軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

300話 怒りの黒幕と戦うんだぞっと

「な、え? わ、私がコツコツ作ってきた世界『新ニブルヘイム』が……え?」

「隙ありだっ!」

『絶歩』

動揺するヘルヘイムへと、空間を飛び越えて攻撃をする。決して罪悪感から誤魔化そうというわけではありません。

「クッ!」

ヘルヘイムはレーヴァテインを盾にすると、美羽の拳を防ぐ。腰を屈めて地を這うように軌道を変え、大剣の下を潜り抜け回転蹴りを繰り出す。

だが、ヘルヘイムはスウッと軽やかに後ろに下がると手のひらを向けてくる。

『滅びの炎』

ヘルヘイムの手のひらから複数の火球が生み出されて、連弾が飛んできた。

「アチチッ」

ただの火球では、美羽には効かないのだよムーブをしようと、普通に受け止めたら吹き飛ばされた。炎が身体を燃やし、結構な熱さだ。

「貫通属性かよ。だから神との戦闘は嫌なんだよね」

ヤールングレイプルの性能により『火傷』付与はされないので、すぐに炎は消える。

万能以外吸収する『神』だが、そのレベル帯で戦う『神』属性の敵は使う武技や魔法に必ず『貫通属性』が付与されている。

ゲームではやりこみ用裏ダンジョンの敵はそんなのばかりだったよ。

『貫通属性』は『無効、反射、吸収』を貫くんだ。だから耐性持ちの方が使い勝手はいいんだよね。

なので、ヘルヘイムと美羽はノーガードでの殴り合いが決定した瞬間だった。

「まぁ、技と技、戦略の読みあいは楽しいから良いんだけどね!」

両手を翼のように広げて滑空する。後ろを火球が通り過ぎ、地面に直撃すると炎のドームが形成されて内部の物は全て灰へと変わる。

ただの火球に見えて、その威力は人間の使う火球とは次元が違う。

「もう少しエフェクトにこだわった方がいいよ!」

『フレースヴェルグの翼刃』

美羽は背中に半透明の翼を作り出す。神の力が翼に巡り、ハラハラと羽根が周囲に散っていく。

「敵を斬りさけ!」

空中をひらひらと舞う羽根はぴたりと止まり、風を纏い螺旋を描いてヘルヘイムへと飛んでいく。

風切り音は立てずに、空間を削りとって迫るフレースヴェルグの羽根。空中を鋭角に飛行し、軌道を読まれないように複雑な動きを見せてヘルヘイムに迫る。

「小手先の技ですね」

ヘルヘイムはレーヴァテインを構えて、落ち着いた様子で対抗する。

『豪炎閃』

レーヴァテインを横薙ぎに振るうと、キンと甲高い音がして、迫る羽根の中心に紅き閃光が走り、爆炎を巻き起こす。炎に撒かれて羽根は焼き落ち、灰へと変わる。

「どうやらフレースヴェルグの力を手に入れたようですが、鳥如きではスルトと化した私には敵いませんよ」

『滅却の焔剣』

余裕の態度でヘルヘイムは連続でレーヴァテインを振るう。その剣速は残像のみを残し、紅き光線が格子状に空間に刻まれて飛んできた。

「素手では無理そうだね。なら、こちらも剣で対抗だ!」

『神気の剣』

アイテムボックスから刀身は無く、白金の柄のみを取り出して、迫る紅き格子に立ち向かう。

『顕現せよ』

柄から白金の粒子が生まれて剣へと形成され、周囲の空間を震えさせる。

『神気帝龍剣』

美羽が剣を軽く振ると、鞭のように白金の刀身が撓る。刀身は龍が空を遊弋するかのように展開されて、紅き光線とぶつかり合う。

衝撃波が波動となって、周囲へと広がる。黒雲は散らされて、森林は吹き飛び地面は捲れ上がる。

轟音が発生し、世界が崩壊するかのように地形が変わっていく。

「とやー」

「その程度で!」

お互いが距離を詰めると、高速で切り合う。鋭き美羽の咆哮に、余裕のヘルヘイム。

「てやてやてや」

「剣技で鳥に負けはしませんよ」

直剣に戻した美羽が横薙ぎに神気の剣を振るい、レーヴァテインに受け止められると、下からの掬い上げる一撃。ヘルヘイムはしっかりと合わせてきて、弾かれてしまう。その反動を利用しての袈裟斬りからの突きを繰り出すが、身体を翻しヘルヘイムは躱してしまう。

