軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

301話 意外な切り札なんだぞっと

恐るべき死の女神『ヘルヘイム』。その力により、日本列島は砕けそうになっているとか、ならないとか。

『無って、どういうこと?』

『世界を構成する力がごっそりと失われたことを感じたのだ。このままでは、列島は深淵に沈む』

『……お、おのれ、ヘルヘイム! そんな技を使うなんて許せない!』

うにゅにゅと拳を強く握りしめて、ヘルヘイムを睨みつける。全然関係ないけどみーちゃんの『神気集法』はもう使わないようにしようかな。全然関係ないけど。

『ヘルヘイムは倒しておくから、おじいちゃんはそっちをよろしく! みーちゃんの家族を守ってね』

『承知した。次元門が崩壊したのもお嬢のせいだな? 一つの世界を破壊したであろう?』

『ヘルヘイムの力により、通信が不安定に………』

ヘルヘイムの力の余波だけで通信状態が悪くなり、オーディーンが映るボードが消えてしまう。

なんてことだ。ヘルヘイムはこんなにも強いのか。しばらく通信は不安定ということで、システムさんよろしくね。

「ヘルヘイム、お前はここでみーちゃんが倒すっ!」

「それはこちらの台詞です。私の本気を見せてあげましょう」

「やられ役の台詞どーも」

『絶歩』

再び美羽は空間を越えて、ヘルヘイムの懐に入り込む。

「舞い踊れ、神気の剣!」

『神気舞剣』

「燃やし尽くしなさい、レーヴァテイン!」

『滅却炎剣』

美羽は舞を踊るかのように、神気の剣を振るい白金の輝線がヘルヘイムを切断しようとする。

対して、ヘルヘイムは火の粉を剣から撒き散らし、物質化させると美羽の剣撃を防ぐ。

「てーい」

「ハァァァッ」

お互いに裂帛の声をあげると、敵を倒さんと斬りかかる。

二人の剣の腕はほとんど同レベルであり、稀にお互いの身体が切り裂かれるが、気にする様子もなく攻撃を続ける。

打ち合うごとに衝撃波が波動となって、周囲の地形を再び破壊していった。

もはや見渡す限り砂漠へと変貌しており、戦闘前の緑溢れる森林はどこにもなく、連なる山脈すら更地となっていった。

「カッ!」

『 爆炎弾(エクスプロージョン) 』

「なんのぉっ!」

『フレースヴェルグの風』

ヘルヘイムが剣を振るいながら、爆炎を口から吐き出す。美羽は対抗して背中に鷹の翼を生み出すと、大きく羽ばたかせ、巻き起こした風でかき消す。

『魂覚醒』

『フレースヴェルグの風』

『フレースヴェルグの風』

『融合しました』

『神気の北風』

さらに翼をはためかせると、美羽は神術を使用する。そよ風が吹きヘルヘイムの身体を通り過ぎていく。

通り過ぎたあと、ヘルヘイムの焔の身体に異変が起こる。炎がその形を保ったまま氷に覆われていくのだ。

「世界を燃やし尽くした炎を凍らせる!?」

ヘルヘイムが驚愕の声をあげる。レーヴァテインから炎をさらに引き出すが、凍る速度の方が速い。

「全ての風を生み出す鳥さんの力だよ。その中には凍れる風もあるんだ!」

「くっ、小癪な真似を!」

ヘルヘイムはレーヴァテインからさらに力を引き出すと、己の身体を熱する。

力を溜めるその一瞬を逃さずに、美羽は神気の剣での連撃をヘルヘイムに食らわす。

だが怯む様子を見せずにヘルヘイムは対抗してきた。

「終末の炎によって焼かれよ!」

『終末の炎』

