軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

88.予想屋トミー

馬、馬と願いながらあたりを練り歩く。

石は地面に落ちてたり、埋まってたりする。埋まっているものはピッケルやスコップで掘り起こす。

馬なら黒がかっこいいかなと思うが、俺も結構全身黒なんだよなぁ。

栗毛や鹿毛もありかもしれない。

あー! アンジェリーナさんの馬の色聞いておけばよかったぁぁ!! お揃い、できたかもしれないのに……。

「トミーさん!! こいつは何になります!?」

ソーダが青い石を持って見せる。

「これはぁ……目の色だな。毛並みは黒の、虎系だなぁ。虎系も3種類くらいあるんだよ、長毛のものと、短毛のもの、さらに首回りだけふさふさとしているもの」

ライオンか?

「虎系、だとはわかるんだが、その3種を見分けるのはなかなか難しい」

「青い騎獣にはならないか……」

ソーダは青がいいらしい。青い馬とか怖いけどな。ピンクよりはマシか?

『虎系は、ありよりのありだよなー』

『モフ系だったら最高よね』

『俺はッ! ヴァージルさんの騎獣みたいなしなやか系の美人がイイッ!!』

『拙者は……蛇かカエルかナメクジか……』

『三すくみなのじゃっ!!』

『一応四つ足が対象かと……』

ヴァージルの、控えめな指摘。

てか、ナメクジの背中とか乗りたくないし。

「ふふ、悩め悩め。若者たちが悩んで騎獣を探す姿は、何度見ても面白い。人生のようだ。掘り出した物、足先にぶつかった物、人が手に取り捨てた物。どれを見いだすかは己次第だ。まあ、色に関しての助言はかなり的を射ていると思ってもらっていいぞ」

一回1000シェル。

ソーダは青を求めて何度も使っていた。

もったいないっ! 貸本2冊読める!!

結局種族はわからないというならば、俺は俺の勘で引き当ててみせる!

アンジェリーナさんと同じ馬の騎獣をっ!!

『物欲センサー働きそうだわぁ……』

『真逆が手に入りそうでござるよね』

「決めたら上に登ってから、騎獣石に赤水晶を近づけると騎獣が現れる。その赤水晶を食べさせれば晴れて自分の騎獣になる。とはいえ、近づけた時点でもう他の騎獣石が反応することはなくなるからな。現れたものが希望と違っても、そこはもう選んだ物を伴侶として可愛がってやりなさい」

トミーさんさっきから結構いいこと言ってるんだよな。

ソーダがだいぶ課金してるってのもあるだろうけど。

俺もいくつか気になる石を集めてはいた。

基本下に落ちているのを拾った。手触りとか、色味。茶色はいくつかあったが、その中でも濃い色で艶のあるものを選んだ。

と、俺たちのパーティーチャット以外に声が聞こえてきた。

「すごく高くて怖い」

「大丈夫だ。焦らず一歩ずつ行けば。時間は十分にある」

俺たちが降りてきた壁の階段を、2つの影が下ってきている。

『あーら、あれってフワフワちゃんじゃない?』

『知り合いかい?』

『知り合いというか、来訪者の中の有名人ね』

ヴァージルの質問にピロリは曖昧な返事。

ピロリ:

セツナくんと同じ絆システムに選ばれた子よ。

ユーザーネームはフワフワ、相手はNPCの冒険者。すごく強い弓師らしい。

やがてじゃりっと音をさせて底にたどり着く。トミーが営業をしに向かった。だいたい口上も同じようだ。

そして、こちらへやってくる。

「もしかしてマスターさんたちですかね、初めまして」

「こちらこそ」

視線はヴァージルで止まった。それはそれは驚いた顔のあとに口元を手で抑える。

「ふぁあああ……」

薄暗い中で光り輝くイケメンスマイルを見ると人はこのような反応をするのか。

「フワフワ早く探そう」

「う、うん。そうだねごめん」

ちょっとお隣のすごく強い弓師さんが嫉妬してない!?

2人の絆崩壊のピンチか?

ヴァージルって、これ、友人の彼女に惚れられて困って友だちとすら仲が悪くなるとかありそうで……。

それでは、と少し離れたところでそれぞれ騎獣石を探す作業に戻る。

『絞りきれぬでござる……どれもピンときてしまった』

『もふもふがッ!! もふッ!』

『交換できないのがネックよね。伴侶を決めるって言葉は嘘じゃないわね』

『何が欲しいかわからなくなってきたな』

なんだかんだと一番悩んでそうなのが八海山だった。

と、さらにお客さんだ。

俺たちと、そして先ほどのフワフワのことを考えると、絆システムの享受者たちが先行でここに来られるようになっているとみた。

つまり、彼らもまた絆システム搭載!

『て、おい、ずいぶんな人数だな』

『え、1パーティーじゃ収まらなくない?』

『20人くらいいるような……』

『あ、あれ、あれじゃよ!! お嬢様じゃぁー!!』

「こ、怖いですね」

「クラウディア様をお抱えしろ」

「はっ!」

「大丈夫です、由香里が1人で降りているのですから、わたくしも平気ですわ」

『お嬢様?』

パーティーチャットについヴァージルがいることを忘れた面々が、いつもののりで話してしまう。

『あ、ああ。冒険者の中に、貴族のご令嬢と仲良くなって幸せに暮らしている子がいて、結構有名なんだ』

つまり、あそこにいるのは貴族のご令嬢の護衛騎士たちか。え、すごいな。狩りに行っても何もする暇を与えてもらえなさそうなんだが。

「ごめんね、クラウディア。私が騎獣に興味があるって言ったせいで……」

「いいえ、わたくしもそろそろ自分の騎獣をとは言われていたのです。ね、ロンバール卿?」

「そうですね、お嬢様ももう騎獣を持ってよいお年です。ちょうどよい機会でした」

お嬢様ごっこ楽しそうだな。だりーっとか言えないだろうけど。

あちらが、俺たちに気付いて少し身構えるが、トミーが営業トークを初め、その合間にもう先客もいるぞという話をしたので事なきを得ました。

そしてお嬢様二人の視線がヴァージルに止まる。

「まあっ」

「くそいけめぇん……」

由香里さんや……。お嬢様の御前ですぞ。

そんなこんなで俺は石3つまで絞り込んだ。皆も同じくらいの石を持ち寄り、円陣を組んで座り込んで悩んでいる。

ソーダはトミーにかなり鑑定してもらっていた。

「猫系、絶対いいよな」

「いいでござるね。拙者は四つ足ギリギリのカエルを目指すでござるよ」

「残念だけど、カエルは聞いたことがないな……」

ヴァージルの苦笑。

「私はもふもふ! とりあえず聞いたところこの2つは確実にもふってるって話だからどちらかにする!」

「俺はッ! もふ猫系! それか、もふってない、ヴァージルさんの豹ちゃん系! 頼むこのどちらかであってくれッ!」

「私は~これにしたのじゃ。もう決めた。何が出てもこやつを愛するのじゃっ!」

一番悩んでいた八海山も決めたようだ。白い石を持っていた。

「種族は正直わからないからなあ。せめて色はと思ってこれにする」

俺は3つの石の前で悩み中。

「セツナは?」

座ってあぐらをかいて、目の前の石3つで悩んでる俺の真横に顔をひょっこり。

それ、イケメンがやるの反則だからなっ!

「このうちどれにするかで悩んでる」

この3つ、手触りがいいんだ。ひんやりつるりですごく気持ちがいい。

どれも黒なのだが、時折光る。きらりと、何かが反射する。

こうして俺たちは最後に1つを選び取り、谷を後にしたのだ。