軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

65話 高月まことは、元・守護騎士と再会する

「貴様が、なぜここにいる!?」

元・水の巫女の守護騎士が、こちらに大股でやってきた。

「そちらこそ、クビになったって聞いたけど?」

ソフィア王女が、嘘をついていたのか。

「その通りだ! 貴様のせいで、栄誉ある巫女様の守護騎士の任を外れ、今は王宮の見回り騎士隊長だ!」

ああ、部署異動か。

クビになったわけじゃ、なかったんだな。

確か「守護騎士を辞めてもらいました」って言ってたしな。

あの性格の悪そうな王女のお付きより、王宮見回りとかのほうが楽そうでよさげだけどな。

「そうか、マッカレンの冒険者が国王に謁見されていると聞いたが、貴様らか。ということは、王宮仕えの栄誉を賜ったわけだな」

「いや、俺は爵位はもらっていないから……」

「ならば、本日より我らの同僚。こちらへ来い! 騎士道をたたきこんでやろう」

こいつ、話聞いてねぇー。

なんか、知らない間に訓練場らしき場所に連れて行かれた。

ルーシーとさーさんも一緒だ。

「さあ、好きな武器を取れ! 魔法使い用の杖もあるぞ!」

確かに使い込まれて、ボロボロの武器(木製)が並んでいる。

どうしたもんかな。

うーむ、『RPGプレイヤー』視点でまわりを見渡すと。

(せ、精霊が全然居ない……)

水の国(ローゼス) は、政教一致の国だ。

ローゼス城は、王城であるとともにこの国最大の教会でもある。

なんでも、王族は数年の司祭経験があるんだとか。

王女が、教会の巫女だしな。

おかげでローゼス城は、聖神様の威光が隅々にゆきわたり、精霊には大変住み辛い環境のようだ。

(まあ、俺は爵位を貰ってないから、こいつらの同僚でもなんでもないし、理由を言って断ることもできるが……なんか、 癪(しゃく) だな)

そんなことを考えていると、後ろから声が上がった。

「高月くんと戦いたいなら、まずは私が相手になるよ!」

さーさんだ。

「誰だ、貴様は? 高月まことの仲間か」

「佐々木あやよ、はじめまして。高月くんは、私たちのパーティーのリーダーだから、先にメンバーの私が相手になるわよ」

さーさんが、びしっと決めている。

が、花柄のシャツにスカート。

元の世界の服装に近い格好。

この世界だと町娘のようなさーさんに、元・守護騎士の男は呆れたように言った。

「冒険者仲間と言うわけか、女子供を我が相手をするのは、騎士道に反する。おい、おまえが相手をしてやれ」

「はいっ!」

ほう、騎士道とはかっこいいことを言う。

前に出てきたのは、女騎士だった。

「私はこの武器を使おう」

女騎士が選んだのは、一本の木刀。

「私は、素手でいいわ」

さーさんは、何も持たずに前へ出た。

女騎士が、不機嫌な顔になる。

「怪我をしても知らんからな。剣道三倍段という言葉を知らないのか」

いや、何でそっちが知ってんだよ。

俺らの世界の言葉だぞ。

と思ったが、どこの世界でも共通認識なのかもしれない。

素手より、武器を持っているやつのほうが強い。

普通は。

「冒険者らしいな、ランクは?」

女騎士が、剣を構える。

「ストーンランク? だっけ、高月くん」

「そうだよ」

さーさんは、だらりとした自然体だ。

というか自分の冒険者ランクは覚えておこうね、さーさん。

訓練場にいた騎士たちが、わらわら集まって見学している。

ストーンランクという声を聞いて、同情するような顔をしていた。

皆、さーさんの負ける姿を想像してるのだろう。

「始めろ!」

元・守護さんが掛け声を上げた。

「ストーンランクとは……。一撃で、決めてやろう!」

女騎士が、さーさんへ突っ込んで行く。

なかなかのスピードだ。

さーさんは、特に動かない。

女騎士が、剣を振り上げ――

ぺしっ! という、ちょっと間抜けな音がして、女騎士は5メートルほど吹き飛ばされた。

さーさんの、張り手で。

「あれ? やり過ぎたかな?」

さーさんが、頭をかいている。

「「「「……え?」」」」

元・守護さんと訓練場にいた騎士さんたちの目が、丸くなっていた。

「あや、凄いわね!」

ルーシーがぴょんぴょん跳ねて、喜んでる。

まあ、当たり前だわな。

「で、次は? ちょっと、弱すぎるんだけど?」

さーさんが、あたりを見渡した。

挑発だと受け取られたのか、場の空気が剣呑になる。

「次はおまえだ。行け」

「はっ!」

次に、出てきたのは大柄の男だ。

騎士道は、どこ行った?

