軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

019 アリスのいる生活

「おはよう、アリス」

「おは、ようございます」

アリスがムノー侯爵家で暮らすことになって、オレの生活は劇的に変わった。今まではたまにしか会えなかったけど、これからは毎日会える。

まだちょっとぎこちないけど、アリスも笑顔が増えたような気がする。今もオレに笑顔を向けている。アリスのような美少女に笑いかけられるとか、ちょっとドキドキするね。

「よく眠れたかな? 誰かにいじめられてない?」

「大丈夫、です」

「それはよかった」

この間のオレとアンベールの試合の噂は、屋敷はもちろんのこと街中を飛び交った/駆け巡った。

それによって、今まで最後まで侮った態度だったメイドや執事たちも手のひらを反すように態度を改めていた。オレがまた次期当主になるのではないかという噂が蔓延しているからだ。

そんなオレの婚約者であるアリスも丁重に扱われているようだ。

「一緒に朝食を取ろうか。行こう」

「は、はい」

オレはアリスの手を取ると食堂に向けて歩き出すのだった。

もちろんアリスが家に来ても日課は続けていた。午前中はランニングとマチューとの稽古。そして、午後はもちろんダンジョンだ。

「せあっ!」

オレのタスラムを握った左拳が、オークの胸を穿つ。タスラムの追加攻撃も発動し、オークがボフンッと白い煙となって消える。

「ふむ……」

第九階層のモンスターも問題なく倒せるな。メタルスライムを倒して大量の経験値を取得したオレには少し物足りないくらいだ。

「ソロでも意外となんとかなるものだな」

たまに会う冒険者パーティにはビックリされるが、まだまだソロでも全然いける。

オレはそのままダンジョンの白い通路を進むと、行き止まりにたどり着いた。どうやらハズレだったらしい。

オレは前世で何度もオレールの街のダンジョンに挑戦した。各階層に出現するモンスターやレアポップモンスターも唱えられるほどだ。

だが、さすがに迷路のようなダンジョンのすべての経路を把握していない。

だから、こうやってハズレの行き止まりを引くわけだが……。今回はラッキーだったようだ。

「宝箱じゃん。初めて見た」

行き止まりにポツンと置かれていたのは、木でできたこれぞ正に宝箱といった宝箱だった。

『レジェンド・ヒーロー』のゲームでは低層の宝箱はこんな感じだったな。『レジェンド・ヒーロー』のダンジョンでは、ランダムポップで宝箱が出現する。その中身もランダムだった。

「中身は何だろうな?」

そう言いながら、オレは大きな宝箱を開けた。中に入っていたのは、銀の髪飾りだった。

「たしか効果はMP+10だっけか?」

MPの最大値が増えるのは魅力的だが、オレが付けるのもなぁ……。

アリスにプレゼントしたら喜んでくれるだろうか?

「そういえば、アリスのギフトって何だろう?」

聞いてなかったなぁ。まぁ、ギフトなんて人に言いふらすようなものではないけどさ。オレならば、アリスがどんなギフトでも成長のために助言をしてやれることができるんじゃないか?

「帰ったら早めにアリスに訊こう」

オレは心のメモに記すと、銀の髪飾りを収納空間に収納して、ダンジョンを奥へと進むのだった。

その後、オレは無事にダンジョンの第九階層をクリアすると、屋敷に帰ってきた。

「ジルベール……!」

玄関を開けると、アンベールたちご一行がいた。きっと今まで練兵場で剣技の練習でもしていたのだろう。嫌なタイミングで会ってしまったなぁ……。

「こんな時間まで遊び歩いていたのですか? 余裕ですねぇ?」

無視して歩き出そうとしたら、アンベールから声がかけられた。その声には山盛りの怨嗟が乗っていた。ねっとりしている。

嫌なら無視すればいいのに……。

「そういうアンベールは今まで剣の練習か? すごいな」

「あなたがそれを言いますか。嫌味ですね」

「そんなつもりはない」

「調子に乗りやがって! 今に見ていろ! 絶対に殺してやる! 八つ裂きだ!」

会話が成立しないんだが……。

「はぁ……」

オレは溜息を吐くと、その場を後にした。背後でアンベールがなにか叫んでいたが、もうどうでもいい。

「これを、わたくしに……?」

アリスの部屋。まだ個性がない殺風景な部屋の中、オレは善は急げとばかりにアリスに銀の髪飾りを贈っていた。

「ああ。少しMPが増える装備だし、アリスにいいんじゃないかと思って」

「MP?」

アリスは首をかしげながらも銀の髪飾りを受け取ってくれた。

でも、すぐにその顔を悲しげなものに変えてしまう。

「その、ありがとうございます。でも、わたくしには……。髪がおばあちゃんみたいだから……」

髪がおばあちゃんみたい? アリスの髪が銀髪だからそんなことを言うのかな?

「オレはアリスの髪は綺麗だと思うよ」

「うそ……」

「嘘じゃない」

オレはアリスの髪を一房手に取ると、軽くキスをする。

「ッ!?」

「ね? 嘘じゃない」

アリスは顔を赤く染めてコクコクと頷いていた。アリスは色素が薄いから赤くなるとすぐにわかるな。