軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

054 VSエグランティーヌ②

「ぐっ! かはっ!」

エグランティーヌはオレの反撃には目もくれず片手剣を振り下ろした。

「フィニッシュブロー!」

「ぐっ」

エグランティーヌの片手剣を避けて、もう一度拳を叩き込む。

やはり『ラムパート』の効果中は打撃のダメージがカットされて決定打にならない。エグランティーヌもそれを承知でリソースを攻撃に振り分けているのだろう。

オレはエグランティーヌから離れようとバックステップを踏むが、エグランティーヌがダッシュでついてきた。

「シールドバッシュ!」

「ッ!」

『シールドバッシュ』はダメージはそんなに高くないが、喰らえばスタンの状態異常になってしまう。これは絶対に貰ってはいけない。

「ファストブロー!」

オレは迫る盾にファストブローを叩き込むことで相殺し、その勢いのまま大きく後方へと下がった。

しかし、なおもエグランティーヌは追いすがってくる。

エグランティーヌにしてみれば、『ラムパート』の効果時間内にオレを片付けたいのだろう。だが、オレの手札は打撃だけではない。

収納空間を展開すると、オレはファイアランスを発射する。

オレには溜め込んだ魔法がある。これをどう捌く?

「ディヴァインヴェール!」

『ディヴァインヴェール』をもう使えるのか!?

『ディヴァインヴェール』は、魔法攻撃に対する耐性と状態異常に対する耐性を一気上げるスキルだ。

さすが最優のギフトと呼ばれる【聖騎士】のギフトだ。いいスキルがそろってる。味方だと心強いのに、いざ倒そうとするとこれほど厄介だとはな。

「やあ!」

ファイアランスを正面から受けきったエグランティーヌの一撃を余裕を持って回避する。

まさかファイアランスを真正面から攻略するとは思わなかった。

「ヒール」

そして、オレが離れたのを確認したエグランティーヌは、ヒールを唱えて完全回復した。

あの耐久力にHP回復能力。厄介すぎる。

気が付けば、オレたちは円形闘技場の中央で睨み合っていた。

すべてが振出しに戻ったな。仕切り直しだ。

オレはエグランティーヌへと走る。おそらく、エグランティーヌの『ラムパート』の効果は切れているはずだ。再びエグランティーヌが『ラムパート』が使えるまでのリキャストタイム。ここを狙うしかない。

しかし、それはエグランティーヌも百も承知だろう。盾を構えて鉄壁の様子をみせている。

正直に言えば、エグランティーヌを倒す方法など無数にある。

『カット』で死なない程度に斬ってもいいし、『ショットガン』で一気に制圧してもいい。

だが、これほどの強者との試合は稀だ。どれだけオレの格闘術が通用するか見てみたい。

それに、こんな大衆の面前で自分の切り札を見せるのも考えものだしな。特に『カット』なんて初見殺し性能が高いんだから温存したい。

「せあ!」

「ッ!」

オレの右の拳は盾によって阻まれ、エグランティーヌの片手剣もオレの左拳に弾かれて決定打にはならない。状況は一進一退というよりも、千日手のような様相を見せ始めていた。

やはりエグランティーヌの防御は堅い。これを打ち崩すのは至難の業だ。

そろそろ『ディヴァインヴェール』の効果も切れただろう。これからは魔法込みでいく。

オレは拳の先に収納空間を展開し、エグランティーヌの懐へと潜り込む。渾身の右ストレートを放つが、当然のようにエグランティーヌの盾にブロックされた。

右の拳が空しく盾を殴る。

だが、オレはこの時を待っていた。

右の拳が盾を殴った瞬間、オレは拳の先に展開した収納空間からファイアボールを発動する。

「なッ!?」

エグランティーヌは魔法に対しても耐性を持っている。この程度の魔法で倒れるわけがない。

だが、予想外の威力に、まるでエグランティーヌの左手が万歳をするように大きく弾かれた。

チャンスだ!

「フィニッシュブロー!」

「ぐふっ!?」

オレは左の拳でスキルを発動し、エグランティーヌの鳩尾を穿つ!

その瞬間――――!

バチバチバチバチッ!!!

けたたましい雷鳴が円形闘技場に響き渡る。これはエヴプラクシアから収納したジャッジメントの魔法だ。

それを0距離で、回避する距離も時間も与えず発動する。

エグランティーヌは体をビクンビクン跳ねさせて、そしてついに倒れた。

制服の鳩尾部分に穴が開いちゃったし、白目剝いてるし、髪の毛もなんだかアフロのようになっているが、許してほしい。キミに確実に勝つにはこうするしかなった。

審判がオレとエグランティーヌの間に入り、エグランティーヌの状態を確認している。

「勝者、ジルベール・フォートレル男爵!」

審判がエグランティーヌの試合続行不可能を判断し、勝利者の名を叫んだ。

その瞬間、まるで円形闘技場が割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。耳が痛いくらいだ。

オレは右腕を振り上げることで歓声に応えると、拍手と歓声はさらに大きくなる。

今、オーケストラの指揮者のようにグッと手を握ったら、みんな静まり返るのかな?

そんなバカなことを考えていた。