軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

87.竜の爪痕

夕暮れ時。モンスターも少し強くなってくる頃。

前衛は基本ソーダだったのが、ヴァージルが一番前を行ってくれるし、なんなら接敵からの一発KOしてくれるのでスイスイ進んだ。

索敵は半蔵門線がやはり一番らしいので、今はヴァージルと半蔵門線が先頭に並んで、その後ろをソーダ、柚子案山子八海山という魔法使い、聖職者グループ。後ろを俺とピロリが並んで行く。

『右斜め前方に中型でござる~』

『中型なら、 風狼(ウィンドウルフ) かな? 風魔法で攻撃して隙を突いてくるタイプだ。かなり素早い』

『ならバフを掛けましょう』

フェアリーサルースの時のやつだ。風魔法を無効化してくれる。

ヴァージルは聖魔法と剣なのだが、この剣がめちゃくちゃ強い。

あれ、ここに憧れの魔法剣士いた?

剣士の動きまったくしてないけど、魔法剣士に憧れていた時期もあったんですよ!!

たまに横や後ろから来るのに気付いて俺が言うと、すぐさまピロリが対峙してその後ろから案山子か柚子が攻撃している。

『君たちはとてもバランスのよいパーティーなんだね』

『いえいえ、ヴァージルさんにそれを言われても困ります』

ヴァージルがいるからど安定になっている。戦力過多な気もする。

『セツナだけ少しレベルが低いのか』

『こちらに来たのがかなり後ですからね』

『なら、私がセツナを鍛えよう』

『勘弁して……』

ハハハと笑うイケメン。これ、本気っぽくて怖いな。

ソーダ:

鍛えてもらえよ~!

セツナ:

ご冗談を。NPCと狩りなんて、怖い怖い。相手が死なないようにしないとじゃん!

ソーダ:

この人めちゃくちゃ強そうだから大概のところ平気じゃね?

セツナ:

そしたらスパルタが始まるってことじゃんか~やだよー。

夜、ここいらで出るのはこの 風狼(ウィンドウルフ) と毒持ちのポイズンベア、ポイズンビーというわりと名前に素直な奴らだ。毒は即死ではないが、動くと毒が回ってHPをごりごり削られる。

八海山がすぐ治してくれるのだが、これは毒耐性を育てておけとのお告げということで俺はわざと蜂に刺されるプレイを開始。他の皆はだいたい毒耐性は出来ているらしい。

『最低ラインの5は習得済みじゃ!』

『俺は7あるけどねッ!!』

『案山子殿、ポイズン草原でメテオレインかましまくったでござるから』

『あのときの苦労がここにッ』

『来訪者は危険な方法で己を鍛えるとは聞いていたが……まあ、気をつけてくれ、セツナ』

『あ、はい。ご心配おかけしております』

NPCからみたらこれ、ドM方法なのか。ちょっと気をつけよう。一緒にいるときは控えなければ。

『私も回復系は揃えているが、何事も完全というわけではないからな』

ふっと笑ってるイケメン、すご……。

ちなみに彼の今日の装いは、ベージュのフード付きローブ。茶色の胸当てと、茶のパンツにベージュのシャツ。腰にポーチを着けている。それも茶色だ。

装いだけなら一般冒険者だ。

『もうすぐ見えてくるよ』

整備された道ではないが、辛うじて草木がない、人が何度も通って作られた道。

そしてすぐ横は崖だ。深い谷間があった。

だが、ずっと先にぼんやりと明かりが見えるのだ。

上空に風がと言っていたが、ここも風がかなりキツい。

そして、明かりは崖の側に建てられた小屋のものだとわかる。

小屋の外に、ぽつんとランタンが掲げられているのだ。それが風に揺れながら周りを照らしていた。

『ここが竜の爪痕への入り口なんだ。かなり降りるから覚悟してくれ。風も強いし、足場も不安定だ』

そう言ってヴァージルは谷間に向かう。

谷の壁沿いに、なんとも心許ない階段とロープの手すりが作られていた。階段は半分は谷の壁を掘ったもので、そこへ板が突き刺さり多少の道幅を作っているという、リアルでは降りるのまっぴらごめんな様相だ。

ソーダ:

ここに週末、人が山ほどやってくるのか……降りるだけで一悶着ありそう。

ピロリ:

ヴァージル様々、セツナ様々ねぇ~!!

俺たちも一列になってゆっくり階段を進む。

【夜目】育てておいてよかった!! 途中から、ミュス狩り目を閉じてやってたからな……その方が【気配察知】さん働いてくれる気がして。ちゃんと目はかっぴらくべき!

この足元不安なところ歩くのが、結構大変だった。

谷の壁を、ロープを頼りに降りて行く。

駆け下りるというわけにもいかず、20分くらいかかった。

そして、現れる石ころの谷。

そこら中に丸いツルツルとした石が落ちているのだ。

『ここには不思議とモンスターは現れないから、安心して好きな物を選ぶといいよ。ただし、1つだけ』

『色があるようだけど……』

『そうだね、だいたいが石の色と騎獣の色は同じだよ。たまに違うものもあるけれど。時間はたっぷりあるし、ゆっくりと選ぶといいよ』

ヴァージルがシュヴァルツの石を見せると、真っ黒。そして呼ぶと、ぶわりと膨れ上がり豹のようなしなやかな足取りでヴァージルの側に座った。

『か、かっこいいー!』

『豹ッ!? 虎系と思ってたけど豹もいいっ!!』

『ランダムチャレンジなのつらいわ……』

『私は、白馬がいいのじゃ〜』

『犬、狼系が出たらどうなんだろう……』

それぞれの叫びに、ヴァージルは面白そうに笑っていた。

と、じゃりっと足音がした。

すぐさま警戒態勢を取るソーダたちと、わたつく俺。笑ってるヴァージル。

「こんな夜中にお客さんが来るとは」

「こんばんは」

ヴァージルが答える。そして俺たちを振り返った。

「彼は竜の爪痕の名物だよ」

「百発百中予想屋のトミーとは俺のことさ!」

「予想屋?」

「騎獣石は一期一会。だがみんな欲しいタイプはあるだろう? そこを、竜の爪痕でみんなの騎獣を見てきて300年! このトミー様がズバリ当ててやろうってのさ。当たるも八卦当たらぬも八卦」

「まあ、半分くらいのつもりで聞いたほうがいいよ。最後は自分の直感さ」

当たらぬも八卦言ってるしな。

『ほんとに当たらないこともふつーにあるらしいよ』

本情報です。

『だいたい300年の時点で終わっとるのじゃ』

「まず色は、ほとんどがそのままだ。この兄さんのも黒だったろ? 色はな、ほとんどそのままだ。だからこれはタダの情報。あとは持ってきてみな! 1つにつき1000シェルで予想してやるよ」

「ちょっと楽しそうね」

「1000ならまあ、おみくじ感覚で聞いてみるのもいいでござるね」

ということで、ビビビと来る石探しが始まる。