ヘルヘイムの身体が太陽のように輝き、纏う炎が膨れ上がり周囲へと広がっていく。終末の炎が内包するエネルギーにより、世界は軋み空間が歪む。

「やっぱり世界を破壊する気なんだな! 世界を無には返させない!」

世界を破壊する犯人はヘルヘイム。やっぱり自分は間違っていなかったと、美羽は鋭く息を吐くと、両手を翼のように広げる。

「鳥さんの力を見よっ!」

『フレースヴェルグ変身』

凛々しき手乗りサイズの神の鷹に変身すると、神の力を翼に込める。パアッと鳥さんモードの美羽の身体が光り輝き、白金の風が巻き起こる。

『消滅の風』

光り輝く風は、同様に輝く炎とぶつかりあう。

「なにっ!」

ヘルヘイムは絶対の自信を持って放った炎が風をも巻き込み、さらなる炎へと膨れ上がると信じていたが、目を剥いてその結果に驚愕した。

9つの世界を燃やし尽くした炎は、鳥さんモードの美羽が起こした風に触れるとあっさりと消えていき、全てを灰へと変えた超高熱も涼やかな温度へと変わっていったのだ。

まるで草原に吹く風のように穏やかな風だった。しかして、その結果は信じられないものであった。

「フ、フレースヴェルグの『打ち消す風』はスルトの炎を消す程威力はないはずです。いったいなにが!」

「オリジナルよりも強いってことだろ!」

『神意』

ニカリと笑うと姿を元に戻し、美羽は手首を返して蛇腹剣へと神気の剣のモードを変える。

神たる美羽の意思を乗せ、即ちダメージ2倍、クリティカル率大幅アップの『神意』スキルを神気の剣に注入して叫ぶ。

「ひっさーちゅ、しんりゅーけーんっ!」

ちょっぴり噛んだりもした。

『魂覚醒』

『神気帝龍剣』

『神気帝龍剣』

『融合しました』

『真龍剣』

「グォォォ!」

白金の龍へと剣身が変化すると、神のオーラを纏わせて咆哮する。世界を震わせて、空間を歪ませて、深淵へと周囲を落とす。

「なんという莫大な神力!」

真龍は神雷となって、驚愕するヘルヘイムへと降り注ぐ。

「ガァァァァッ!」

神の雷により鎧が砕けて、その身が膨大なエネルギーにより煙をあげて崩壊していき悲鳴をあげるヘルヘイム。

『不死なる身体』

だが、すぐに回復を使うと、時間が巻き戻されていくように元に戻ってしまう。

しかし、それが見せ掛けだと、美羽は知っている。

「だいぶ力を削り取られただろう、ヘルヘイム!」

『神殺し』の力により、ヘルヘイムは神の力を削り取られているのだ。肉体が戻っても神の力は回復できない。

「お、おのれぇぇぇえ! たかだか人間ごときが〜っ!」

『レーヴァテイン』

怒気を纏わせて、激昂するヘルヘイムはレーヴァテインを振るってくる。

「ん? ただの攻撃?」

音速を越えて剣が迫るが、美羽は直剣へと戻して、絡めとるように弾く。

しかし、炎を吹き出すわけでも、なにか他の効果のある技でもない。単に速く重いだけの攻撃に僅かに眉を顰める。

「てい」

でも、敵の隙は逃さない。剣を弾かれて身体が泳ぐヘルヘイムへと素早く剣を返して斬りかかった。

「ハァァァッ!」

『レーヴァテイン』

スパッとヘルヘイムの身体を切り裂くが、気にする様子もなく、再び切りかかってきた。防御を捨てた攻撃に躱すことができずに、美羽の身体を切り裂く。

「むむっ、防御を捨てたんだね!」

「そのとおりです。もはや、この手しかありませんのでね!」

紅き残像を残して、レーヴァテインを高速で振るってくるヘルヘイム。単なる剣撃だが、その剣速は今までで最速で、防御を捨てることにより美羽に少しでもダメージを与えようという強い意思を感じる。

