軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

022 アリスの成長

「さて、設置しちゃおうか」

「あの、勝手に部屋を使ってもいいのですか……?」

「平気平気。部屋なんて余ってるくらいだから」

フレデリクはオレに借りがあるからな。これくらい大丈夫だろう。部屋が余ってるのは本当だし。

オレとアリスはアリスの部屋の隣の部屋を錬金術用の部屋に大改造した。通りがかったメイドや執事にも手伝ってもらった。

たぶん彼らから報告を聞いているだろう。なのにフレデリクから文句はなかった。オレの予想通り黙認のようだな。

「じゃあ、さっそくやってみよっか」

「はい!」

アリスが元気よく返事をする。やる気があるね。いいね。

一緒に買ってきた錬金術の指南書を開いて、アリスが乳鉢で薬草をゴリゴリやっている。

そうしてできたのが下級ポーションだ。できた下級ポーションは樽に溜めていく。樽は練兵場に置いておけば勝手に使ってくれるだろう。

五回目の下級ポーションの完成の時だった。

「なんだか寒くなってきました……」

アリスが震える唇で呟く。

「今日はこれまでにしようか」

「え? もうですか?」

「魔力を使い過ぎると体が寒くなって、それでも使い続けると倒れてしまうんだ。体が寒くなったらやめた方がいい。時間を置いたらまたやるといいよ」

「はい……」

アリスが乳鉢を見ながら頷く。

まだやりたそうだけど、倒れた方がMP効率が悪い。適度に休憩しつつ、錬金術をした方が効率がいいのだ。そして、オレは抜かりなく休憩中にできることを探していた。

「アリス、休憩中にこれを投げるといいよ」

「これは……?」

アリスが両手に乗せた石をしげしげと眺めている。

「それはただの石だよ。これをあの的目掛けて投げるんだ」

「投げるのですか?」

アリスがコテンと首をかしげた。そんな姿がかわいらしい。

「錬金術師は、主にポーションとかアイテムを投げて攻撃するんだ。だから、敵に向けてちゃんと命中させないといけない」

「なるほど……」

アリスが石を握って的に向かい合う。的との距離はだいたい五メートルくらいかな。

「えいっ!」

「…………」

アリスの投げた石は、的から一メートルほど離れた所に当たった。それほどノーコンというわけでもないし、間違っても上手いわけじゃない。コメントに困る微妙なところだ。

「練習あるのみだね。まだ石はあるからがんばって。魔力が回復するまで練習しようか」

「はい……」

その日からアリスの錬金術師生活は始まった。最初は下級ポーションしか作れなかったけど、日が経つにつれて、他にも作れるものが増えたようだ。

ちなみに下級ポーションを練兵場に持っていったところ、大歓迎された。そのこともアリスのやる気につながっているみたいだ。

アリスを連れてのダンジョン攻略も順調だ。

アリスもいるのでまた第一階層からの攻略だったけど、オレは前世で何度もダンジョンに潜っているのでまったく苦ではない。それよりもアリスの成長の方が素直に嬉しい。

『レジェンド・ヒーロー』は、戦闘中なにもしなかったキャラクターにもちゃんと経験値が平等に入る仕様だった。この世界でもそれは同じようで、ちゃんとアリスにも経験値は入っていた。

正確なレベルはわからないけど、錬金術をおこなえる回数が増えたと言っていたから、たぶん順調にレベルアップしているのだろう。

「せあっ!」

オレの拳がオークの顔面を捉えた。タスラムの追加魔法攻撃の効果も発動し、オークを一気に白い煙へと変えた。

「えいっ!」

背後からアリスの声が聞こえると同時に、オレに向かってきていたオークが炎に包まれる。アリスの発火ポーションだ。まぁ、早い話が火炎瓶だね。

アリスの投擲スキルもかなり上達していた。今ならば静止目標なら百発百中だろう。やはりスキルが上がると全然違うな。

「Ugaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」

オレは燃え盛って混乱しているオークを無視して別のオークに襲い掛かった。

オークの遅い棍棒を軽々と避けて、オークの腹にファストブローを叩き込んだ。

オークの腹に風穴が開くようにオークはボフンッと白い煙となった。

その頃には燃え盛っていたオークもボフンッと白い煙になる。

これでオークを全滅させたな。

「ジゼル、ナイスだった」

「お兄さまもすごいですね。瞬く間にオークを二体も倒してしまいました」

オレとアリスは、正体がバレるのを避けるために冒険者として活動する時はお互いの呼び方を変えていた。アリスはジゼルでオレはお兄さまだ。アリスにお兄さまと呼ばれるのは悪い気はしない。むしろ新たな扉が開いてしまいそうなほどだ。

「次はいよいよ第十階層だな」

「お兄さまも初めての階層ですね」

アリスが「わたくしもがんばるぞ!」と言わんばかりにギュッと両手を握っている。そんなアリスがとても愛おしくてかわいらしい。

「オレたちなら楽勝さ。油断せずに行こう」

「お兄さま……」

オレはアリスのフード越しに頭を撫でると、アリスと一緒に第十階層へと降りていくのだった。