軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

105.図書館の迷宮

俺は賢帝の禁書庫へとやってきている。

探すべき本の元へ向かおうとしているのだが、本棚が壁のように立ち並び、さながら迷宮のようだった。

「ええっと、【魔力結晶に関するレポート 著・ユリウス=フォン=カーライル】は……こっちの方にあるみたいだな」

『はぁ!? ちょ、なんで目当ての本の名前しってるわけ!?』

妖精にして司書のリリンが、目を剥いて叫ぶ。

「あっちで蔵書を検索できる魔法道具が置いてあって、それで検索した」

司書であるリリンは本の保管場所を全て記憶しているらしいが、この子は俺に協力的じゃない。

だから自分で検索したのだ。

図書館なら検索用の魔法道具もあるかなと思って。

『嘘でしょ!? あれはとっくの昔に壊れて動かなかったはず! それに古代の遺物だから直し方なんて誰にもわからないはずなのに!』

「神の手で触れれば一発で異常箇所みつけられて、直せたよ」

『なんなの!? あんたのその手! 何でも直せるなんてずるすぎる! 本当に神のごとき手じゃないの!』

本棚の位置はわかったのだが、道中はかなり複雑で、なおかつ侵入者用のトラップがいくつもあった。

たとえば、俺が本棚の間を歩いていると、突然上空から辞書が落ちてきた。

ばさりと開くと、そのページが光り輝く。

気づけば俺は、先ほどまでとは異なる場所、草原に立っていた。

『どうだぁ! それは本の世界に閉じ込めるトラップ! 一度捕まれば司書が許可するまでぜったい本の外には出られないんだよ!』

俺は周囲を見渡し、ある一点に向けて、聖剣を振る。

ずぉ……! とまるで溶けたバターをナイフで切るように、空間が裂けた。

「よし」

『なんでぇええええええええええ!?』

本の外の世界へと脱出した俺に、リリンが驚愕の表情を浮かべながら尋ねる。

『どうして!? 許可無く脱出できたのよー! 絶対出れないはずなのに!』

「どんなものでも弱点となる箇所はある。それを見極めて空間を断ち切っただけだ」

世界を隔てる壁の、弱い箇所を見つけ、あとは斬っただけである。

『ありえない……空間を斬るとか、人間業じゃないわ……すごすぎる……』

「本は戻しておいたぞ」

今みたいなトラップがあちこち設置されている。

だが大抵なんとかクリアできた。

「ちょっと罠ガバガバすぎないか? すぐに入れちゃうぞ」

『いやそれあんただけだから! これ、強力すぎて、何世紀もの間一度も破られたことのないトラップだったんだから! きー! すごすぎるんだよあんたが!』

「そうか? トラップの難易度あげるなら手伝うぞ」

『これ以上罠のレベル上げたらあたしが制御できないわよ!』

ややあって。

図書館のラウンジまでやってきた。

円形をしており、やはり外周には本棚が置いてある。

「確かこの辺のはずなんだが……」

そのとき、バサバサバサ! と大量の本が、棚から落ちた。

本は積み重なって、1体の巨人へと変化した。

『どうだ! これぞ本の巨人! 本を無数につなぎ合わせて作った最強のゴーレム! さぁ! 攻撃してみなさい! 下手に攻撃して、あんたのお目当ての本がぐちゃぐちゃにならないといいわねぇ!』

「おまえ司書なのにそんなに本を雑に扱って良いのか?」

『うぐ……! う、ううるさい! 本を不審者から守るため、きっとアンチさまもお許しくださるわ! ゆけー!』

本の巨人が腕を振り上げる。

巨木と錯覚するそれを、俺に向かって振り下ろす。

ジャンプして攻撃を回避。

巨人の一撃は大地を揺らし、地面にクレーターができていた。

『さぁどうする!? 斬る? 燃やす? そしたらあんたの知りたかった情報は永遠に失われるけどねぇ!』

「問題ない」

俺はすでに弱点を見つけていた。

本の巨人の眉間に、探しもとめていた本があった。

俺は跳躍し、本を抜き取る。

『そ、そんな馬鹿な!? この無数にある本の中から、どうやって1冊の本を!』

「職業柄、人の体から特定の何かを見つけるのは得意なんだよ」

たとえば病巣の切除だってそうだ。

医師は瞬時に異常箇所を見極め施術しなければならない。

それと比べれば、本を探し取り出すことなんて、容易い作業だ。

『や、やれぇ! 叩き潰せぇえ!』

リリンの命令で本の巨人が、両腕を振り上げる。

「もう遅い。攻撃は終わってる」

バサバサバサ……と大量の本がその場に崩れ落ちる。

『い、いったいなにが……?』

「麻痺スキルを打ち込んでおいた」

『あ、あり得ないぃいい! 本に麻痺が効くはずもないし、ましてあの一瞬でスキルを使うなんて……!』

目当ての本を手にした俺に、リリンが戦慄しながら言う。

『あんた……もしかして神?』

「いや、ただの獣ノ医師だよ」

『あんたみたいなのが普通の医師なわけないでしょぉおおおおおおお!』