軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

053 VSエグランティーヌ

「ジルベール・フォートレル男爵、出番です」

「ああ」

エグランティーヌとヴァルラムの試合の後、少し時間を置いて試合の準備が始まった。

「ジル様、がんばってください!」

「がんばれよー!」

「ああ、行ってくる」

アリスとコレットに手を上げて応え、オレは円形闘技場へと足を踏み入れた。一気に視界が広くなり、太陽がまぶしい。

オレが出ると、大きな歓声が起きた。

まぁ、決勝戦だからね。今日一番の盛り上がりだ。

観客の歓声のボルテージがもう一段跳ね上がる。エグランティーヌの登場だ。

さすが、優勝候補の大本命。歓声の大きさが全然違う。

円形闘技場の中央でエグランティーヌと向かい合う。

「……久しぶりですね、ジル……」

「エグランティーヌ殿下もご壮健そうでなによりでございます。私が言うことではないかとも思いますが、決勝戦へと進まれたこと、おめでとうございます」

「…………あなたもおめでとうございます……。あの、ジル……」

「お互い、いい試合にしましょう。よろしくおねがいします」

「……よろしくおねがいします……」

エグランティーヌはなにか言いたそうだったが、オレはそれを遮った。

もう俺たちの関係は終わってしまったんだよ、エグランティーヌ。

「両者、準備はいいですか?」

「ああ」

「はい……」

辛そうな表情をしていたエグランティーヌだが、一度深呼吸すると凛々しい表情をみせた。いろんなものを飲み込んで、戦闘モードに入ったのだろう。

このあたりはさすが王族なのかもしれないな。オレも見習いたいものだ。

「では、始め!」

「やあ!」

審判の試合開始の合図。それと同時に飛び込んだオレをエグランティーヌの片手剣が迎撃する。

キンッ!

エグランティーヌの片手剣を右手のナックルダスターで弾く。

更に踏み込むが、エグランティーヌの上半身は盾でガッチリと守られていた。ならば、狙うは足!

オレはエグランティーヌの足を刈り取るようにしゃがんでローキックをぶん回す。

だが、さすがに読まれていた。

エグランティーヌはその場でジャンプしてオレのローキックを躱すと、落下と同時に片手剣を振り下ろしてきた。

まるでギロチンの刃のように落ちてくるエグランティーヌの片手剣。

オレはそれに全身を使ったアッパーで応える。

ガキンッ!!!

片手剣とナックルダスターがぶつかり合い、火花を散らして硬質な音を響かせた。

ぶつかり合いを制したのはオレだった。エグランティーヌを弾き飛ばした。

だが、エグランティーヌは弾き飛ばされることも読んでいたのだろう。バランスを崩すことなく、バックステップでオレから距離を取った。

強いな。隙が無い。

これも王家の英才教育の成果か。このままではエグランティーヌを崩せそうにない。

エグランティーヌもオレの強さを認めたのだろう。持久戦の構えだ。

エグランティーヌの【聖騎士】のギフトは防御力にボーナスを得るし、回復魔法まで使えるギフトだ。持久戦になれば自分が勝つと思っているのだろう。

それじゃあ、こちらは一枚手札を切るか。

オレは収納空間を展開すると、ファイアボールを発射する。トーナメントで今まで溜め込んできた魔法だ。これを使う。

「ファイアボールッ!?」

エグランティーヌの動揺の気配が伝わってくる。まさかオレが魔法を使うとは思わなかったのだろう。

ファイアボールが一直線にエグランティーヌへと飛んでいく。

オレはファイアボールに隠れるようにしてエグランティーヌへと接近した。

ファイアボールがエグランティーヌへと直撃し、爆発する。

ファイアボールに遮られていた視界が晴れると、盾を構えて身を守るエグランティーヌの姿が見えた。

「ッ!?」

エグランティーヌがオレの接近に気が付いた。

だが、もう遅い。

「うらッ!」

オレはエグランティーヌの盾を迂回するように右のフックをエグランティーヌへと叩き込む。

「ぐっ!?」

反射的に殴られた左腹を庇おうとしたのだろう。エグランティーヌの盾が動く。その身を守っていた防御が崩れる。

「ファストブロー!」

「ぐほっ!?」

左の拳をエグランティーヌの腹部に叩き込む。エグランティーヌはえずくように体をくの字に折り曲げた。

これでラストだ!

オレは下がったエグランティーヌの頭部をかち上げるように拳を振るう。アッパーだ。

「ラムパート!」

ガキンッ!!!

「ぐっ!?」

しかし、オレの攻撃は、頭部を殴ったとは思えないほどの硬質な音と共に遮られた。

【聖騎士】のスキル、『ラムパート』。一定時間、物理ダメージを一部カットするスキルだ。

エグランティーヌは、オレに殴られた顎から血を流しているが、依然、立っていた。

さっきの一撃で決めるつもりだったんだが……。面倒な事になった。

「やあ!」

エグランティーヌは、片手剣を下から上へと斬り上げる。

「ダブルブロー!」

オレはそれを半身になって避けると、エグランティーヌの腹と胸に向かって一発ずつ穿った。