らせる。

『ダイヤモンドブレス』

無数の小さなダイヤモンドで形成されたブレスが放たれて、『 霜巨人(フロストジャイアント) 』たちを薙ぎ払う。

光のブレスは敵の集団の中を通り過ぎていく。

『 城壁盾(パレスシールド) 』

しかし、光の奔流に呑み込まれて消えていくかと思われた『 霜巨人(フロストジャイアント) 』たちは、盾を掲げてブレスを防ぐ。

魔法障壁も盾も『ダイヤモンドブレス』の前では紙切れのようなもので、簡単に打ち破るが、元巨人であるために耐久力があるのか『 霜巨人(フロストジャイアント) 』たちは耐えていた。

「もらった!」

しかしぼろぼろとなっており、毛皮は千切れ飛び胸当てはひしゃげている。王牙がその隙を逃さずに刀を振るう。

『 霜巨人(フロストジャイアント) 』は袈裟斬りに体を切り裂かれて床へと落ちていく。ゴムまりのように身体を跳ねさせて『 霜巨人(フロストジャイアント) 』は倒れると動きを止めた。

「よし、掃討する!」

「はいっ!」

倒れた『 霜巨人(フロストジャイアント) 』を見て、王牙が指示を出し闇夜や信長、仲間の兵士が戦意を取り戻し戦闘を再開する。

みーちゃんもその様子を見て、コクリと頷く。

「みーちゃんもお手伝いします! ぽよりんは援護の拡散ブレスを放って! 支援魔法を使うよ!」

『 防御向上(プロテクション) Ⅴ』

『 攻撃力向上(アタック) Ⅴ』

『 再生(リジェネレーション) 』

『 速度向上(スピード) Ⅴ』

『魔法の盾』

みーちゃんは援護に徹することにして、皆へと魔法をかけながら位置取りをするために走る。

「てい」

ついでに王牙が倒した『 霜巨人(フロストジャイアント) 』をポヨポヨの槌でトドメを刺しておきます。後方支援なら当然だよね!

だって、万能以外はトドメをさせないからね。仕方ないことなんだ。

『勇気の刃』? あれをかけるのはMPの無駄だと思うんだ。トドメはみーちゃんかぽよりんが刺せば良いと思います!

『攻撃3倍化』

玉藻へとかけると、狐っ娘は扇を振りかぶって狐耳をピコピコ動かし、ニヒヒと悪戯そうに笑う。

「やっちゃうよ〜!」

『妖炎蛇』

ひらひらと扇を振って、燃え盛る炎の蛇を生み出すと、玉藻は敵集団に攻撃をさせる。敵は炎に呑み込まれていき、黒焦げとなっていく。

そして、ポテポテとみーちゃんは走って、トドメを刺していく。お友だち同士のナイスコンビネーションと言えるだろう。

「ふっ、まだまだ霜の戦士たちは召喚できます」

黄金の戦士に変わっている神無公爵が、指を振るうと魔法陣が生み出されて、次々とおかわりが現れた。

クワッと目を見開き、みーちゃんはその魔法に驚いちゃう。召喚魔法だったのか!

「ししょー、もう少し頑張ってて! まだまだ召喚できるんだって!」

神無公爵と戦闘をしているオーディーンのおじいちゃんへと声をかける。援軍が来たら、それもぜんぶ倒さないといけない。それまで時間稼ぎをしてほしい。

ここで敵の戦力をできるだけ削っておくのだ。残党が残っていたら、大変だからね。他意はないよ。

おててをぶんぶん振って、興奮気味に悪の組織の力に驚いちゃうみーちゃん。

「断る。そのような面倒なことに付き合うつもりはない、阿呆が」

冷たい返しをしてくるおじいちゃんである。潤んだ瞳で見ても、悲しげな顔をしても許してくれない。うぬぬ、駄目かぁ。

『それにギャラルホルンを使用されたら、新たなる死者が生まれるかもしれぬぞ?』

『くっ……たしかにそのとおりだね』

たしかにオーディーンのおじいちゃんの言うとおりだ。闇夜たちが傷つかないようにしないといけないか。仕方ない、諦めるか。悪の組織の非道さに怒りで頭が真っ赤になってたよ。