まあ、15秒後には、そいつも吹き飛んでいたわけだが。

「つ、次だ!」

元・守護騎士が次々に、部下らしき騎士を指名するが、全てさーさんが叩きのめしてしまう。

「な、なんて強さだ」「これでストーンランク……」「マッカレンの冒険者は化け物ぞろいか……」

違いますよ。マッカレンは、平和な田舎街です。

さーさんは、ラミア族である。

ラミア族は、中位クラスの魔物とはいえ、人間に比べれば身体能力は高い。

そして、異世界転生者であるさーさんは、ステータスが通常のラミアの10倍だ。

かつ、スピードや攻撃力が3倍になる強スキルまで持っている。

――あやちゃんの身体能力だけなら、勇者なみだから。

ノア様の台詞が蘇った。

まあ、勝てんわな。

というか、大迷宮で俺が高月まことだと気づいてもらえなかったら、俺もこうなっていたのだろうか……。怖い。

ぼーっと、見ていたら訓練場に居た全ての騎士が全員、さーさんに倒されていた。

残るは、元・守護騎士の男だけだ。

「最後は、あなたね」

さーさんは、息ひとつ切らせていない。

……俺のクラスメイトはチート持ちばっかりだ。

「き、貴様、卑怯だぞ! 女に戦わせて、自分は高みの見物か! 高月まこと、貴様が戦え!」

おお。俺に矛先を変える作戦か。

頭、良いね。

さーさんは、格闘技だと間違いなくうちのパーティ最強だからな。

残り二人は、魔法使いだし。

「……何言ってるの?」

空気が変わった。

「あ、あや……?」

ルーシーが、少し怯えた声を出す。

「さーさん? どしたの?」

まあ落ち着いて、と言おうとして俺も感じた。

大迷宮で 地(・) 竜(・) と 遭(・) 遇(・) した時のような、プレッシャーを。

これ……『威圧』スキルか。

獣人族が得意と聞くけど、ニナさんに教わったのかな。

倒された騎士たちが、青ざめて震えている。

最初に吹き飛んだ女騎士は、膝をがくがくさせて、へたりこんでいた。

「あなた、昔の高月くんに、酷いことしたのよね?」

「さーさん。あれは、ちょっと大げさに言っただけだからさ」

さーさんやルーシーにはよく「水の神殿でソフィア王女や守護騎士の男にバカにされてさ」と、酒の席で愚痴っていた。

それを、覚えていたみたいだ。

さーさんからのプレッシャーは、どんどん増していく。

「わ、我は、その……」

哀れ、元・守護さんはまともに喋れていない。

――ドンッ!!

さーさんが、床の石を踏み抜いた。

石の床は砕け、円状に巨大なヒビが広がる。

「……うそ」「あれ、魔法強化された石畳だぞ」「やばい、あんなのに蹴られたら……」「……死ぬって」

周りの騎士から声が聞こえてきた。

おっと、どうやら高級な石床みたいですよ。

弁償とか、させられないよね?

「あなたには、私の全力を見せてあげるから」

さーさんが、初めて構えを見せた。

あれは『アクションゲームプレイヤー』のダッシュスキルと溜めスキルを出す時の構えか。

ハーピー女王の身体に、大穴を開けたさーさんの必殺技だ。

……いや、駄目だろ。

相手、死んじゃうって。

俺のために怒ってくれるのはうれしいが、さすがに死人が出るのはまずいので止めに入ろうと思って。

「何をしているのですか」

涼やかな声が響いた。

はっとしたのか、さーさんの『威圧』スキルが鎮まる。

よかった。

「なんですか、この騒ぎは」

やってきたのは、ソフィア王女でした。

もう会わないって思ってたのに、さっそく会いましたね。

ソフィア王女は、俺たちを見てやや不機嫌そうに言った。

「異世界の勇者さま方。訓練をつけていただけるのは、ありがたいですが、我ら 水の国(ローゼス) の騎士は弱いので。ほどほどにしてくださいね」

なんと言ってよいかわからず、俺たちは小さくうなずいた。

元・守護さんが凄い情けない顔をしているのが印象的だった。

「あ、あの! あなた方が大迷宮を救った冒険者さまですか?」

ソフィア王女の後ろにいる、10歳くらいの少年に、話しかけられた。

騎士のような格好だが、よく見ると身に着けている素材が違う。

……あれは、高級品だ。

「はじめまして、高月まことです。こちらが、仲間のルーシー・J・ウォーカーと佐々木あやです」

ルーシーとさーさんが、ぺこりと頭をさげた。

「はじめまして。レオナード・エイル・ローゼスです」

胸の前に手をかけ、貴族流の挨拶をされた。

エイルは、水の女神様の名前。

そして、ローゼス王家の苗字。

つまりこいつは。

「レオナード王子!?」

ルーシーが、驚愕の声をあげる。

やっぱり、王子様か。