躱すことは難しい。間合いをとっての戦闘も脳裏によぎるが、ログを確認して切り合うことを決意した。

「乗ってやるぜ、ヘルヘイム!」

「神を恐れぬ愚か者ですね!」

美羽も防御を捨てて神気の剣を振るい、ヘルヘイムへ対抗する。レーヴァテインにより美羽の身体は切り裂かれ、鮮血が炎により灰へと変わる。

対して、ヘルヘイムもその身体を神気の剣により切り裂かれ、溶岩のような焔の血を流す。

「てやてやてやーっ!」

「ぐぅぅぅ!」

お互いの攻撃はほぼ同様。同じようにダメージが蓄積されていく。

腕を砕かれて、胴体を切り裂かれ、頭を砕かれても美羽の攻撃は止まらない。

体格は圧倒的に巨人と化したヘルヘイムの方が上だ。しかし、ヘルヘイムは切り裂かれても美羽と同じように動くことができなかった。

徐々に動きが鈍くなり、互角であった切り合いは美羽に傾いてくる。

「し、信じられないっ! 貴女は痛みを感じないのですか? 私の神撃は貴女の魂を削っている。人間ならば掠るだけで、気が狂うほどの痛みを感じるはず!」

「もちろん痛いさ。そっちも痛そうだな!」

左からの切り上げ、返す刀で頭上から剣を振り下ろす。ヘルヘイムは遂に防御体勢をとって、美羽の剣を防ぐ。

「か、軽口をっ! ア、アストラル体? 肉体の裏にそこまで作ることができるようになっていたのですね!」

苦痛の表情となって、ヘルヘイムは美羽の砕けた身体に重なるように青い半透明の身体があることに気づいたようだった。

そして、ニヤリと嫌な嗤いを見せる。

「殺さなければならないと思っていましたが、それならば好都合!」

「むむ?」

挙動の変わったヘルヘイムに不審を覚えるが、気にすることなく攻撃を美羽は続ける。

システムさんが教えてくれる。敵から受けるダメージと相手に与えるダメージ数値を。

ヤールングレイプルを着た美羽には、見掛けとは違いそこまでダメージは入っていない。

わかるわかる。鼻の差で勝てる。ヒヒーンってね。

もはや巨人は切り刻まれて、あと一歩で倒せるとゲーマーの勘が囁いているのだ。

そして、この勘を俺は外したことがない。

「ウォォォ!」

獲物を狩る猛禽の目つきとなり、さらに神気の剣を振るう。

防ぐかと思いきや、ヘルヘイムの頭に神気の剣はまともに命中し、ヘルヘイムは予想外の行動に出た。

『レーヴァテイン解除』

ゴウと焔がヘルヘイムの身体を覆うと、巨人は炎へと戻り消えていく。

レーヴァテインを投げ捨てて、炎の中からゾンビのような姿に戻ったヘルヘイムが飛び出してきた。手のひらを美羽に向けて、神の力を集めていく。

「貰いました!」

『 魂収奪(ソウルスティール) 』

ヘルヘイムの腕が弾くように爆発し、アストラル体の腕が美羽の胴体に入り込む。

「むむむ?」

美羽の胴体が水の波紋のように揺らぎ、光り輝く。

「フハハハ! 残念でしたね、鷹野美羽。アストラル体ならばアストラル体で触れることが可能なのです。死せし人間の魂はたとえ『転生者の魂』でも、この死を司るヘルヘイムの手からは逃れることはできません」

勝ちを確信し哄笑するヘルヘイム。胴体に潜り込んだ腕をひねり、力を解き放つ。

「貴女の魂は有効活用させてもら……させて?」

だがすぐにその顔は困惑と混乱の表情へと変わっていく。

「な、なに? こ、これは……外側からはたしかに見えたはずなのに……どこにも……?」

「どうかした? ヘルヘイム?」

ガシッとヘルヘイムの頭を握りしめて、ニコリと笑いかけてやる。ヘルヘイムは信じられないものを見たような顔へと変わる。

「ま、まさか? ……まさかぁぁぁ! こんなはずは……いつ入れ替わったァァ! ま、ま、まさか最初から!」

絶叫するヘルヘイムへと美羽は無機質な瞳を向け叫ぶ。

「といやー」

『神気』

『魂覚醒』

『フレースヴェルグの風』

『美羽のスマイル』

『融合しました』

「乙女の秘密を見た人は死んでもらうね」

『美羽の羽ばたき』

美羽の背中に白金の翼が生まれると、空をも埋め尽くす大きさとなり、ふわりと羽ばたく。

「バイバイ、ヘルヘイム」

「お、おのれっ……私たちがしていたことはっ」

手のひらから白金の粒子が風と共に吹き荒れ、ヘルヘイムの頭へと叩き込まれる。ヘルヘイムの頭が歪み、白金の粒子がその身体を駆け巡り、粒子へと変換して崩壊させていく。

わなわなと手を震わせ、逃れようとするヘルヘイムだが、力なく腕は落ちて崩れ去るのであった。

『死のヘルヘイムを滅ぼした』

『龍水巴を殺した』

『ニーズヘッグの信徒を殺した』

戦闘終了のログが表示されて、ふぅと息を吐く。

「勝ったね」

身体を回復魔法で癒やしつつ、フッとクールな笑みで美羽は灰色の髪をかきあげる。

「さて………どうしようこれ?」

見渡す限りの砂漠に、山脈も更地になっちゃった。トドメの美羽の羽ばたきでパタパタしたら、なんとかバレーみたいな景色を作っちゃったよ。

「まぁ、これでニーズヘッグは終わりだから、ニーズヘッグのせいにしようっと、いや、間違いなくニーズヘッグの儀式魔法のせいだよね」

これはまずいと口笛を吹く練習をしようかなと迷うけど、システムさんが助けてくれた。

『世界を癒やそう:神意を込めた回復魔法で世界を癒せるぞ。回復魔法を使ってみよう』

「やった! さすがはシステムさん。よーし、癒やしていこうかな」

『神意』

『 範囲極大治癒(エリアエクストラヒール) 』

空中に白金の魔法陣が描かれる。砂漠の上をカバーするほどの広大な魔法陣から光が降り注ぐと、渓谷も砂漠も更地となった山脈も元に戻っていった。

緑溢れる森林へと戻り、雄大な山脈が連なる。

「裏技見つけちゃった! これで破壊しても直しちゃえば幻影合戦だったと言い張れるね!」

やったねと、花咲くような笑みを見せて、美羽は武道大会会場へと戻ることにしたのだった。

「……まだシンが残っているし……面倒な人たちがいるんだろうなぁ」

ちょっぴり顔を顰めちゃったりもするのだった。

どこからか助けを求めるようなハーモニカの鳴る音が聞こえてくるけど、ガン無視で良いよね。