「こいつ、スルトの剣技を使うぞ、レディ!」

耳元で怒鳴るヘイムダル。たしかに明らかに戦い慣れた様子だ。

「近接戦闘に慣れていなそうだと思ったけど、裏技を使っていたか」

何たるチートだ。こっちは地道にレベルを上げて、熟練度を増やしているのに、お手軽に力を手に入れるなんて怒っても良いよね。

ガガガとお互いの剣がぶつかりあい、金属音が奏でられる。お互いに一歩も引かない剣技を見せる。

「多彩なる私の力をお見せしましょう」

『逆巻け炎よ。剣と在れ』

レーヴァテインが纏う炎が、ヘルヘイムの言葉に呼応して、さらに吹き出す。

そして驚くことに、神気の剣が炎に弾かれてしまう。

「なぬ! 物質化したのか!」

「敵に触れる時だけ物質化するのですよ。私にとってはただの炎。ゆえにこの力を利用して、このようなこともできます!」

『 爆裂炎剣(エクスプロージョンソード) 』

レーヴァテインの纏う炎が爆発し、爆炎が美羽を呑みこもうとしてくる。

『フレースヴェルグの風』

すぐに対抗魔法で吹き飛ばそうとするが、フレースヴェルグの風は、硬い城壁にでも当たったかのように爆炎に弾かれる。

「くっ! なにこれ?」

爆炎は美羽の身体を包み込み、その高熱で燃やそうとしてきた。

炎が美羽の身体を燃やしながら、物理的圧力を与えてくる。身体を覆われて、その炎から逃げようと、周りを包む炎の牢獄へと手をつけようとしても、身体には硬い感触を与えてくるのに、手では触れない。

「不思議物体、これぞ魔法物質というやつだね」

「脱出!」

理不尽な炎により身体が炭化していく中で、美羽は面白物質だねとヘルヘイムへとクスリと笑ってみせる。

自身も焼けると焦ったヘイムダルは薄情にも肩から飛び降りて逃げていった。

「ヘイムダルは影響を受けない?」

美羽の身体を覆う炎の牢獄。触れないのに硬いという魔法の現象に、ヘイムダルはその影響を受けることなく脱出した。

ギミックのヒントというやつだ。名探偵みーちゃんなら、簡単に答えを出せる。

『フレースヴェルグ変身』

対抗策を思いつき、神の力を身体に巡らせて、魔法を発動させる。『フレースヴェルグ変身』は、オーディーンたちも使えるスキル、鳥さんへと変身するスキルだ。本来は移動時に使う魔法だが戦闘でもネタとして使えるし、専用技も使えたりするのだ。

