軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

023 第十階層

ダンジョンの第十階層は、今までと同じように白い広々とした通路だった。違いを上げるとすれば、冒険者の姿が多いことだろうか。

なんでこんなに冒険者がいるんだ?

「そこのお二人さん、第十階層は初めてかい?」

「ああ、何か用か?」

なんだか猿顔の冒険者が馴れ馴れしく話しかけてきた。悪意はなさそうだが……。何の用だ?

「そんなに警戒すんなよ。俺たちはお前たちを手伝ってやろうと思ったんだ」

「手伝う?」

「ああ。第十階層のボスは強いからな。俺たちが倒してやろうかって話だ。ついでに道中のモンスターも倒してやるし、お前たちは安全に第十階層を攻略できる。お代はボスドロップ品と金貨二枚だ。悪い話じゃないだろ?」

「はぁー……」

オレは呆れて深い溜息が出てしまった。オレたちはダンジョンに来てるんだぞ? 観光に来てるんじゃない。ボスとの戦闘の代行なんて何で成立すると思ったんだ?

「必要ない」

「まぁ、待てよ。二人で攻略なんて絶対に無理だぜ? 俺たちに任せておけば、安全にブラックウッド級になれるんだぞ?」

「ブラックウッド?」

なんだそれ?

「おうよ! ブラックウッド級になれば、冒険者ギルドで受けられるクエストが一気に広がるんだ。なっといて損はねえぞ?」

ああ、冒険者ギルドの等級のことか。興味が無さすぎて存在を忘れていた。

でも、冒険者ギルドでクエストを受けるつもりも無いし、オレたちには必要ないものだな。

「オレたちには不要なものだ。行くぞ、ジゼル」

「はい、お兄さま」

「あ、おい!? 二人じゃ絶対に攻略できないぞ! 警告はしたからな! 死んでも恨むなよ!」

背後で叫ぶ猿顔の男を無視してオレたちはダンジョンを進んでいく。

しかし、あんな商売が成立するんだな。それが一番の驚きだ。それだけ冒険者証の階級を上げることに価値があるのだろうか?

まぁ、必要になったら上げればいいか。

「お兄さま、第十階層のボスはそんなに強いのですか……?」

アリスが心配そうにオレに尋ねてくる。

まぁ、あんな言い方されたら心配になっちゃうよなぁ。

「たしかに第五階層のボスより強いけど、そこまで強くないよ。出てくるモンスターはハイオーク二体とオークジェネラル一体だし」

「お兄さまは本当にダンジョンに詳しいですね」

「ま、まあね……。事前に調べておいたんだ」

さすがに前世で攻略したなんて言っても信じてくれないよなぁ。

「ダブルブロー!」

ハイオークの腹に一発。下がった顎に一発。高速のワンツーを繰り出す。ダブルブローは体術のスキルだ。MPを消費するだけあってその威力は高い。タスラムの追加魔法攻撃も発動した四連撃。ハイオークに断末魔をあげる暇さえ与えず昇天させる。

残り二体のオークも既にアリスの発火ポーションによって燃え上がっており、倒れるのも時間の問題だろう。

「いくらオークも棍棒持ってるからって、ドロップアイテムまで棍棒というのはどうなんだ?」

そんなことを呟きながら、オレはドロップした棍棒を蹴飛ばした。こんなの持って帰っても大した額にはならないからね。

他にもオークはオークの睾丸をドロップするが、これは錬金術の素材になるので収納空間に収納していく。

燃え盛っていた二体のオークがボフンッと白い煙となって消えた。

「おつかれさま、ジゼル」

「お兄さまもおつかれさまです」

「そろそろボス部屋だけど覚悟はいいかい?」

「……はい!」

「ジゼルが勇気ある女の子でよかったよ」

「あ、あの……」

「うん?」

アリスが近くに寄ってきて、オレの耳元で囁く。

「他の人が居ない時は、アリスって呼んでください」

「わ、わかった……」

なんだ今の!? なんだか耳がゾワゾワして、背筋に電流が走ったような……!?

とりあえず、アリスに耳元で囁かれるのは危険だ!

オレはなんでもない風を装ってアリスの頭を撫でてアリスとの距離を取った。

「? お兄さま、耳が真っ赤……?」

「え!?」

その時、アリスはまるでいたずらでも思い付いたような猫のような表情をしていた。

「じゃあ、行くよ」

「はい……!」

たどり着いた第十階層のボス部屋。その大きな両開きの扉を開ける。

中には予想通り三体の人影があった。二メートルを超える筋肉質な巨漢のような姿。ハイオークだ。そして、二体のハイオークの後ろには、大きなバルディッシュのような両刃の斧を持った二足歩行のブタのような人影があった。鎧を着込んだその姿は、オークジェネラルのものだ。

まずはハイオークを片付けてしまおう。

「「「GAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」」」

オレが収納空間を二つ展開すると、オークたちが威嚇するように吠えた。

オレはそんなことには構わずに自分の為すべきことを為す。

「ショットガン!」

ダォンッ!!!

何重にも圧縮された風切り音がボス部屋に響き渡った。