軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64話 高月まことは王都ホルンへ到着する

「あれが 水の国(ローゼス) の王都ホルン。それと中央にそびえるローゼス城か」

その姿が、飛空船の上からだんだんはっきりしてきた。

「大小、千以上の噴水と花に囲まれて、この大陸一美しいと言われている城ですね」

クリスティアナさんが、補足してくれる。

「でも、あの工事中の城壁は不恰好ねー」

さーさんの言う通り、 都(みやこ) 全体を大きく取り囲むように建設中の高い壁が、景観を壊している。

「大陸有数の観光名所であるホルンは、最低限の防衛設備しか有せず、景観の維持に努めておりましたからなぁ」

「デモ、数年前に予言された大魔王の復活を受けて、急遽、城壁を強化中なのですヨ」

なるほどねぇ。

最近は、魔物が活発化、凶暴化しているっていうし。

大変だな。

「ねぇねぇ、都に着いたらどこに行くの?」

ルーシーは、うきうきした様子で聞いてくる。

「まずは、城に行って王様に挨拶するよ」

「期日までには、余裕があるんじゃないの?」

「7日以内に来い、って書いてあったから早めでもいいんじゃないかな」

面倒なことは、先に終わらせてしまいたい。

都の探索は、あとでゆっくりできるしな。

「では、そろそろ降りましょう」

ふじやんの声で、みんなうなずいた。

――百花の大通り。

王都ホルンの正門から、ローゼス城までまっすぐ伸びている大通りだ。

その名の通り、道の脇には様々な花が咲き誇っている。

ヨーロッパの街並みを思わせる、レンガ造りの建物。

通りは、大勢の人で賑わっている。

道歩く人々は、人種様々で、人間族、獣人族、エルフ、ドワーフらしきひとたち。

大人、子供、老人が入り混じって歩いている。

マッカレンも似た感じだが、ここの人たちは少し雰囲気が違う。

なんというか、洗練されているのだ。

服装といい、しゃべりかたといい。

「なんか、田舎から都会に出てきたって感じがする」

「ははっ、初めて王都に来た時、拙者も同じことを思いましたぞ」

ふじやんが、笑いながら言った。

「ちょっと、ちょっと」くいくいと、ルーシーが袖をひっぱってきた。

その先にいるのは。

「あ……すいません、クリスティアナ様」

しまった。マッカレンの領主様の娘が居たよ。

「いいんですよ。王都に比べれば、マッカレンは田舎街ですから」

苦笑だけで、許してくれた。

「ねー、あれってなにー?」

ナイス、さーさん。話題を逸らしてくれた。

指差す先には、広場に張られた、でっかいテントが見える。

なんだろう、あれ。

前の世界では、あーいうテントは……。

「あれは『魔物使いのサーカス団』ですネ。大陸中を回る、雑技集団ですヨ」

「拙者は、昔一度見ましたが、なかなか見事なものでしたなぁ」

やっぱりサーカスか。

この世界にもあるんだな。

と思ったが、こちらの世界のサーカスは人間が芸をするのではなく、魔物を調教して見世物にしているらしい。

そのあたりの違いは異世界だな。

「あ、巨人やドラゴンがいるわね!」

ルーシーの指差す方向には、10メートルはありそうな巨人や、少し小さめの竜が、檻に入っているのが見えた。

「ドラゴンも調教できるんだな」

魔物使い、すげぇ。

「いえ、あれは飛竜ですよ。さすがに純粋なドラゴンを操れるような魔物使いは、サーカス団でなく国から雇われているでしょうね」

クリスティアナさんが、教えてくれた。

「でも、あの魔物たちストレスがたまってるね」

「さーさん、わかるの?」

「うーん、なんとなくね」

魔物同士のシンパシーというやつだろうか。

「サーカス団にいる魔物は、もともと人間を襲ったりして、本来殺されるところをサーカス団が買い取っているのですヨ。ただ、扱いは……悪いですネ」

本来は、討伐対象の魔物を利用してるってことか。

魔物愛護団体なんてものがあれば、クレームがきそうだが、そんなもんは無いのだろう。

「それにしても、花が多い街ね」

ルーシーは、サーカスより花のほうが好きらしい。

至るところある花壇や、鉢植えを眺めている。

「綺麗な街だな」