すぐに美羽の身体が発光し、その姿を猛禽へと変身させていった。

「うぉぉぉ!」

凛々しき神の鷹へと変身した美羽は、翼を広げて炎の壁から飛び出す。

先程までは硬かった炎は気体へと戻り、美羽を止めることはない。

「存在自体を変えた? 器用な魔法を使う方ですね」

「ピピピ、ピピッ」

ユグドラシルの天頂に住むと言われる鳥の姿を模した巨人『フレースヴェルグ』。

黒曜石のような艷やかで鋭き嘴、汚れのない純白の翼を大きく広げ、ヘルヘイムの周囲を旋回する。

もふもふな毛玉のような羽毛に覆われた身体を持ち、つぶらな瞳がヘルヘイムを睨みつける。

どうだ、美羽という存在を対象としているその魔法は鷹へと変身した今では通じまい。と、美羽は語りたかったが、可愛らしい鳴き声しかその嘴からは流れなかった。

「ピピッ」

『フレースヴェルグストライク』

白き身体がかき消えて、光線へと変わりヘルヘイムへと向かう。

「近づけるとでも?」

『焔槍崩界』

クイッと手を返して、レーヴァテインを円を描くように回すヘルヘイム。円の中心から太陽のように高熱で輝く焔の槍が対空砲のように発射される。

美羽を撃墜せんと、空間を燃やし向かってくる。身体を僅かに傾けて美羽が槍を避けるが、焔の槍は一発だけではなく、対空砲のように連弾が放たれてきた。

だが、いかに焔の槍が速くとも、神たる鷹へと変身した美羽には追いつけない。

焔の槍が命中する寸前で、鋭角に曲がって回避する。続けて飛んでくる焔の槍も直前で真上に浮いてやり過ごす。

豪雨のように焔の槍が迫っても、美羽の動きには追いつけない。僅かな隙間を光条と化した美羽はすり抜けて、ヘルヘイムの胴体に突撃した。

「ぐっ、ひよこの分際で!」

手乗りインコのように小さいからと、なにやら差別的なことを言いつつも、ヘルヘイムは真下からのアッパーで美羽へと対抗する。

くるんと回転して、美羽はアッパーの横をすり抜けると、神の力を体内に巡らせる。

「ピピピピ」

『螺旋鷹翔』

再び光弾へと姿を変えて、美羽はヘルヘイムの身体に螺旋を描いて真上へと飛ぶ。

「グガガガ」

光条がヘルヘイムの身体を叩き、その身体を削っていく。血の代わりに炎を体内から吹き出して、ヘルヘイムは苦悶の表情となる。

「いただきだ!」

ヘルヘイムの頭上にて変身を解くと、美羽は神気の剣を振り上げて、ニカリと笑う。

『神気神龍剣』

振り下ろした神気の剣が白金の粒子を生み出して、龍へと姿を変え、大きく開いた光の牙を覗かせるアギトでヘルヘイムに襲いかかった。

「なんという力っ……!」

アギトが閉じて、ヘルヘイムは隕石のような速さで落下していく。

深き渓谷の中へと消えていき、轟音が響くとV字に形成されていた渓谷が円状に崩壊して土が火山の噴火のように吹き出す。

だが、土が吹き出す中で炎の柱も向かってきた。

『神炎の封印柱』

「むむっ?」

美羽を中心に六本の炎の柱が突き出してくると、魔法陣が形成される。炎の柱から火の粉が舞い散ると、鎖へと変じて、美羽の身体に絡みつく。

「ヤールングレイプルを着ているみーちゃんには、その手の魔法は通じないよ」

人の腕よりも太い炎の鎖が何重にも、美羽に巻き付くが、少し身体をよじるだけで、サラサラと砂のように崩れていく。

『神鎧ヤールングレイプル』は欠損を含むあらゆる状態異常を防ぐのだ。

「一ターン無駄にしたな、チャンス」

大きく口を開けて、深呼吸をする。スゥ〜と吸うと空間が歪み紫電を発して美羽にエネルギーが集まっていく。

『神気集法』

周囲のエネルギーを吸い込むと、炭化していた身体を癒やす。みるみるうちに、髪は艷やかさを取り戻し、ぷにぷにお肌に戻っていった。

『神気集法』は、自身のHPを全快にしてあらゆる状態異常を癒やし、MPもほんのちょっぴり回復する便利な神技である。

一瞬、美羽の周囲は昏き深淵となったが、すぐに元に戻ったので、たいしたことはないだろう。技を使う時のエフェクトってやつだと思います。

『不死たる身体』

渓谷から神の力を感じる。美羽と同じようにヘルヘイムが回復系統の魔法を使ったのだ。

『爆炎よ、この剣に在れ』

先程と同じ魔法が渓谷から噴火するように焔となって、美羽へと迫る。

先程と同じように炎に封じてダメージを与えようと言うのだろうが甘い。

「その技は見せてもらったよ!」

神気の剣を蛇腹モードに変えると、腕を振るう。白金の刀身が空を舞い、フラフープのように輪っかを作る。

『神意』

『神気龍閃波』

美羽は神の力を刀身へと巡らせ、神技を発動させる。輪っかの中心に波紋が生まれると、空をも圧する巨大な光の柱が地上へと放たれた。

迫る爆炎にぶつかると、一瞬拮抗するがすぐに光の柱が押し勝って、爆炎を霧散させて地上へと聳え立つのであった。

強烈な閃光と、全てを塵へと返す威力により世界が震える。

「うーん、まだ倒せないかな」

「な、何ということだ………ここまで力をつけているとは……」

光の柱が消えたあとに、すり鉢状にどこまでも深い穴からヘルヘイムがよろけながら飛んできた。

回復したのだろうが、さらなる攻撃で鎧が欠けて、さっきまでの神々しさは見る影もなくボロボロであった。

このまま押しきれるかなと、神の力を発動させようとして、目の前にウィンドウが開いた。

『やはり帰っていたのか、お嬢。戦闘をしているな? 世界が軋みをあげておるぞ。このままではこの島は無と化すだろう』

険しい顔のおじいちゃんが、珍しく危機感を煽ってくる。

せ、世界が……。日本列島が壊れちゃう?

周りを見ると、なんか地形がちょっぴり変わっていた。なるほど世界が?

『くっ、ヘルヘイムが現れて戦闘中なんだよ。あの女神の攻撃のせいだね! なんとか防いでみるよ!』

苦しげな表情で肩を押さえて、よろけちゃう。ヘルヘイムは強敵だ。世界を壊そうなんて許さない。

この鷹野美羽が単体攻撃で倒してみせる!