軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

75.ヴァージルの手紙

店主はこちらにちらりと目を向ける。

「こんばんは。こんな遅くですけど本を読んでも大丈夫ですか?」

「店は開いている。客のために開けているんだ」

真っ直ぐ答えてくれないタイプの人だ。

まあオッケーということで、それなら、アランブレにあった、街歩きシリーズを探そう!

ここもアンジェリーナさんの貸本屋と同じく、壁一面、さらには本棚が、人が通るのギリギリの幅で置かれている。

「街歩きのファンルーア編はありますか?」

店主はまたもやちらりとこちらを見て立ち上がった。

そして壁の棚から本を2冊持ってくる。ここも東と西で分けられていた。

「ありがとうございます。それじゃあ2冊を」

「外に持ち出すのは1冊までだ」

「そちらの席で読んでもいいですか?」

店主は重々しく頷くと、俺のIDカードをチェックした。

1000シェルが引かれる。

ファンルーアは穀倉地帯で、それを利用した食べ物が多かった。つまりパンやパスタ類。麦系料理だ。お菓子もバリエーションがあるという。

東側は主にお店。西側は住居となっている。

なぜか貸本屋は住居の中に紛れていた。まあ、アンジェリーナさんの本屋もそうだったな。

この街を預かっているのが例のメインストーリーに関わるお貴族様だ。だいたい一つの都市に一つの家門があって治めているという。

また、穀物と同じように有名なのがレース編みだった。

ファンルーアのレース編みの技術は繊細でとても人気があるという。

「レース編み……」

お土産したら喜んでもらえるだろうか。

読書スピードが上がっているのでまだ夜が明けない。もう5冊ほど借りて朝の7時となった。

「ずいぶん読んでいるんだな」

「アランブレで貸本屋さんに通っていたので」

「アンジェリーナの店だな」

「アンジェリーナさんをご存じで!?」

え、ライバル? こいつ倒さないとだめ?

「貸本屋業界は狭いんだよ」

ああ、まあ、見つけてないだけかもしれないけど、鍛冶屋みたいに固まって店がたくさんあるわけじゃないもんなあ。

「街によって置いてある本も違いそうですし、また遊びにきます」

「おう。待ってるよ」

時間つぶしでしか来ないけどな。まだ外をうろつく勇気がないから街中で時間潰すしかない。この時間にやってるのはかなり助かった。

だって、もし死んだら……ローレンガに逆戻り。実はまだ登録地変更をしていないのだ。忘れてた。絶対しないとヤバイ。

さあ、ハトメールの返事が来ない。ヴァージル、絶対早起きするタイプだろあいつ。聖騎士の朝のルーティーンとか動画作れるヤツだよ。イケメンめ。

ゲームのイケメンって何がすごいって、肌が綺麗。肌きれいで髪がつやつやしてる。すごいわほんと。

ハナのパン屋に向かう。朝ご飯を買いに来るのか、人でごった返していた。俺も木のトレイを持って2つほど買う。

入店したときから俺の存在には気付いていたらしく、パンと一緒に封筒を渡された。

少し歩いた先にあった公園のベンチに座るとパンを1つ食べる。EP忘れがち。気をつけよう。そして封筒の中の手紙を開く。

《隠し選択ミッション! ヴァージルを探せ!! ヴァージルの姿が消えた。貴方は手紙の指示通り、イェーメールの聖騎士に伝えに帰るか、それともこのまま単身ヴァージルを探しに行くか》

セツナ:

隠し選択ミッションて何!?

ソーダ:

また特殊なの引いてるなぁ……

ちょい調べる。

セツナ:

あーダメだ。カウントダウンあるや。

ソーダ:

タイトルだけ置いてけ!

セツナ:

ヴァージルを探せ。

んんん~なんとなく、単身乗り込む!

これなら失敗しても迷惑かからんだろ。クラーケンの時もそうだったが、ミッション系は失敗もあるらしい。

他の聖騎士巻き込んで盛大に失敗したら目も当てられねえ……。

俺が目の前に現れた2つのポップの1つを選ぶと、それが光って弾けて消えた。

「さて、探しますか」

ヴァージルの手紙には、位置情報が載っていた。なんでも、その家に男たちが入っていったという話があったらしく、あのハトメールをくれた日に潜入してみることにしたらしい。

もう7日経ってるからなぁ。

これ急がないと死亡ルートあるの!? え、やだ怖くなってきた。

男たちが入っていった建物というのが、わりと大きな商店だった。冒険者向けの何でも売ってるお店だ。俺はふらりと立ち寄ってみた。表向き冒険者だもんね!!

店員もこちらが購買意思を見せない限りカウンターから出てこない。小さな店だと棚とカウンター一体型キ○スクタイプが多いんだが、話しかけない限り話してこない。ここはそんな極小の店舗とは違って、貸本屋と同じように店内に商品棚が所狭しと設置してある。扉がなくて、道に面している部分が全部開いているような、観光地のお土産物屋みたいになっていた。

店内をぐるっと回って物珍しそうにしていたが、何も買わずに出てきた。

ちらっと奥に見えたんだよなぁ、黒いフードの人。

ソーダ:

隠しミッションではない、ヴァージルを探せはあったけど。

セツナ:

それも選択?

ソーダ:

だなあ。聖騎士に知らせに行くを選ぶとヴァージルを聖騎士と一緒に助け出すらしい。

単身だと、単身、またはプレイヤーと一緒でもいいらしいけど、失敗するとヴァージルとあまり会えなくなるって。まあ、中に入ったらわかるから言っちまうけど、通路や物を利用しながら見張りの目をかいくぐってヴァージルが捕らえられてる部屋までたどり着ければ勝ち。回復系ポーションは持ってる?

セツナ:

そっかあ……単身選んだんだけど、多分裏口から入るんだよなぁ。ポーションは一応ある。前にもらった初心者ポーションじゃないやつ。

もう俺も初心者ポーションは使えない。

ソーダ:

じゃあ表で騒ぎ起こしてやろうかw

セツナ:

ペナルティー食らわない?

ソーダ:

迷惑行為だけが騒ぎを起こすんじゃないよ。

ちょい待ってろ。すぐ行く。

隠しがついたポイントがわからないし、隠しだから失敗したときの代償がわからない。

出来れば成功したいな。

今度は少し離れた場所から【隠密】を使って近づいてみる。結構【隠密】の熟練度上がってきたんだ。ミュス相手に常時使うようにしていたら、真横にいても気付かれなくなった。ただ、人相手だとこれを見破るスキルとかもありそうで、油断は禁物だ。

店の裏側とか、普通は入りにくいんだろうが、ここは周りの建物がよい目隠しになって、ちょっと遠くから見ていても気付かれなかった。【鷹の目】も手に入ってるしね。

と、裏口にいた人が、消えた。その代わりに表の方でソーダの声がした。ピロリも一緒だ。

「絶対こっちの方が私に似合う」

「性能で行けよおお! 可愛いとか可愛くないとかそこは置いといて命が先。なあ、店員さんもそう思うだろ?」

店に来たら面倒なタイプのカップルしてるー!