軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10. アリスからの招待

いつもなら茶会は王都の喫茶店で開かれる。けれどその日は、アリスの家へ招かれていた。エドワードの許可を得た上で、皆を呼ぶことにしたのだという。

理由は二つあった。一つは、皆に披露したいものがあること。そしてもう一つは、相談したいことがあることだった。

披露したいものについては、アリスが扉を開けた瞬間から大体察しがついた。

「皆、来てくれてありがとう!」

アリスは嬉しそうに笑っていた。声は弾み、頬もほんのり上気している。家の中へ案内されると、テーブルには、紅茶の準備がされてており、卓の上にはまだ何も並べられていない皿がいくつか置かれていた。

セシリアは部屋を見回す。元公爵令嬢の家というより、これから誰かと暮らしていくための家という印象だった。窓辺には白い花が活けられ、棚には揃いの食器が並んでいた。

アリスはそう言うなり、ぱたぱたと台所へ向かった。

残された四人は、顔を見合わせる。部屋の奥からは、皿の触れ合う音や、アリスが小さく何かを確認している声が聞こえてきた。

「何かしらね」

エレノアが小さく笑う。

「アリス、最近ずっとあの調子よね」

「エドワードさんと良い関係を築いているみたいで、何よりだわ」

セシリアがそう言うと、セシルが頬杖をつきながら頷いた。

「本当よね。もう完全に新婚みたいじゃない」

セシリア以外の三人は、アリスがエドワードと出会った頃のことは、皆よく知っている。意外にも、一目惚れをしたのはアリスの方だった。元々西側諸国の出身で、留学のためにこの国へ来ていたアリスは、慣れない王都で道に迷った時、偶然エドワードに声をかけられたらしい。

令嬢としてではなく、困っている一人の女性として接してくれた彼に、アリスはその時から惹かれていったのだという。だから、アリスが今の生活を嬉しそうにしていることは、四人にとっても喜ばしいことだった。

「お待たせ!」

明るい声と共に、アリスが戻ってきた。両手には大きな皿を抱えている。

「ちょ、ちょっと重かったわ……!」

そう言いながらも、表情はどこか得意げだった。卓へ並べられたのは、昼食用の料理だった。焼きたてのパン、温かなスープ、彩りよく盛られたサラダ、それから香ばしい匂いのするキッシュ。

セシリアは思わず目を丸くした。皿に並ぶ料理はどれも素朴だが、丁寧に作られているのが分かる。焼き色は綺麗で、スープからは優しい湯気が立っていた。

「これ、アリスが作ったの?」

「そうよ!」

アリスは誇らしげに胸を張る。

「最近、エドに料理を教えてもらっているの。今日はその成果を見てほしかったのよ」

「まあ……!とても綺麗にできていますわ」

リーザロッテが感心したように言う。

「でしょう? 最近は朝食なら一人でも作れるのよ。まあ、まだエドが隣にいることが多いんだけどね」

すると、セシリアが辺りを見渡した。

「そう言えば、エドワードさんは……?」

「エドは、今日は外出中よ。用事があるみたいで夕方に帰ってくるらしいわ」

アリスはそう答えながら席へ座る。

どこか自然に“エド”と呼んだことに、四人はちらりと顔を見合わせた。

――これは、もう結婚も近いのではないか。

「ほら、冷める前に食べて!」

アリスは嬉しそうに皿を勧める。

四人は顔を見合わせながら、それぞれ料理へ手を伸ばした。

最初にスープを口にしたリーザロッテが、ぱっと目を輝かせる。

「美味しいですわ!」

「本当!?」

アリスが勢いよく身を乗り出した。

続いてセシルがキッシュを一口食べる。

「……あ、普通に美味い」

「普通にって何よ!」

「ごめんごめん、アリスがここまで上手とは思わなくて」

セシリアもパンをちぎりながら小さく笑う。

「でも、本当に上達したわね。ちゃんと料理になってるもの」

「前は“挑戦的な味”だったよね……」

すると、リーザロッテが感心したように言う。

「でも、エドワードさん凄いですわね。ここまでアリスを育てるなんて」

「私、人みたいに言われてない?」

「実際かなり成長してると思う」

セシルが頷いた。

アリスは少し得意げに胸を張る。

「最近は朝食なら一人でも作れるのよ?」

「へえ?」

「まあ、まだエドが隣にいること多いけど」

その言い方があまりにも自然で、セシリアがくすっと笑った。

アリスはそんな反応に気づかないまま、少し迷うように視線を落とす。

そして、スープ皿を見つめながらぽつりと言った。

「……ねえ、皆」

「うん?」

「実は今日、相談したいことがあったの」