本当にそう思う。ここは、花の都だ。

「そろそろ到着ですぞ。門番の衛兵へ話してきますな」

この辺の段取りは、いつもふじやん任せだ。

頭が下がる。

芸術的な装飾が施された門をくぐり、俺たちはローゼス城へ入った。

「おもてを上げよ」

――入城するや、ローゼス国王との謁見だった。

他にも、王様の元へ訪れている人は大勢いたが、俺たちがくるや最優先で通された。

ちょっと優越感だ。

「このたびの、大迷宮での忌まわしき竜の討伐協力、大儀であった」

「迷宮の町は、 水の国(ローゼス) の貴重な財源。あなた方、異世界の勇者には救われました」

ローゼス王と王妃が、淡々と感謝の意を口にする。

礼として、爵位と金、どっちがいいかと聞かれたので、ちょっと迷って『金』と答えた。

貴族として、王家への宮仕えというのはちょっとな。

いいですよね? ノア様。

(まことの好きにしなさいー)

問題ないみたいだ。

国王の言葉が終わり、最後にソフィア王女が口を開く。

「高月まこと、藤原みちお。そなたらが、所望した水の国での商業に関する許可証です。私の名でサインがしてあります」

「ありがとうございます」

ふじやんが、うやうやしく受け取る。

水の国は、貴族と聖職者の力が強い。

ソフィア王女は、水の女神を信仰する教会の巫女。

貴族と聖職者のトップに近い人物だ。

そのサインの意味は大きい、らしい。

(まあ、これで会うのは最後かな)

ちらりと、見上げると。

氷のような視線と、目が合った。

(うわ……、睨まれてるわー)

嫌われたもんだ。

ソフィア王女が、言葉を続ける。

「商人の藤原。そなたが望むなら、爵位を与えますが」

「え?」

ソフィア王女の言葉に、小さく驚きの声を上げたのはクリスティアナさんだった。

「……いえ、こちらの許可証で十分です、王女さま」

結局、ふじやんはそちらは断ったようだ。

こうして、謁見が終わった。

あー、肩がこった。

「ふじやん、どうして爵位は断ったの?」

疑問に思って、聞いてみた。

「ソフィア王女から爵位を賜れば、王都ホルンに住まないといけないですからな。それにあれは、拙者というよりタッキー殿への、布石ですぞ」

「えっ、どういうこと?」

「おそらく、拙者とタッキー殿がマッカレンの街でパーティーを組んだり、商売をやっていることを調べたのでしょう。我々を水の国に繋ぎ止めるのが、目的だったようですぞ」

後半は、小声だ。

ソフィア王女の心を読んだらしい。

そんな意図だったのか……。

ふと見ると、クリスティアナさんが難しい顔をしていた。

どうしたんだろう?

「まこと、街を探索するわよ!」ルーシーが張り切っている。

でもな。街の探索より、重要なことがある!

「いや、まずは城を探索しよう」

RPGゲームの基本だ。

なにげに、異世界に来て初めてのお城だ。

探索し尽くしてやる!

「タッキー殿、待たれよ」

「高月くん、待って」

ふじやんとさーさんに、両脇をがしっと掴まれる。

「え?」

「リアルの城で、つぼを割ったり、たんすを調べてはいけませんぞ?」

「それって犯罪だからね? 隠し部屋とか隠し通路を探しちゃ駄目だから」

「……え? 駄目なの?」

そ、そんなバカな……って、そりゃそーだ。

駄目に決まってるね。

うん、知ってた。

ルーシーとニナさんとクリスティアナさんが、ポカンとしている。

「……まこと?」

「いや、そんなことシマセンヨ?」

あー、ゲーム脳怖いわー。

近くのつぼを叩き割って、たんすの中を調べようとしてた。

(はぁ~)

女神様のため息まで、聞こえた。

なんですか、みんなして。

人を変人扱いして。

俺の奇行を止めて安心したのかふじやんは、ホルンの商会に挨拶に行くと言って出かけて行った。

ニナさんは、ふじやんに同行。

クリスティアナさんは、王都にいる貴族へ挨拶に行くらしい。

お付きの人々と一緒に、出て行った。

じゃあ、俺たちは王都の街を探索しようかなと、思っていたら。

「貴様! 高月まことか! なぜ、ここにいる」

急に、声をかけられた。

振り向くと、そこにいたのは、元・水の巫女の守護騎士の男だった。

あれ? クビになったんじゃなかったっけ?