軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第40話:魔石増産計画

「魔石の生産量を倍にしろとは軽く言ってくれるものだ。どうしようか」

「そうですわね……」

一番簡単なのは、今二日に一度わたくしが作っている魔石を毎日生産することですが、求められているのはそういうことではありません。

また、魔素集積装置の方をレクシーに開発してもらうことで安定供給を図るのが最終的な目標ですが、現状行うべきはそれまでの繋ぎです。

「なるほど」

わたくしはレクシーに説明していき、彼も頷きます。

生産量を倍増、あるいはさらに増やすこと、それだけを考えるなら極めて容易なのです。

わたくしと同等の魔力量を有する者を雇えば良い。

ただし、それは王宮魔術師や高位の冒険者などであり、仮に雇おうとすれば多額の報酬が必要となるでしょう。

それよりも魔力量が少ない者を多く雇う。ですが人数が増えればわたくしたちのやっていることも露見しやすくなる。

そのあたりを考えるのが難しいところですわね。

「レクシー、まずあなたに頼みたいのはミーナ12号の増産です。これは現在あなたにしかできないことですから」

「ああ、そうだな。任せてくれ」

「わたくしは計画のために人員と土地を確保していきましょう」

………………

一月後。

王都の南部。わたくしたちの家よりは少し豊かで、中心地のように屋敷や高級店が立ち並ぶ程ではない、下町と言っても良い一角。

その商業区画の片隅にある一軒の店が賑わっています。

並んでいるのは老いも若きも、それこそ小さな子供まで。男性も女性もです。

あまりの賑わいに、商業区画の外れでありながら近くに露店までできるほど。

店、というのは相応しくないかもしれません。そこでは何も売買をしてはいないのですから。

人々が並ぶ建物の看板に書かれている文字は『A&V簡易魔力量鑑定所』。そして店頭にたなびく幟には『無料』や『あなたの魔力量おはかりします!』といった文字。

わたくしが店の裏手、従業員用の出入り口から中へと入ると、カウンターにはメイド服をベースにした制服姿の女性たちが並びます。

かつてペリクネン家でわたくし付きであった侍女やメイドたちをこちらで受付嬢として雇用したのです。

そんなメイドの一人が、列の先頭に立つ少年に向けて声をかけました。

「先頭の方どうぞ。こんにちは、こちらははじめてですか?」

「は、はい。はじめてです!」

少年はあまり綺麗な身なりをしているという訳ではありません。貧民街に近いところからやってきたのでしょう。受付の綺麗な身なりをした女性に気後れした様子です。おずおずと前に出てきました。

「お名前と年齢、性別、ご住所をお願いします」

「えっと、住所とかも必要なんですか?」

「はい。あなたが素晴らしい魔力量を持っていたのであれば、魔術塔や学院から手紙が送られることもありますので。もし決まった住居がないのであれば、どの辺りにいけば連絡できるか伝えていただいても構いませんよ」

「家はあります。ハマス・ウィラー、13歳、男で、南部八区のなめし革通り12番地です」

なるほど革製品の工場は水を汚すので王都の下流側、あまり環境の良いとは言えない場所です。ですので言うのを躊躇したのでしょう。

「はい、ありがとうございます。書類を作成する間に左手の水道で手を洗って待っていてくださいね」

水場に今日は護衛のヤーコブが立っています。そこで手を洗わせている間に受付の彼女は書類と厚紙の小さなカードにペンを走らせ、それぞれに氏名、性別、年齢、住所を記載していきます。

そして隣の受付へと渡し、列に向かって声をかけました。

「次の方どうぞ!」

手を洗ったハマス少年は隣のカウンターへ。別の受付がにこやかに声をかけます。

「ハマス・ウィラーさんですね」

「はい!」

「こちらの魔力測定器の取手を握ってください。力は込めなくて大丈夫です」

彼女の前には大きな箱、そこについている取手を持たせます。

「ゆっくりと息を吸って、吐いて。人の体の中には必ず魔力があります。それをお腹の中から押し出すように取手から箱の中へ……はい、結構です」

箱の下につけられたフラスコから微かな音が鳴りました。

彼女はフラスコを取り外し、それをカウンターの裏の部屋へと持っていきます。

奥で待機している人員がそれを測定するのです。

「0.2カラット。色は緑が強め、風属性」

そう、魔力測定器とは名ばかりで、ここにあるのは魔素結晶化装置。つまりミーナ12号です。

できる魔石の大きさと色から逆算して保有魔力量と属性を調べられるのです。

「ハマスさんには魔力が確認されました。ランクはC+、属性は風です」

「魔力あるの!?」

ハマス少年は驚いた様子。

「おめでとうございます。多くの人は魔術を使えるほどではなくとも多少の魔力を有しますが、ハマスさんは少し多めです。ちゃんと勉強すれば生活魔術が、風属性ですと〈送風〉の術式などが使えるようになる可能性があります」

「ふえー」

受付嬢の隣に座る職員がカードにC+と風属性の刻印をうち、それは受付嬢からハマス少年の手へ。

「こちらがハマスさんの測定結果を示すカードで、こちらは差し上げます。

表には先ほど伺ったお名前や住所などが書かれていますね。

裏面が今日の日付と測定結果です。C+、風属性と記されています。次回測定時にはこちらを必ずお持ちください」

「何度来ても良いんですか?」

「はい、A&V簡易魔力量鑑定所では 複数回(・・・) 測定することを推奨しています。これは魔力は体調によっても強さが変わりますし、魔力も成長することがあるためです。

ただし、測定の間は一週間以上間を空けて下さい」

「わかりました。また来ます」

「記念に飴玉を配っております、こちらもどうぞ」

「やった!」

カードと飴玉を手にしてハマス少年は満面の笑みで測定所を後にしました。

そしてわたくしたちのもとには魔石が残るのです。