軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

95.迷える風鈴職人

「ずいぶんと熱心に読むんだな」

そろそろ時間なので借りていた本も読み終わったことだし、と本の返却手続きをしようとすると、オルロが言う。

「本は好きなので」

実際、アンジェリーナさん目的でアランブレには通っているが、本を読むこと自体は面白い。この世界の物語がきちんと綴られているのだ。

本、どうやって準備しているんだろうな。恐ろしい量があるぞ。AIか。AI怖い。

まあでもそのくらいしないと準備しきれんだろうなぁ。

攻略の手がかりになるような物は実際人が手を入れてるかもしれないが。

こういったゲームの準備はどうなされるのか、俺はその業界に詳しくない。

どれだけの人数が関わったかは知らないが、一大事業として注目されているのは知っている。

本は挿絵が多い。手に取った厚さと文章量が比例していないなと思うことも多い。

それでも俺がどれを読むかなんてわからないから、これらすべてに中身はあるのだろう。

「興味がどうしてもあちこち行くので本だけ読んで暮らすってのは難しいんですが、待ち合わせの合間に読めるのはいいなって思ってます」

アランブレ以外でね!

「ふうん……ファンルーアにも行ったと聞いた」

「あ、やっぱり横の繋がりとかあるんですね。この間お邪魔しました」

「うちはあそこみたいに朝まで開いてるなんてことはないが、夜中近くまではやってるよ」

「また利用させてもらいます」

IDカードをチェック。そして何やらメダルのついたチェーンネックレスを渡された。

「何か困ったことがあったら貸本屋に行け。手を貸してくれることもあるだろう」

おおん?

メダルの名前が、『本好きの証』とある。え、お仲間発見記念? はっ!! アンジェリーナさんも持ってるヤツじゃね!? おっそろい!!!

「ありがとうございます? 俺にできることがあったら言ってくださいねー。この間アンジェリーナさんに本頼まれたときみたいに、お遣いくらいならやりますよ」

「ああ、本の配達依頼は、するかもしれねえな」

俺はメダルを首にかけ、本屋を後にする。

これは、絶対第4都市にもあるやつだ。貸本屋、絶対絶対ある! だけどな~結構とんでもないところにあるんだよ。商店街にはないやつなんだよなー。

と、そんなことを考えながら合流だ。

ログアウトするとパーティーは自動解除されるので、再び柚子から渡されたパーティー、『酒盛り』。

俺そこまで酒飲むことはないんですけどね。

『よし、せっちゃん、兄さんのところに行くぞっ!』

『ついでに普通の風鈴も作ってくれないかなぁ~』

ガラス工房に入ると、兄弟子は前回と同じように部屋の隅の椅子に座っていた。背中にしょんぼりを背負っているのも変わっていない。

「兄さん! ケイシャ持ってきたのじゃ!」

「柚子……お前、本当に……」

受け取ったケイシャを握りしめる手がぷるぷると震えている。

「お前たちの熱い想い受け取ったぜっ!!」

突然ぶち上がる兄弟子。

「兄さん! 炉は空いてるのじゃ! ここは一発、今の兄さんの最高傑作見せてくれなのじゃ!」

「よおおし、やるぞおぉぉぉ!!」

『せっちゃん、普通に一時間コースなのじゃよ。別に余所に行っても平気じゃよ?』

『柚子さんは?』

『私はこれ、生産職がガラス工選択だから、見てるとスキルを盗めるのじゃよ』

『ほおおお~っていうか選択とかあるのか』

『あー、せっちゃんは生産施設で触りやってないから出て来ないんじゃ。みんな最初生産施設で初期スキル出して、そこから育てて行くんじゃよ~。一番最初を出しておけば、日常生活の中で突然スキルが湧いたりする。まさかの、戦闘中にポーション瓶を相手に投げつけて割って回復させるところから、【ガラス破壊】が出てきたりな。何も今のところやる気がなくても、最初だけやっておくのは悪くないと思うぞ?』

『本屋さんになれるならいくらでも』

『無理じゃぁ……』

生産職かぁ。生産施設行くと本読む時間減りそうだしなぁ。

まあ、後学のために俺もガラス作り見ることにした。まずケイシャをガラスにするところかららしい。他の作業をしていた工場仲間も周りを取り囲んで見ている。

『まあ、ファンタジーの世界じゃから、実際のガラス作りとは違うところがたくさんある。だいたい、こんな小さな炉で大量のガラスを作るなんて出来るはずがないしな』

ただ、暑さはある程度再現されているようだ。

『ちょっとローブ脱いでいいですか?』

『裸はNGじゃけど、薄着になっておいた方がいいぞ~』

とにかく暑い!!

でもなんか溶かしたガラスを管の先に付けて吹き出したぞ~。進んでる。あっという間に先を行く。

吹きガラス、面白いなぁ。

基本的な行程は辿るらしいが、陶芸などの釜で焼く時間などは短縮したりするスキルも出るという。

そこをじっくり待つというタイプもいたり様々だそうだ。

『兄さんは短縮スキル山盛り持ってるからな。突然絵を書き終わってたりもする』

風鈴は、表面に傷を付けて模様を描き、さらに絵付けをするそうだ。

ガラスの冷える時間を短縮するスキルも使っていた。

そして俺に【暑さ耐性】が生えました。

本来火山とかに行って得るものなんだろうが、面白い。

「で、できたっ!!」

風鈴はシンプルな物。

ただ、途中冷える前に付けた模様と絵付けで入れた色がとても綺麗だった。

糸を通し、中央にすごく細いガラスの管が3本通っている。風鈴本体はよく見る丸いタイプだ。

風で揺れるほど、細い管が縁に当たる。涼やかな音色が響いた。

おお、と周りのガラス工たちが声を漏らす。

とても綺麗な音色だ。

本人も満足そうだった。

「模様も素敵じゃが、音がとってもいいのじゃ-!」

今までとの違いがわからない俺は余計なことを言わずにうんうん頷いておいた。

「今までで一番の出来だ……」

本人も感動している。よかった、のかな?

「柚子、セツナさん、本当にありがとう。なんだか吹っ切れた」

「よい物だから、売れるんですよ」

だから俺に風鈴を作ってくださぁい……。

《クエスト:迷える風鈴職人 をクリアしました》

「よかったらこいつをもらってくれ」

と、風鈴をいただく。鳥の絵がついていた。

《鸞の風鈴を手に入れました》

『なんぞたいそうな物をもらったな』

『えー、これ特別っぽいし、これでクエストクリアしたくないんだけど……』

と思ったら、店舗で風鈴が売られ始めた。お値段1万シェル。結構するなぁ……。

まあこっちはアンジェリーナさんのお土産にして、買ったやつをおつかい品にしよう。

可愛い蝶柄の物を買った。