「ぽよりん、あとはよろしく! みーちゃんはししょーのお手伝いをするよ」

支援魔法はだいたいかけ終わった。あとは任せても良いだろう。ヘイムダルが僕はと視線を向けてくるが、適当に敵を倒しててください。

とてちてと走って、オーディーンのおじいちゃんの後方に位置する。なぜかヘイムダルもみーちゃんの隣に来た。こいつ、ここで戦闘に加わった感を出すつもりだな。

空中ではオーディーンのおじいちゃんと神無公爵が対峙している。オーディーンのおじいちゃんは顎をクイッと動かすと、隻眼を冷たく光らせる。

「さて、神無公爵よ、趨勢は決したと言っていたな? たしかにそのとおりだ、儂らが来た時点で趨勢は決した」

「それはどうでしょう? たしかに霜の戦士は時間稼ぎにしかならぬようですが……それで充分! 私が貴方たちを倒せば良い!」

「そうか、それでも問題はないのだろうな。ではかかってこい」

グングニルで軽く肩を叩くと、オーディーンのおじいちゃんの纏う空気が変わる。ズシリと空気が重くなり、その存在だけで息が苦しくなるほどの威圧感が放たれた。

「久しぶりに槍を使うとしよう。かかって来るのだな」

ヒュンと槍を構えて、オーディーンは告げる。

「面白い。ならば見せてもらいましょう、貴方の力というものを!」

神無公爵も刀を構えると、不敵に笑う。周囲に浮く魔剣たちが神無公爵の動きに合わせて、展開し始める。

『 全能力向上(マイティアップ) 』

みーちゃんが支援の魔法をかけると、オーディーンの身体が淡く光る。

「さて、貴様の正体を見せてもらおう」

「やってみるが良い、ご老人」

なぜか突然穏やかな雰囲気へと変わり、神無公爵は刀を構えて空を蹴る。

踏み込んだ箇所が風の壁となり、爆発するような音を残す。

「はあっ!」

『疾風剣』

最速と呼ばれる疾風の太刀がオーディーンに迫る。その動きは文字通り風のような速さで視認は難しい。

だが、右からの薙ぎ払いをオーディーンは見切っており、クルリと槍を回転させると、刀を石突で簡単に弾く。

「まだまだ!」

『疾風乱舞』

弾き返されても、動揺することなく冷静に神無公爵は疾風の太刀の連撃を繰り出す。隙を生み出すために、様々な角度からの切り払いだ。

まるで暴風のような連撃を、オーディーンは僅かに腰を落として槍を回転させる。

『エイミング』

自らの体の周りを覆うかのようにくるくると回すと、チチッと火花が散って神無公爵の攻撃は全て弾かれていく。

「遅いな」

そして暴風の最中を縫うように、オーディーンは神無公爵の肩に槍を叩き込む。

「グウッ」

うめき声をあげ神無公爵は地上へと落下して、身体をめり込ませクレーターを作る。

ズシンと音がして砂煙が舞う中で、オーディーンも地上へと降り立つ。

「疾風剣を防ぐとは……魔法だけではないのですね、ご老人」

すぐに神無公爵は薄く笑いながら立ち上がる。肩当てが僅かに拉げているが、傷は浅いようだ。

「どうも貴様の口調は気になるな」

ニヤリと好奇心を露わにして、オーディーンは神無公爵を見る。その言葉に、神無公爵の笑みが消えた。

「………それはどのような意味でしょうか?」

「いや、気にすることはない。恐らくは気のせいだろうからな」

「そうですか。ならば戦闘を続けましょう!」

刀を構え直すと、神無公爵は黄金のオーラを一層生み出す。

「魔剣よ!」

『 騎士舞踏(ナイツダンス) 』

空に浮く魔剣からオーラが吹き出すと騎士たちへと変わる。ガシャリと魔剣を構えると、騎士たちは一斉に突撃してきた。

「玩具をたくさん持っているようだ」

一人一人が超一流の騎士であり、その身体はマナで形成されているために、恐怖を持たずに襲いかかってくる。

だが、オーディーンは焦ることもなく、グングニルを軽く握りしめると、魔法の力を巡らせる。

『螺旋瞬槍』

オーディーンの身体がぶれる。僅かに空間が歪むと迫る騎士たちの魔剣がカチンカチンと小さく音を立てた。

そして、オーディーンに襲いかかる寸前で騎士たちの動きがぴたりと停止する。

「むっ? なにが? 騎士たちよ攻撃せよ!」

眉根を顰めて、神無公爵が命令するが、騎士たちは動かない。

「壊れたのだ」

「なにっ?」

淡々とオーディーンが言う中で、騎士たちの身体がぐらりと揺れる。

「どうやらどこからか魔剣をかき集めてきたようだが……無駄だったな」

全ての魔剣にヒビが入っていき、騎士たちが倒れると同時に細かい破片となって砕け散った。キラキラと魔剣の破片が宙を舞う中で、オーディーンは槍を神無公爵へと突きつける。

「そ、その魔剣は……馬鹿なっ!」

「砕けるのはおかしい。なぜならばヘルヘイムに貰った魔剣だから、か?」

オーディーンが言った一言に、神無公爵は僅かに後退る。どうやら図星だったらしい。

「言ったであろう? 槍使いの力を見せてやると」

圧倒的なる力を持った戦争の神は嗤ってみせるのであった。