軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

94.一番幸運が高いのは

1×1のゾロ目連続とか、いったいどんな確率なのか。

「せっちゃん……恐ろしい子! 【フロストダイス】」

柚子が【アイスアロー】の詠唱を完了する間時間を稼ぐはずの【フロストダイス】。

しかし、今日は1に好かれているようだ。1×3や1×2が続出。

確率とはっ!!!

幸運初期値はこのスキルにはマイナス足かせ状態だった。

『マイナス補正が入っているようじゃな』

まあそうでなければおかしい。

【アイスアロー】はレベルに応じて矢の数が増えるらしく、同時に詠唱時間も延びるようだ。詠唱速度に関わる器用さの数値は、生産職のためにかなり振っているそうで、柚子の詠唱は遅くない。

それでも、凍結1秒ではさすがに終わるわけがなかった。

『幸運と知力2極という恐ろしいステータスの強者がいるらしいが、【フロストダイス】からのすべてクリティカルな【アイスアロー】は、かなりの高火力じゃろうな。狩り場と活躍の場はかなり限られるが』

氷特化場か。

『まあとにかく気にせずせっちゃんよろじゃ!』

『おう!』

ぎょろちゃんとヒビキはわりと仲良く併走している。ヒビキは段々と地上に近づき、ジャンプをしなければならない。

途中からまさかの、ヒビキがぎょろちゃんを足場にしだした。

一瞬ぐっと沈み込むのだが、ぎょろちゃんは耐えて、ヒビキはまた滑空する。

『うちの子が申し訳ないのじゃ』

『いや、俺たちが言ったわけじゃないし、ぎょろちゃんも嫌がってる感じじゃないんだよなぁ。お互い上手く補い合ってるならいいことかな?』

どうもぎょろちゃんから足下に滑り込んで行っているように思えるんだよね。

ヒビキもむちゃくちゃ踏むようなことなく、後ろの方に乗ってる俺を踏まないよう、背中の少し前寄りを軽く蹴っている感じ。

連携のようなものも見えるし、騎獣可愛い。誘ってくれたヴァージルに感謝だなぁ。

『あ、柚子さん。次のが来た。斜め右』

『せっちゃんよろしくじゃ』

出して5分経っていないフロストダイス。5分経つと溶けちゃう。それを手の平の上で転がしてると、サンドワームが砂の中から突き出るように現れた。俺たちは左右に散開する。

『よーしいくよっ』

握りしめて振りかぶろうとしたとき、手のひらをべろりんとやられた。

『ぎょろちゃん!?』

そして振りかぶるぎょろちゃんの舌。

その先にあった氷のサイコロが飛んでいく。

紫の星のエフェクト。

空に浮かび上がる5×4の文字。

『ぎょろちゃん!? 20秒すごっ!!』

柚子の【アイスアロー】は9.75秒詠唱らしい。

2回打てちゃうじゃん。しかもクールタイムなし。

石の消費もなく、無傷でサンドワームを始末した。

『ぎょろちゃんすごいのじゃっ!』

『ちょっと次もぎょろちゃんに投げてもらおうかなぁ』

それが正解だった。

ぎょろちゃん、最低でも4を出す。つまり4×4=16が一番低い数値なのだ。そうなると、俺がヘイト用石を使う個数も減る。なんなら、凍結を、俺が石で割ればヘイトはこちらに向かうのだ。

16秒手前で俺がサンドワームの凍結を解除。逃げている間に柚子の2度目の【アイスアロー】が炸裂する。

アイスアローは氷同士ということで、凍結を解除することはないというのもラッキーだ。

この事態をよくよく考え、1つの結論にたどり着いた。

『つまり、あれですよ柚子さん。ぎょろちゃんは、存在自体がレア。幸運の塊』

『なんと……フロストダイスの申し子じゃ……』

砂漠マップを進んで奥まで行ってやっと最高級ケイシャの採掘場へたどり着いた。

といっても砂だらけの場所なんだけどな。

人っ子ひとりいない。

『過疎マップじゃよ。隣の隣、ピラミッドマップは人気エリアじゃが、ここら辺はサンドワームでかいからなぁ。あと、歩きは結構きつい。接敵数ももっと上がるんじゃよ』

『最高級ケイシャがとれる場所でも?』

『うーん。生産職の腕によって、材料がよくてもまったく無駄と言うことが多くてな、私の熟練度でもまだこのケイシャは扱えん。ガラス工レベルはこのワールド内でも結構高いと自負しておるのじゃ』

兄弟子に渡された布袋にせっせと砂を詰める。3袋持ってきてって言われてる。

が、柚子はさらにつめつめしてる。どこからもってきたんだその布袋。

『わ、私だっていつかこれで美しい酒瓶を作るんじゃ』

夢があるっていいよね。

俺もつめつめを手伝った。

帰りもぎょろちゃんで難なく旅程を終えて、ただ、さすがにログアウトしないとと言う話になった。

『じゃあ、夜また待ち合わせして兄弟子に持って行こう』

『了解』

イェーメールの手前のマップで降りて、ぎょろちゃんに赤水晶をあげる。

「今日はありがとな、お疲れさん」

そう言って石に戻ってもらった。手触りひんやりつるつるの石が手の中に現れ、それを【持ち物】にしまう。

『騎獣が予想以上に仲が良くて面白かったのじゃ』

『帰り道、完全に遊んでたよね』

ぎょろちゃんがどんどん高く飛び出して、ヒビキがそこを足場に高く飛ぶ。

高度どこまで許容しているのかわからないが、2人で称号をもらってしまった。

【高みを目指す者】、高いところでの俊敏性アップという謎称号。絶対山とかに登った人がもらえるヤツだよこれ。高いところが曖昧すぎて謎。

『どう役立てるかがわからない……』

『まあ、称号なんてわけわからんものがいっぱいだから、気にするな。じゃあなせっちゃん!』

イェーメールに入ったところで街の物陰に行きログアウト。

ちょっと昼寝がもう夕方だ。これで夜もなんてさすがに何もしなさすぎてまずいと、俺は夕飯の準備を始める前に走りに行くことにした。

柚子との待ち合わせは21時。つまりゲーム時間内も21時だ。少し遅いけど、兄弟子さん宵っ張りだし、クエスト中だからたぶんいけるという話。

俺も夕飯後にまた筋トレして風呂入って……くっ、やることがねえ。つらっ!! てことでログイン。

イェーメールから離れるのもなぁということで、前回急いでいたから行けなかった貸本屋さんに行くことにしました。

「こんにちはオルロさん」

「やあ、セツナか」

「時間が空いたので本を読みに来ました」

「おう、そこの椅子で読んでりゃいいぞ」

ルールはアンジェリーナさんのところと変わらない。2冊選んで1000シェル払い、読書しながら柚子を待った。ここの本屋も宵っ張り本屋だ。そういや初めて会ったとき、夜中の零時近くに帰宅していたな。