軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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エドガー様はにこにこしているけど……! しかも、ちょうど話題が途切れたタイミングで投入された……!

いや、でも恋人アピールをしておくべき……? あ、いいネタもある!

「諸侯会議中は、正装用の制服をクリフォードに着てもらおうと思っています」

エドガー様が目を丸くした。

「あれを……?」

でも、すぐに笑顔を浮かべる。

「それは良いね。私もだけど、皆がオクタヴィアの護衛の騎士が正装用の制服を着ることは想像していなかっただろうから」

同感です……! 私もそう思ってました! 正装用の護衛の騎士の制服を着てもらおうって考えたこと自体、快挙?

「――そういえば、オクタヴィアがアルダートンを紹介することになった発端は、セリウスだったよね? 兄としてはどうだった? 認めたい、と言っていたけど」

はっ。兄にまで火の粉が飛んだ……!

「父上が認めたのです。それがすべてでしょう」

が、兄は冷静に答えている。

食事の手を一旦止めたエドガー様が、左の手の甲で頬杖をついた。

「『オクタヴィアに愛する者がいるのなら、その者と結ばれる権利があります』?」

前の夕食会で兄が口にした言葉を、ゆっくりとそのまま繰り返す。

「でも――その後は?」

瞬時に、場が凍り付いた。

その後。

エドガー様が示唆したのは、お世継ぎ問題について、だ。エドガー様は、頬杖をついて、柔らかな表情のまま。

「……エドガー」

父上が、諫めるように名前を呼んだ。

ふっとエドガー様が笑った。頬杖をついていた左手を下ろし、右手で杯を取る。

「ごめん。セリウス、オクタヴィア。食事の場で出す話題じゃなかったね」

それからは、エドガー様はいつも通りだった。……いつも通り、なのかな? 自分から話題を振り、場を和やかにしてくれている。なのに、何だか空っぽな気がした。

――そう感じるのは、予感している、父上とエドガー様の、本当の関係のせい。

かといって、二人の間のことに、私が首を突っ込んで良いものかどうか。こんなの、間違ってますって? ……そんなわけない。私が簡単に否定できるものじゃないし、触れられることでもない。――もし『あの青年』が何らかの形で関わっているなら、そうも言ってられないんだけど。

……エドガー様は、意図してなのか、そうじゃないのか――私に知られてもいいって、たぶんそう思ってる。

でも、真実が隠れているとして、それを暴くのは、別に全然気持ちの良いものじゃない。ナイトフェロー公爵家別邸で絵を見たときも、父上の、あの部屋に入ったときも。

表面上は、和やかに食事が続いた。

「――エスフィア人は、瞳の色が変わったりするのでしょうか?」

ヤールシュ王子の口から、そんな質問が飛び出したのは、夕食会がほぼ終わりに近づいた頃。おかしな内容だったので、つい注目してしまう。

……同時に目に入ったのは、アレクの手元の食器がカタッと動いた光景。

マナーが完璧なアレクにしては、珍しい失敗だった。

「それは、どういう?」

兄が問い返す。

「たとえば、私の目の色は黒色です。赤みがかっていますが。それが、まったく違う色に変わる。そんなことがエスフィアではよくあることなのかどうか、ということです」

「……感情によって、瞳孔が広がることがある。それによって色が濃く見えることはあるかもしれないが……。色がまったく変わるというのは聞いたことがない」

「エスフィア人ならではの特徴ではない、と?」

「あるいは、赤子が幼少から成長するにつれ、変わる事例はあると思うが。赤子の頃は青色だったのに、茶色や緑色に変わる。成人してから変わる例も、稀だがあるかもしれない。しかし、エスフィア人に限らないはずだ」

そうなんだ。知らなかった……!

ただ、これもヤールシュ王子が求めている答えではなかった模様。……何だろ。誰かの目の色が変わったのを、見たことがあるとかなのかな? エスフィア旅行中に?

「――特徴かは知らんが、瞳の色が変わるのを見たことがある」

今度の発言者は、父上だった。しかも、兄の言葉を覆す内容。

ヤールシュ王子が父上に顔を向けた。……アレクもだ。

「言いたいのは、年月の経過や感情ゆえにではなく、色が変わる事例のことだろう?」

「それは、どなたが?」

問いに、父上が答える。

「私の叔父だ」

「!」

バッと父上を見る。つい、反応してしまった。

「お前たちにとっては、大叔父だな」

お前たち――私や兄、アレクに目をやり、父上が言い直した。

父上にとっては叔父で、私からすれば大叔父――キルグレン公ルファスしかいない。前々代のナイトフェロー公爵で、若い頃の顔がルストそっくりの……。

「叔父の瞳の色は琥珀色だったが、突如碧色に変わった」

ヤールシュ王子より先に、私は口を開いた。

「それは――いつ?」

「――死後、だな」

何かを思い返すかのように、父上が答えた。

亡くなった後に、瞳の色が変わった? 琥珀色から碧色――まったく違う色に。『あの青年』の顔が頭の中に浮かぶ。まったく関係がない、とは思えないけど……。

ガタン、と音を立ててアレクが立ち上がった。

アレク……?

「ご馳走様でした。――これ以上はいただけませんので」

先に失礼します、と告げて、アレクが晩餐室を出ていく。

アレクの護衛の騎士であるランダルがその後を追った。

迷ったのは、一瞬だった。様子のおかしかったアレクを追いかけないでいて、あの日、後悔した。今日は――。

私も、席を立った。

「わたくしも失礼いたします。皆様は引き続きお楽しみを――」

「待ちなさい。夕食会を提案したお前が、先に席を立つのか?」

なのに、父上が辞去の挨拶を言い終わる前に、私の言葉を遮った。

私を、止めようとしてる。私の行動の理由は、明らかだ。……アレクを、追いかけるなって、言ってるの?

「――いいから、行け。オクタヴィア」

意外にも、助け船は、私のすぐ横から。――兄だ。

見返すと、兄が力強く頷いてみせた。

その場にいる面々へと、ドレスの裾を持ち上げそっと一礼する。

私は今度こそ踵を返した。

「セリウス!」

後ろで、父上が兄を叱責すると、それを窘めるエドガー様の声がした。