軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

052 エグランティーヌVSヴァルラム

「ジル様、おめでとうございます! かっこよかったです!」

「おう、ジル。おめでとさん」

「ありがとう、二人とも」

アリスとコレットから祝福の言葉を貰い、オレは選手入場口へと戻ってきた。すぐに決勝戦だから、選手控室に戻るのも面倒だ。

そんなことを思っていると、選手控室から誰か出てきた。

すらりと長身の美少年。コレットを破ったエルフのヴァルラムだ。

気弱そうなヴァルラムは、こちらにペコリと会釈をすると、そのまま通っていこうとして――――。

「ひっ!?」

情けない声を出していた。

ヴァルラムの視線をたどると、不機嫌そうな顔をしたコレットがいた。

「むすー!」

「あ、あれは僕のせいじゃなくて、その、えっと、あの、本当にごめんなさい!」

「俺に勝った奴がペコペコ頭を下げてんじゃねえよ! もっと胸を張れ! そうじゃなきゃ俺が浮かばれねえ」

嚙み合って無いなぁ……。

たぶんヴァルラムはコレットのパンツ御開帳事件を謝っているのだろう。

だが、コレットはそのことを知らないのでヴァルラムが無駄に頭を下げているように見えて、そのことが気に入らない。

なんかかわいそうなヴァルラムだった。

「本当にごめんなさい!」

「がるるる!」

ヴァルラムが頭を下げて走って闘技場に出ていく。その途端に大きな歓声が沸き上がり、彼はビクッとしていた。

ヴァルラムはゲーム通り小心者な性格のようだね。

大きかった歓声が、更にもう一段階大きくなる。エグランティーヌの入場だ。

さすがお姫様。エグランティーヌは歓声に笑顔で応えて堂々としていた。

ゲーム通りならば、エグランティーヌの勝利だが。さて、どうなるかな。

エグランティーヌとヴァルラムは、審判を挟んでなにか会話しており、ヴァルラムは、ペコペコ恐縮そうに頭を下げていた。ヴァルラムは、貴族としては最下級の騎士家の出だ。王族と直接会話する機会なんて普通は無いから、必要以上に緊張しているみたいだ。

これはゲーム通りエグランティーヌが勝ちそうだな。

「では、始め!」

審判の試合開始の合図。真っ先に動いたのは、予想に反してヴァルラムだった。

彼はバックステップでエグランティーヌから距離を取ると同時に一気に二つの矢を放つ。『ダブルアロー』のスキルだ。

過度に緊張していたように見えたヴァルラムだが、その行動は素早く、鋭い。

だが、エグランティーヌも負けてはいない。ヴァルラムの『ダブルアロー』を冷静に盾で受けると、ヴァルラムとの距離を詰める。

戦況は一進一退のように見えて、エグランティーヌが押していた。ヴァルラムの放つ矢をすべて盾で受け止めて完封し、着実にヴァルラムとの距離を詰めている。

ついに闘技場の壁に追い詰められたヴァルラム。しかし、彼はまだ試合を諦めたわけではない。

「乱れ撃ち!」

ヴァルラムの声がここまで聞こえてきた。

スキル『乱れ撃ち』は、二~最大七本の矢を同時に放つスキルだ。

放たれた矢の数は三本。どうする? エグランティーヌ。

エグランティーヌは、三つの矢をすべて盾で受け止めた。敢えてスキルを使わなかったのは、実力差を示すためだろうか。

しかし、普通なら称賛される行動も、今回は裏目に出た。

ピシッ……!

盾だ。今までエグランティーヌを守ってきた盾が不吉な音を立てて割れる。

「影縫い!」

ヴァルラムの矢がエグランティーヌの影を貫く。

スキル『影縫い』は、対象の移動を封じるスキルだ。

これでエグランティーヌは移動できなくなった。盾も壊れ、もう矢を防ぐ手段もない。

ヴァルラムはどうしようもなく下がっているように見せて、着実にエグランティーヌの盾にダメージ与え、この機会を待っていたのだ。

だが、惜しいな……。

「イクリプス!」

エグランティーヌの凛々しい声がオレの耳まで響く。

スキル『イクリプス』。自身のすべての状態異常を回復する【聖騎士】だけが持つスキルだ。

「やあ!」

『影縫い』の呪縛から解放されたエグランティーヌが走る。ヴァルラムとの距離はもう二メートルほど。この距離ならば、弓を撃つよりも剣の方が速い。

「ファストあ……!?」

「ダブルブレイド!」

なんとかスキルを使って迎撃しようとしたヴァルラムだったが、エグランティーヌの速さには勝てなかった。エグランティーヌの剣が、まるで勝利のVサインを描くようにヴァルラムを切り裂く。

「あがッ……!?」

「勝者! エグランティーヌ・パラディール殿下!」

ヴァルラムはそのまま倒れ伏し、急いで両者の間に割って入った審判が勝者の名を告げる。

その瞬間、爆発するような歓声が闘技場を包んだ。

やはり、勝者はゲーム通りにエグランティーヌになったか。

エグランティーヌを見ていると、彼女はオレの視線に気が付いたのかこちらを向いた。一瞬、口を開きかけ、しかし、なにも言わずに泣きそうな笑みを浮かべてエグランティーヌは闘技場の反対側へと退場してく。

なんだかもやもやするな。

エグランティーヌとは、元婚約者の関係だし、この間の件で微妙な状態だ。

できれば彼女と戦いたくはないのだが……。仕方ない。