軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第49話:最高の目覚め

一度か二度、明け方から朝にかけて目が覚めかけたような気がしましたが、はっきりと目が覚めた時には部屋は明るくなっていました。

知らない天井です。

ああ、そうですわ、昨日、こちらに越してきたのでした。

使用人がカーテンを開けてくれたのでしょう。布団からもぞもぞと頭を出してそちらを見れば、爽やかな朝の光が部屋に差し込んでいるのがわかります。

左手は、少し角張った柔らかいものに包まれています。

わたくしが左手を動かすと、きゅ、と手が握られました。

「起きたのかい?」

レクシーの声。

そちらを見るとベッドの中で身を起こし、こちらを覗き込む彼の姿がありました。

彼は左手に実験のレポートであろう書類を持ち、右手はわたくしの手を握ってくれています。

わたくしが目を覚ますのを待ってくれていたのでしょう。

「おはようございます、レクシー」

「おはよう、ミーナ」

ふふ、と笑みが浮かびます。

「寝る前と服装が違うとはお洒落さんですわね」

ぐふ、と妙な声を出して咳き込まれます。

わたくしが身を起こそうとすると、レクシーは握った手を引いてくれました。

彼はベッド脇のサイドテーブルに手にしていた書類を置き、こちらに茶色の視線を向けます。

「ミーナ」

「はい」

「今はこれくらいで許してくれ」

レクシーの両手がわたくしの肩の上へ。彼の顔が近づき、わたくしの顔の横へと動きます。

柔らかいものが頬に当たって、そして少しして離れました。

「じゃ、じゃあ着替えて下の食堂に行くから」

顔を赤らめた彼はそう言って立ち上がると、書類を持ってそそくさと隣の部屋へと向かいました。

壁際に控えていた侍女のヒルッカが恭しくレクシーに頭を下げて見送ります。

バタン、と扉が閉まりました。

————!!??

わたくしが硬直しているとヒルッカが近づいてきて言いました。

「おはようございますヴィルヘルミーナ様」

「れれれレクシーが! レクシーから!」

「ふふ、ヴィルヘルミーナ様。良かったですわね」

「ああ、いけないわ、わたくし死んでしまうかもしれなくてよ!」

…………

わたくしと使用人たちが興奮にきゃあきゃあ言いながら召し替えをして食堂へと向かうとベストに白シャツ、トラウザーズ姿のレクシーが既に座っています。

服も新しくなってちょっとした貴族子弟や資本家に見えますわ!

「おおお、おはようございますレクシー」

「ん、んん。ミーナおはよう」

互いに顔を赤くして妙な緊張感があります。

なんとなく沈黙したまま食事が並ぶのを待ちます。

朝食はエッグ・ベネディクト。ナイフを入れるとすっと抵抗なく切れるそれは子供の頃からわたくしの好物だったものです。そう、料理人もペリクネン家から数人呼べましたからね。

「昨日の夜も思ったけど美味しいな」

「公爵家の時ほど華美な装飾はしていませんし、決して高級食材を使っている訳ではありませんけど、料理長の腕は確かですわ。彼も喜びましょう」

食事を終え、食後に季節の果物を食べつつ相談です。

「さて、来週から王都で4ヶ所の『魔力鑑定所』を開く訳だが、1ヶ所につき3台の魔力結晶化装置、ミーナ12号の用意と3台の予備、そして君専用のものの16台は完成している」

レクシーが言います。相談というより悪だくみ、かもしれませんわね。

「ええ、ありがとう存じますわ」

「それと金細工士に外装だけ発注したもの……13号ではないな、12号改とでも言おうか。今日2つとも完成したとの手紙が来ていたようだ」

控えていたタルヴォが一歩前に出ます。

「早速、使用人を派遣して引き取りに向かいます」

「ええ、よろしく」

「戻ってきたら内部構造を俺の手で嵌め込んで動作確認をしよう。それで2台の12号改が完成する予定だ。後は一応自分の実験用のがあるから全19台か。君が必要な数に届いたか?」

わたくしは笑みを浮かべます。

「はい! またいずれ増産は必要かと思いますが、今はこれで十分ですわ」

できれば増産の時には工場を作ってレクシーの手を煩わせないようにしたいものですが、どうなるでしょうか。

「じゃあこれで俺は魔素集積装置の方の研究に進んで良いかな?」

「はい、よろしくお願いいたしますわ。お待たせして申し訳ありません」

昨日も設計図を見ていましたものね。研究者であるレクシーとしては本当はもっとはやくこちらに取り掛かりたかったでしょうが、お待たせしてしまいましたもの。

「いや、大丈夫だ。それで、12号改は何用なんだ?」

「ふふふ、これでちょっと貴族に伝手を広げていきますの」

レクシーは首を捻ります。

「なんだ、贈答する……?」

「それも選択肢としてはあり得ましょうが、金の卵を産むガチョウを渡せませんわ」

「そうだよなぁ」

レクシーの発明を誰かに渡すような真似は致しませんもの。贈答の駒としてはもちろん強力ですが、それではわたくしたちの利になっても王家へ届く牙にはなりませんから。贈り物は上にいくので。

「わたくし、明日からはそれを持って社交に勤しみますわね」