軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

020 アリスのギフトと秘密

「よかったら着けてみてくれないか?」

「は、はい……」

アリスは恥ずかしそうに髪をまとめ始めた。

「やっぱりアリスの長い髪は綺麗だよ」

「ありがとうございますぅ……」

アリスって髪を褒められたことがないのかな? なんだかものすごく恥ずかしそうなんだけど? 顔は真っ赤だし、目には涙さえ浮かんでいた。

「あまり、見ないでくださぃ……」

「あ、ああ……」

ただ髪を弄っているだけなのに、アリスの姿が年齢以上に色っぽく見えた。

「あの、どうでしょう?」

アリスがこちらに背を向けたまま訊いてくる。

「ふむ」

たしかに銀髪のアリスには銀の髪飾りはあまり目立たないな。

「あまり目立たないね」

「やっぱり……」

「でも、あまり目立ちたくない時とか、普段使いにいいんじゃないか?」

「でも、せっかく贈ってくださったものですし……。その、初めて……」

そっか。オレにとっては装備を譲るような認識が強かったけど、これはオレが初めて婚約者に贈った贈り物になるのか。

やっちまったな……。

もっと、アリスのことを考えてもっといい贈り物をするべきだった。

断じて拾い物で済ませるようなイベントじゃないだろ……。オレのバカ。

「そういえば、だけどさ」

オレは気まずくなって話題を変えることにした。後でちゃんとアリスのことを考えて贈り物を贈りなおそう。そう心に決めながら。

「アリスのギフトって何なんだ?」

「ギフト、ですか?」

「ああ。よかったらでいいんだけど、教えてくれないか?」

「あの……」

アリスは申し訳なそうな顔で呟くように小声で口を動かした。

「え?」

「ですから、【錬金術師】、です……。ごめんなさい……」

「いいじゃん【錬金術師】!」

「え……?」

アリスは不思議そうな顔でオレを見ていた。なんでだろう?

【錬金術師】は、生産スキルである錬金術にボーナスを得るギフトだ。それに、【錬金術師】専用の戦闘スキルもある。生産だけではなく、戦闘でも役立つギフトだ。なにも恥じる必要は無い。

「じゃあ、早いうちから錬金術を始めた方がいいな。用意しておくよ」

「え? あの……? 【錬金術師】って役立たずなんじゃ……?」

【錬金術師】が役立たず?

そんなわけがない。

そりゃ育てるまでは資金がかさむけど……。ああ、そうか。エロー男爵家ではその資金が用意できなかったのか。だからアリスは役立たずと蔑まれてきた。

本当にロクなことをしないな、エロー男爵家。ぶっ潰してやりたいよ。

「そんなことないよ。【錬金術師】ってかなり強いんだ」

「【錬金術師】が強い……?」

「まぁ、最初は薬の調合とかして錬金術のスキルを育てないといけないから地味だけどね。大器晩成型かな。そうだ! アリス、明日は一緒に買い物に行こう!」

「買い物、ですか? でもわたくし、お金は……」

「大丈夫、大丈夫。嫌味じゃないけど、ムノー侯爵家は裕福だからね。この際だ、アリスのアトリエを作ってしまおう!」

「えぇー!? ほ、本当にいいんです、か……?」

「アリスのギフトならすぐに成長するさ。楽しみだなぁ」

アリスなら、一緒にダンジョンに潜っても秘密を守ってくれるんじゃないか?

オレもいつまでもソロで潜るわけにはいかないからな。二人というのも心配だが、ソロよりマシだろう。

それに、アリスがダンジョンに潜れば、一緒にアリスの強化と成長も期待できて一石二鳥だ。アリスも自分が強くなれば、卑屈な性格も治るかもしれない。

いいことしかないね!

「アリス、アリスは秘密を守れるかい?」

「ひみつ……?」

「そう、二人だけの秘密だ」

「それって……ッ!?」

なぜかアリスは驚いた後、顔を真っ赤にしていく。なんでだろう?

オレは誰の耳にも漏れないようにアリスに顔を近づけて、アリスの耳元で囁く。

「アリスは二人だけの秘密を守れる?」

「…………ッ!」

アリスは迷う気配を見せたけど、最終的には頷いてくれた。アリスはそのまま目を閉じて、まるでなにか待つようにジッとしていた。

「じゃあ、明日ね」

「え……?」

「明日を楽しみにしてるよ」

「は、はぃ……」

静かにわたくしの部屋のドアが閉まる。ジルベール様はわたくしに散々期待させておいてそのまま出ていってしまいました。

だって、二人だけの秘密って……。

「ぁ~~~~…………」

わたくしは急に恥ずかしくなってベッドに飛び込んでしまいました。はしたないことだとはわかっています。でも、恥ずかしくてたまらなくて、我慢ができませんでした。

ベッドはわたくしの体を優しく受け止めてくれます。実家のエロー男爵家の屋根裏部屋のベッドとは大違いです。

「わたくし、頷いちゃったんだ……」

ベッドでゴロゴロと転がった後、わたくしはポツリと呟きます。

「二人だけの秘密……」

その内容はわかりません。でも、たぶん大人には言えないようなえっちなことだと思います。

「明日……」

わたくしは無意識に唇を人差し指で触っていました。